財閥系複合企業13社、第1四半期は9社が増益・黒字転換
収入サンミゲル断トツ、利益はSM首位、GTは比トヨタが寄与
2023/05/23
フィリピン証券取引所(PSE)上場の財閥系複合企業の2023年第1四半期(1月~3月)の四半期報告書発表が出揃った。
総じて増収であったが、コスト増や投資収益悪化などで損益は伸び悩み、あるいは悪化という企業もあった。複合企業の場合、事業が多岐にわたり決算が複雑なものとなること、総純損益と帰属純損益が大きく異なるケースがあることなどから実体がわかりにくいケースがある。
収入に関しては、今第1四半期もサンミゲルが前年同期比(以下同様)9%増の3,467億ペソで断トツ、2位のSMインベストメンツ(SM)の1,382億ペソを大きく引き離している。サンミゲルは売上規模の大きい石油販売や電力事業を有している。しかし、損益に関しては、SMインベツトメンツが総純利益238億ペソ、帰属純利益173億ペソでともに首位に立っている。名門のアヤラコーポレーションは、総純利益142億ペソで第3位、帰属純利益は102億ペソで第2位であった。
下表1.のように、帰属純損益ベースでの増益企業は13社中8社、黒字転換1社、減益は3社、赤字転落1社であり、9社の損益が改善した。JGサミット(JGS)の黒字転換は、傘下の格安航空のセブ航空(CEB、ブランド名:セブ・パシフィック航空)が前年同期の76億ペソの赤字から11億ペソの黒字へと改善したことなどが寄与している。一方、DMCIホールディングスの32%減益は、傘下のセミララ マイニング&パワー(SCC)による石炭事業が市況高騰で絶好調であったことの反動であり、依然、高水準の収益といえる。
帰属ベースの増益率上位は、フィルインベスト デベロップ(FDC)の146%、ロペスホールディングス(LPZ)の96%、GTキャピタル(GTCAP)の52%などである。FDCは前年同期の利益が低水準であったことの反動、GTCAPはトヨタ自動車事業の好調等による。傘下のトヨタモーター フィリピン(TMP)の売上高は27.5%増の537億ペソ、帰属純利益は118%増(約2.2倍)の45億ペソであった。
なお、ユーチェンコ財閥のハウス オブ インベストメント(HI)の収益規模が低水準に見えるのは、リサール商業銀行(RCB)など主力の金融事業が含まれていないことなどによる。HIの赤字転落は主に海外投資損益の悪化によるものである。また、ルシオ・タン氏率いるLTグループ(LTG)にフィリピン航空が含まれていないことも要注意である。
1.財閥系複合企業の2023年第1四半期の決算動向(単位:百万ペソ)
(出所:各社の四半期報告書などより作成、増減率は前年同期比)
表2.財閥系複合企業の2022年の決算動向(単位:百万ペソ)
(出所:各社の年次報告書などより作成、増減率は前年比)
総じて増収であったが、コスト増や投資収益悪化などで損益は伸び悩み、あるいは悪化という企業もあった。複合企業の場合、事業が多岐にわたり決算が複雑なものとなること、総純損益と帰属純損益が大きく異なるケースがあることなどから実体がわかりにくいケースがある。
収入に関しては、今第1四半期もサンミゲルが前年同期比(以下同様)9%増の3,467億ペソで断トツ、2位のSMインベストメンツ(SM)の1,382億ペソを大きく引き離している。サンミゲルは売上規模の大きい石油販売や電力事業を有している。しかし、損益に関しては、SMインベツトメンツが総純利益238億ペソ、帰属純利益173億ペソでともに首位に立っている。名門のアヤラコーポレーションは、総純利益142億ペソで第3位、帰属純利益は102億ペソで第2位であった。
下表1.のように、帰属純損益ベースでの増益企業は13社中8社、黒字転換1社、減益は3社、赤字転落1社であり、9社の損益が改善した。JGサミット(JGS)の黒字転換は、傘下の格安航空のセブ航空(CEB、ブランド名:セブ・パシフィック航空)が前年同期の76億ペソの赤字から11億ペソの黒字へと改善したことなどが寄与している。一方、DMCIホールディングスの32%減益は、傘下のセミララ マイニング&パワー(SCC)による石炭事業が市況高騰で絶好調であったことの反動であり、依然、高水準の収益といえる。
帰属ベースの増益率上位は、フィルインベスト デベロップ(FDC)の146%、ロペスホールディングス(LPZ)の96%、GTキャピタル(GTCAP)の52%などである。FDCは前年同期の利益が低水準であったことの反動、GTCAPはトヨタ自動車事業の好調等による。傘下のトヨタモーター フィリピン(TMP)の売上高は27.5%増の537億ペソ、帰属純利益は118%増(約2.2倍)の45億ペソであった。
