中央銀行、23年インフレ率予想を6.1%へと大幅上方修正

22年平均5.8%から更に加速、目標(2~4%)連続未達成懸念

2023/02/17

 フィリピンのインフレ目標の3年連続での未達成の可能性が一段と高まった。2022年年間平均インフレ率は5.8%で、政府のインフレ目標3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)の上限を大幅に上回ってしまった。

 フィリピン中央銀行は(BSP)は、2月16日の0.50%追加利上げ決定に際して、2023年予想について、これまでの4.5%から6.1%へと大幅上方修正した。すなわち、2023年もインフレ目標の上限を突破、インフレ目標は3年連続で未達成と懸念している。2024年については、これまでの2.8%から3.1%へと再上方修正したが、インフレ目標内には収まると見ている。
 
 フィリピン統計庁(PSA)は、2022年1月分(2月4日発表)から、インフレ統計の基準年(指数を100とする年)をそれまでの2012年(旧基準)から2018年(現行基準)に変更した。2021年の平均インフレ率は、2018年基準では3.9%でインフレ目標(2%~4%)に収まったように見えるが、目標設定時の2012年基準では4.5%であり、インフレ目標は達成できなかった。2022年は平均5.8%と2008年の平均8.2%以来、14年ぶりの高水準。2023年のインフレ率が6.1%となると、3年連続でのインフレ目標未達成となる。

 フィリピンのインフレ目標は、2015年以降、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)が継続されてきている。下表のとおり、2015年は0.7%、2016年は1.3%とインフレ目標の下限以下にとどまり、目標未達成となった。2017年は2.9%で目標を達成したが、2018年は5.2%と急上昇、インフレ目標の上限を大きく上回ってしまった。2019年と2020年は2年連続で目標達成となったが、2021年は3年ぶりに未達成、2022年は連続未達成で、この8年間の目標達成率は37.5%にとどまっている。

 なお、インフレ率予想(Forecast)とインフレ目標(Target)が混同されることが多いが、両者は異なるものである。予想は単純な見通しであり環境が変化すればその都度変更されるものである。インフレ目標(Target)は金融政策の基本的枠組みであり、それを基準として各種政策が決定されるものであり頻繁に変更されるものではない。

 フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年  2023年予  2024年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  5.2% 2.4%  2.4%  3.9%  5.8%  6.1%  3.1% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
 (出所:PSA資料などより作成、2023年以降の予想はBSPの2023年2月16日時点の予想)