22年のフィリピン即席麺市場、3年連続世界7位

袋麺伸び悩み、日清カップ麺好調、日本は第5位に

2023/05/16

 東南アジア地域は、麺食文化がもともと存在することに加え、近年の継続的な経済成長によるインスタントラーメン(即席麺)の消費量・販売額が堅調に推移している。

 世界ラーメン協会(本部:大阪府池田市、事務局:東京都新宿区新宿)の5月15日発表によると、表1の様に、2022年の世界の即席麺総需要は前年比2.6%増の1,212億食に達した。最大市場の中国/香港が2.5%増の450億7,000万食、第2位のインドネシアが7.5%増の142億6,000万食と続伸したことなどが寄与した。日本は2.2%増の59億8,000万食で3年連続で第5位であった。

 フィリピンの2022年の即席麺の総需要は前年比3.4%減の42億9,000万食であった。2年連続の減少となったが、直近のピーク2020年は新型コロナウイルス対策としての世界でも最厳格ともいえる外出・移動制限や外食事業規制に伴う巣篭り需要で16.1%増と急拡大したことの反動であり、需要は依然高水準といえる。

 フィリピンの2022年の42億9,000万食という需要は、3年連続で世界第7位、ASEANではインドネシアとベトナムに続く第3位の市場となっている。世界総需要1,212億食の3.5%を占め、一人当たりの年間消費量は約43食となっている。形態別では、袋麺がやや伸び悩み、カップ麺が堅調といえる。

 表1.インスタントラーメンの世界総需要と上位10市場(単位:億食)
順位 国/地域 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
1 中国/香港 404.3 385.2 389.6 402.5 414.5 463.6 439.9 450.7
2 インドネシア 132.0 130.1 126.2 125.4 125.2 126.4 132.7 142.6
3 ベトナム 48.0 49.2 50.6 52.0 54.4 70.3 85.6 84.8
4 インド 32.6 42.7 54.2 60.6 67.3 67.3 75.6 75.8
5 日本 55.4 56.6 56.6 57.8 56.3 59.7 58.5 59.8
6 米国 40.8 41.2 41.3 45.2 46.3 50.5 49.8 51.5
7 フィリピン 34.8 34.0 37.5 39.8 38.5 44.7 44.4 42.9
8 韓国 36.5 38.3 37.4 38.2 39.0 41.3 37.9 39.5
9 タイ 30.7 33.6 33.9 34.6 35.7 37.1 36.3 38.7
10 ブラジル 23.7 23.7 22.5 23.9 24.2 27.2 28.5 28.3
世界合計 974.9 975.2 1,001.1 1,036.2 1,064.2 1,165.6 1,181.8 1,212.0
(出所:世界ラーメン協会資料より作成)
 
 フィリピンの即席麺市場の特色は、スープタイプでは特にシーフード味が人気。パンシット・カントンと呼ばれる焼きそばタイプも人気で、カラマンシー(スダチ)味やホットチリ味が好まれている。メリエンダと呼ばれる午後のおやつの習慣があり、メリエンダ向けなどにミニサイズのカップ麺販売も好調である。
 
 なお、日清食品グループは、フィリピンにおいて、ゴコンウェイ・ファミリーの有力食品企業ユニバーサル ロビーナ コーポレーション(証券コード:URC)との合弁企業「ニッシン ユニバーサル ロビーナ コーポレーション」(ニッシンURC、1996年設立、本社:マニラ首都圏ケソン市)を通じて即席麺事業を展開、カップ麺ではトップクラスとなっている。
 
 特に近年は1人当たりのGDPや可処分所得が増加したことにともない、より付加価値の高いカップ麺の需要が高まっており、ニッシンURCの主力製品である「Cup Noodles」の販売は好調に推移している。そして、フィリピン即席麺全体の需要の伸びを大幅に上回る成長を続け、表2、表3のように好業績を続けている。22年第1四半期が、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原燃料価格の高騰で一時的に減益となったが、その後は再び収益拡大が続き、2023年第1四半期は34%増収65%増益と好調であった。
 
 なお、フィリピンでの袋麺のトップ企業は、「ラッキーミー」ブランドで知られるモンデ ニッシン(証券コード:MONDE)である。社名に「ニッシン」が含まれており紛らわしいが、日清食品との資本関係はない。MONDE発表によると、MONDEのフィリピン即席麺市場のシェアは2020年69.2%、2021年が69.5%、2022年が65%と断トツ。MONDEは2021年6月7日にフィリピン証券取引所(PSE)メインボードに新規上場した。

 表2.ニッシンURCの第1四半期業績比較(単位:百万ペソ)
項目 20年1Q 21年1Q 22年1Q  23年1Q 伸び率
売上高 1,797 1,924 2,289 3,076 34%
EBITDA 389 387 315  442 40%
純利益 239 230 192 317 65%
(出所:URC第1四半期始業報告書から作成)

 表3.ニッシンURCの年間業績推移(単位:百万ペソ)
項目 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年  2021年 2022年 伸び率
売上高 4,361 5,103 5,815 6,345 7,406 7,968 9,891 24%
EBITDA 777 890 975 1,156 1,472 1,493 1,638 10%
純利益 475 559 603 717 893 960 1,071 12%
(出所:URC年次報告書から作成)