中央銀行1年ぶりに利上げ据え置き、政策金利6.25%継続

依然高水準のコアインフレ警戒、次回会合は6月22日

2023/05/19

 フィリピン中央銀行は(BSP)は、現在、年8回の金融委員会(MB)政策定例会合を開催している。5月18日に2023年3回目のMB政策定例会合が開催された。

 今年3回目のMB政策定例会合では、政策金利体系の据え置きが決定された。すなわち、主要政策金利である翌日物借入金利(RRP)6.25%を中心とする5.75%~6.75%という金利コリドーが継続されることになった。2022年5月から約1年間続いた利上げがひとまず停止されることになった。2022年5月以降の累計利上げ幅は4.25%に達し、RRPは2007年5月以来、約16年ぶりの高水準となっている。

 MBは、これまでの金融引き締め措置の評価に基づいて、利上げの一時停止が適切であると判断した。4月の総合インフレ率が6.6%で、3カ月連続で減速するとともに、7カ月ぶりに6%台に低下、2022年8月の6.3%以来8カ月ぶりの低水準となったことが背景となっている。BSPは、2023年の平均インフレ率予想をこれまでの6.0%から5.5%へと下方修正、2024年についても2.9%から2.8%へと下方修正した。その一方、2023年第1四半期のGDP成長率は6.4%と堅調、これまでの利上げが経済全体に効果を発揮したと判断している。

 しかし、4月のコアインフレ率は7.9%で、22年3カ月ぶりの高水準となった前月の8.0%とほぼ同水準。さらに、主要な食料品の供給における制約、食料価格や公共料金に対するエルニーニョ現象の潜在的な影響、交通費や賃金の上昇などインフレ圧力は依然として継続している。

 このような継続的な物価圧力に対する厳重な監視を必要とする状況において、MBは、今後2~3回程度の会合で金利を据え置き、インフレに対する新たな脅威に対応する準備を維持しつつ、今後の方向性を決定する意向のようである。国内外のインフレが緩和するようならば利下げに転ずる可能性がある一方、インフレが再加速する場合は、金融引き締めを再開することになる。

 なお、2023年のMB定期政策会合は、2月16日、3月23日、5月18日、6月22日、8月17日、9月21日、11月16日、12月14日開催と予定されている。1月、4月、7月、10月は開催されない。次回は6月22日ということになる。基本的には、政策金利など重要金融政策は、MB定期政策会合において決定される。急を要する場合は、臨時政策会合において金融政策変更が決定されることもあるが稀である。

 総合インフレ率とコアインフレ率(2018年基準、平均値ベース)の推移
2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年4月 23年4カ月間
総合インフレ率 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8% 6.6% 7.9%
コアインフレ率 4.1% 3.4% 3.4% 3.0% 3.9% 7.9% 7.8%
(出所:BSP資料より作成)