国内旅行需要完全回復へ、インバウンド旅行は来年に

旅行・観光産業のGDP寄与度20%への上昇(19年12.9%)期待

2023/05/05

 フィリピン観光省(DOT)は、新型コロナパンデミック(コロナ)禍で減退した国内旅行・観光需要は、2023年に完全回復、すなわち、コロナ発生前の2019年の水準もしくはそれ以上になると見ている。

 DOTは、2023年のフィリピン訪問外客数は、2022年推定(265万人)比81%増の480万に達し、2年連続で大幅増加すると予想している。しかし、新型コロナウイルスパンデミック直前の2019年に記録した826万人という過去最高記録とは依然として大きな差があり、インバウンド旅行・観光が完全回復するのは2024年と見ている。2023年は5月2日までのほぼ4カ月間の訪問外客数は186万人で、ほぼ目標に沿った推移となっている。年後半に増加ピッチが高まるようならば、目標の上方修正もありうるとのことである。

 なお、フィリピンホテル・レストラン協会(HRAP)副会長のロバート・ジョン・ホリガン氏は、国内総生産(GDP)に占める旅行・観光産業の割合を、ピークであったコロナ直前の2019年の12.9%への復帰だけでなく、20%に引き上げるよう求めている。国全体の成長加速のためにも、タイやマレーシアなどの近隣諸国のように、GDP寄与度を20%に高める必要があるとのこと。

 フィリピン統計庁(PSA)によると、2021年の旅行・観光直接粗付加価値額(TDGVA:名目ベース、以下同様)は前年比9.2%増の1兆0,013億ペソとなった。しかし、直近のピークの2019年の2兆5,086億ペソの半分以下にとどまっている。成長率は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック発生で非常に不振であった2020年のマイナス63.4%からは改善したが本格回復には至っていない。名目GDPに対する寄与度は5.2%で、ピークの2019年の12.9%の半分以下にとどまっている。2022年の統計は6月に発表される見込みである。

  フィリピン訪問外客数の推移
2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021  2022推  2023予 
訪比外客数(万人) 536 597 662 717 826 148 16  265  480 
年間成長率(%) N.A. 11.3 11.0 8.3 15.2 -82.1 -89.0  1,517.0 81.1 
(出所:フィリピン観光省資料より作成、予想はフィリピン観光省)

 旅行・観光産業の直接粗付加価値(TDGVA)と名目GDP推移(単位:百万ペソ)
TDGVA 成長率 GDP 成長率 対GDP比率
2011 694,484 18.3% 10,144,661 7.9% 6.8%
2012 851,869 22.7% 11,060,589 9.0% 7.7%
2013 974,302 14.4% 12,050,592 9.0% 8.1%
2014 1,169,216 20.0% 13,206,828 9.6% 8.9%
2015 1,380,042 18.0% 13,944,157 5.6% 9.9%
2016 1,575,417 14.2% 15,132,381 8.5% 10.4%
2017 1,944,193 23.4% 16,556,651 9.4% 11.7%
2018 2,238,961 15.2% 18,265,190 10.3% 12.3%
2019 2,508,644 12.0% 19,517,863 6.9% 12.9%
2020 917,196 -63.4% 17,951,574 -8.0% 5.1%
2021 1,001,298 9.2% 19,410,568 8.1% 5.2%
(出所:PSA資料より作成)