6月9日、GDP成長率目標や前提条件を見直しへ

比インフレ統計発表、米FOMC等重要経済イベント続く

2023/06/06

 開発予算調整委員会(DBCC)は、6月9日、最近の内外情勢を分析するとともに、2028年までの政府の中期マクロ経済に関する前提や財政計画、成長目標の見直しを行う予定である。DBCCは政府の経済関係部署の横断機関であり、マクロ経済目標決定などの役割を担っている。

 前回4月6日のDBCC会議においては、2022年のGDP実質成長率7.6%に対し、2023年予想(目標)については、主要国の景気鈍化の影響を受けそうなことから、それまでの予想6.0%~7.0%を据え置いた。2024年から28年に関しても、それまでの6.5%~8.0%予想が継続されることとなった。

 マクロ経済予想の前提条件に関しては、平均インフレ率が2023年5.0%~7.0%、2024年~2028年までが2.0%~4.0%と想定された。2023年は2~4%というインフレ目標の上限を大きく突破するが、2024年以降はインフレ目標内に収まると想定。ドバイ原油価格は、2023年と2024年は1バレル70米ドル~90米ドル、2024年以降は60米ドル~80米ドルに低下すると想定された。ペソ対米ドルレートに関しては、2023年~2028年まで1米ドル=53ペソ~57ペソと想定された。

 中期財政計画に関しては、経済活動が回復ピッチを強める一方、新型コロナウイルス対策支出はピークアウトしたと見られることから、歳入の伸び率が歳出の伸び率を上回ると想定。その結果、財政赤字対GDP比率は、新型コロナ対策費調達等で高水準であった2021年の8.6%、2022年の7.3%に対し、2023年6.1%、2024年5.1%と改善傾向を辿り、2028年には3.0%にまで低下すると想定された。

 DBCCのメンバーである中央銀行(BSP)は、6月9日のGDP成長率目標との見直しを前に、2023年のGDP成長率は、世界景気の減速やインフレ高進の悪影響は、『加速と包摂のための税制改革(TRAIN法)』による個人所得税の軽減による個人消費押し上げ効果、旅行・観光需要の増加、対面教育の継続などで相殺され、目標の6.0-7.0%に沿ったものになるとの予想を表明した。

 いずれにしても、このDBCC会議のほか、6月6日のフィリピン消費者物価(インフレ)統計や9日の雇用統計発表、13日~14日の米国連邦公開市場員会(FOMC)、15日の欧州銀行(ECB)理事会、15日~16日の日銀金融政策決定会合、22日のBSP金融委員会(MB)政策定例会合など重要経済イベントが目白押しであり、それらの結果、市場への影響が注目される。

 フィリピンのGDP実質成長率の推移と予想(2018年基準、単位:%)
14 15 16 17 18 19 20 21 22  23予 24-28予
伸び率 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7.6 6.0-7.0  6.5-8.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、予想は2023年4月24日のDBCC設定目標)

 マクロ経済目標・見通しの前提条件(2023年4月24日設定)
マクロ経済指標 2023年 2024年  2025年~28年
インフレ率(%) 5.0~7.0 2.0-4.0 2.0-4.0
ドバイ原油価格(米ドル/1バレル) 70-90 70-90 60-80
外国為替レート(ペソ/米ドル) 53-57 53-57 53-57
物品輸出増加率(BPM6基準) 3.0% 6.0% 6.0%
物品輸入増加率(BPM6基準) 4.0% 8.0% 8.0%
(出所:NEDA資料より作成)

 2022-2028年の財政収支プログラム(単位:億ペソ、2023年4月24日設定)
項目/年 2023予 2024予 2025予 2026予 2027予 2028予
歳入 37,290 41,844 46,920 52,554 58,959 66,216
対GDP比率 15.2% 15.7% 16.1% 16.5% 16.9% 17.2%
歳出 52,284 55,473 58,877 63,722 70,148 77,734
対GDP比率 21.3% 20.8% 20.2% 20.0% 20.1% 20.2%
財政収支 -14,994 -13,629 -11,957 -11,168 -11,189 -11,517
対GDP比率 -6.1% -5.1% -4.1% -3.5% -3.2% -3.0%
 (出所:フィリピン国家経済開発庁資料より作成)