第1四半期GDP成長率6.4%、アジア主要国で最高

サービス産業8.4%成長で牽引役、個人消費6.3%増加

2023/05/12

   フィリピン統計庁(PSA)は5月11日(木)午前10時より、2023年第1四半期(1月~3月)の国内総生産(GDP)など国民勘定統計を発表した。

 2023年第1四半期のフィリピンの国内総生産(GDP)実質成長率は6.4%で、前年同期の8.0%、前期の7.1%から減速したが、直前予想コンセンサスの中央値6.1%を上回った。また、政府の2023年の年間目標である6.0~7.0%のほぼ中間値となった。アジアやASEAN地域の主要国の中でも、これまでのところ、フィリピンが最も高い伸びを見せており、発表済みのインドネシア(5.0%)、中国(4.5%)、ベトナム(3.3%)を上回った。また、これから発表される主要国の事前予想(マレーシア4.9%、インド4.6%、タイ2.8%など)を上回っている。
 
 バリサカン国家経済開発庁(NEDA)長官は、「2023年第1四半期の成長率は前年同期比鈍化と見えるが、2022年は新型コロナパンデミックによる不振期からの回復で非常に高い伸びであった。したがって、今第1四半期を減速と解釈することには注意が必要であり、正常な巡航速度を取り戻しつつあるといえる」と説明した。

 2023年第1四半期のセクター別成長率は、サービス産業が8.4%、鉱工業が3.9%、農林水産業が2.2%といずれもプラス成長であった。ただ、鉱工業は前年同期の10.0%から急鈍化した。個別では、卸・小売業/自動車バイク修理業の7.0%、金融/保険業の8.8%、その他サービスの36.5%などが目立った。一方、製造業成長率は2.0%で前年同期の9.4%から大幅鈍化した。また、鉱業の成長率はマイナス2.2%で、前年同期の20.4%成長から急悪化した。

 支出面では、家計最終消費支出(HFCE、個人消費)が6.3%増加、政府最終消費支出(GFCE)が6.2%増加、総資本形成(GCF)が12.2%増加した。輸出は0.4%増加、GDPのマイナス勘定となる輸入は4.2%増加した。個人消費は依然堅調ではあるが、高インフレなどにより前年同期の10.0%からは大幅に鈍化するとともに、4半期連続での減速となった。

 海外からの純所得(NPI)が81.2%増と急増したことで、国民総所得(GNI)成長率は9.9%に達した。前年同期の10.5%からは小幅鈍化したが、前期の9.3%からは加速した。

 産業・支出別実質GDP成長率(年率)の推移(2018年基準:単位:%)
項目 構成比 四半期成長率   
23年 2021年 22年  23年
期間 1Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q
GNI(国民総所得) 100.0 -10.5 6.7 2.8 8.1 10.5 9.4 10.6 9.3 9.9
GDP(国内総生産) 92.3 -3.8 12.0 7.0 7.9 8.0 7.5 7.7 7.1 6.4
NPI(海外からの純所得) 7.7 -75.6 -55.6 -52.6 13.8 102.7 66.8 95.1 59.9 81.2
産業別
農林水産業 9.1 -1.3 0.0 -1.7 1.4 0.2 0.2 2.1 -0.3 2.2
鉱工業 29.9 -4.2 21.3 8.7 9.7 10.0 6.3 5.8 4.6 3.9
 鉱業 0.9 2.0 4.2 4.0 10.9 20.4 -6.8 10.2 1.8 -2.2
 製造業 20.1 0.8 22.4 7.0 7.5 9.4 2.3 3.9 3.9 2.0
 電気/水道/廃棄物処理業 3.2 1.1 9.5 3.0 4.4 5.6 5.4 4.1 5.7 6.8
 建設業 5.7 -22.5 27.4 18.0 18.7 13.1 18.7 11.4 6.2 10.8
サービス産業 61.1 -4.0 9.7 7.7 8.1 8.4 9.2 9.3 9.8 8.4
 卸小売業/自動車バイク修理業 16.3 -3.4 5.4 6.5 7.1 7.0 9.7 9.1 8.8 7.0
 運輸保管業 4.0 -19.9 24.3 15.5 18.9 26.2 27.6 24.5 18.9 14.3
 宿泊飲食サービス業 2.2 -22.5 56.7 12.4 20.1 20.5 30.9 41.8 36.7 26.9
 情報通信業 3.4 6.6 12.6 8.6 8.6 7.3 10.6 7.7 6.2 5.1
 金融/保険業 11.1 4.3 5.2 3.9 5.6 7.9 3.7 7.9 9.3 8.8
 不動産/賃貸業 5.7 -11.7 16.8 3.9 3.5 5.9 4.4 3.6 7.4 3.8
 専門/業務サービス業 5.7 -2.6 8.7 11.0 7.4 8.6 8.4 9.6 9.8 7.7
 公務/国防/義務的社会事業 4.3 7.1 4.8 5.1 4.7 0.8 9.6 0.7 3.7 1.5
 教育 4.3 0.2 12.4 13.4 7.4 8.6 5.5 5.9 10.0 5.8
 保健衛生/社会事業 2.0 12.8 14.5 17.0 13.9 1.7 1.5 5.0 6.3 7.5
 その他のサービス業 2.2 -38.7 37.6 19.6 29.7 22.9 39.9 38.9 18.6 36.5
支出側
家計最終消費支出 75.2 -4.8 7.3 7.1 7.5 10.0 8.5 8.0 7.0 6.3
政府最終消費支出 14.6 16.2 -4.1 13.9 7.9 3.5 10.9 0.7 3.3 6.2
総資本形成 22.9 -14.1 83.7 20.0 14.1 17.7 17.2 18.2 3.8 12.2
 総固定資本形成 22.4 -18.2 39.7 15.7 10.6 10.9 12.5 9.6 6.0 10.4
輸出 27.9 -8.3 28.4 9.2 7.7 10.6 4.9 13.6 14.6 0.4
輸入(控除) 40.4 -7.5 40.2 12.6 14.0 16.2 14.5 18.5 7.0 4.2
(出所:PSA資料より作成、産業/支出構成比:対GDP)

 フィリピンの実質GDP成長率の推移と政府目標(2018年基準:単位:%)
14 15 16 17 18 19 20 21 22  23目標 24-28目標
伸び率 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7.6 6.0-7.0  6.5-8.0
 (出所:フィリピン統計庁資料より作成、目標は2023年4月24日のDBCC設定数値)