日本格付研究所、フィリピン格付「A-」を継続

有力格付機関のなかで最高の評価、唯一のAレンジ

2023/03/11

 日本格付研究所(JCR)は、3月10日、フィリピンの格付を据え置くと発表した。具体的には、外貨建長期発行体格付とペソ建て長期発行体格付債券格付ともに、Aマイナス(A-)が据え置かれた。すなわちA範疇が継続されたのである。格付見通し(アウトルック)も「安定的」が継続された。格付見通しが安定的というのは、A-という格付が当分維持されるであろうという意味である。なお、JCRは日本を代表する格付会社であり、米国での公式登録とEUでの認証を得ている日本唯一の格付会社である。

 JCRは、フィリピンの格付に関して、「堅調な内需を背景にした持続的な経済成長パフォーマンス、GDP対比で低水準に抑制された対外債務や外貨準備の蓄積等にみられる対外ショックに対する耐性、堅固な財政基盤などを評価している」と説明した。

 今回の格付や格付見通し据え置きについては、「2022年は景気回復を持続させるために財政支出を拡大させ財政赤字がGDP比7.3%と高止まりしたが、マルコス政権は『中期財政枠組』に基づく財政再建の基本方針を明確にしている。また、2022年末の一般政府債務残高対GDP比率は50%台で、JCRがAレンジ(範疇)に格付けするソブリンの中でも低い水準にあり、財政基盤の健全性が損なわれることはないと考えている。海外からの労働者送金は堅調で、経済は対外ショックに対する高い耐性を発揮している。以上より、格付を据え置き、格付を安定的とした」とコメントしている。

 なお、有力格付機関の中で、フィリピンに最も高い格付を与えているのはJCRといえよう。それに次ぐのは、米系のスタン&プアーズ(S&P)であり、2022年11月27日、フィリピンの格付を「トリプルBプラス(BBB+)」、格付見通しを「ステーブル(安定的)」に据え置くと発表した。「トリプルBプラス」は投資適格最低基準の2段階上であり、A格付まであと一歩というステータスである。

 一方、フィリピンに対する評価が厳しいのは、欧州系のフィッチ・レーティングス(フィッチ)で、2022年10月27日、フィリピンの格付をトリプルB(BBB、S&Pより一段階下)に、格付見通しを「ネガティブ(弱含み)」に据え置いた。フィッチは、2021年7月にフィリピンの格付見通しを、それまでの「安定的」から、「弱含み」へと引き下げた。

 S&Pと同じ米国系のムーディーズ インベスターズ サービス(ムーディーズ)のフィリピン格付は、2014年12月から「Baa2」が継続されている。「Baa2」は他の格付機関の「BBB」と同格である。すなわち、フィッチのフィリピン格付BBBと同様、S&Pの「BBB+」より1ランク低い格付となっている。ただし、ムーディーズのフィリピン格付見通しは「安定的」となっている。