なお、ユーチェンコ財閥のハウス オブ インベストメント(HI)の収益規模が低水準に見えるのは、リサール商業銀行(RCB)など主力の金融事業が含まれていないことなどによる。HIの赤字転落は主に海外投資損益の悪化によるものである。また、ルシオ・タン氏率いるLTグループ(LTG)にフィリピン航空が含まれていないことも要注意である。
1.財閥系複合企業の2023年第1四半期の決算動向(単位:百万ペソ)
企業名 | 財閥・総帥名 | 収入 | 増減率 | 純利益 | 増減率 | 帰属純利益 | 増減率 |
サンミゲル | サンミゲル | 346,725 | 9% | 17,739 | 27% | 8,832 | 39% |
SMインベストメンツ | SM | 138,159 | 21% | 23,821 | 34% | 17,304 | 33% |
JGサミット | ゴコンウェイ | 82,257 | 28% | 7,971 | 黒字転換 | 4,998 | 黒字転換 |
アボイティス エクイティ | アボイティス | 75,879 | 21% | 8,393 | 57% | 4,005 | 2% |
GTキャピタル | メトロバンク | 69,799 | 26% | 8,962 | 64% | 6,638 | 52% |
アヤラコーポレーション | アヤラ | 66,014 | 19% | 14,191 | 41% | 10,219 | 31% |
アライアンス グローバル | アンドリュー・タン | 48,076 | 32% | 7,126 | 33% | 4,678 | 20% |
ロペス ホールディングス | ロペス | 42,491 | 21% | 7,948 | 63% | 1,666 | 96% |
DMCIホールディングス | コンスンヒ | 33,032 | -25% | 11,524 | -35% | 7,616 | -32% |
LTグループ | ルシオ・タン | 26,036 | 18% | 8,575 | 9% | 6,380 | -2% |
フィルインベスト デベロップ | ゴティアヌン | 18,754 | 29% | 2,898 | 110% | 2,152 | 146% |
メトロパシフィック | パンギリナン | 14,142 | 27% | 6,446 | -2% | 4,997 | -12% |
ハウス オブ インベストメンツ | ユーチェンコ | 6,708 | 27% | -66 | 赤字転落 | -8 | 赤字転落 |
表2.財閥系複合企業の2022年の決算動向(単位:百万ペソ)
企業名 | 財閥・総帥名 | 収入 | 増減率 | 純利益 | 増減率 | 帰属純利益 | 増減率 |
サンミゲル | サンミゲル | 1,506,591 | 60% | 26,760 | -44% | -12,968 | 赤字転落 |
SMインベストメンツ | SM | 553,771 | 28% | 84,345 | 54% | 61,654 | 53% |
アボイティス エクイティ | アボイティス | 306,753 | 37% | 40,209 | 18% | 24,827 | -9% |
JGサミット | ゴコンウェイ | 301,908 | 36% | 6,478 | 黒字転換 | 651 | -87% |
アヤラコーポレーション | アヤラ | 263,820 | 17% | 45,874 | 27% | 27,398 | -1% |
GTキャピタル | メトロバンク | 245,307 | 40% | 21,731 | 53% | 18,360 | 67% |
アライアンス グローバル | アンドリュー・タン | 178,748 | 25% | 25,189 | 6% | 16,108 | -5% |
ロペス ホールディングス | ロペス | 170,338 | 36% | 22,392 | 39% | 5,439 | 254% |
DMCIホールディングス | コンスンヒ | 142,600 | 32% | 48,476 | 89% | 31,087 | 69% |
LTグループ | ルシオ・タン | 100,872 | 11% | 30,665 | 47% | 25,137 | 24% |
フィルインベスト デベロップ | ゴティアヌン | 64,808 | 17% | 8,303 | -7% | 5,651 | -7% |
メトロパシフィック | パンギリナン | 50,882 | 17% | 13,137 | 13% | 10,495 | 4% |
ハウス オブ インベストメンツ | ユーチェンコ | 23,905 | 1% | 1,724 | 6% | 1,174 | 9% |