政府のGDP成長率目標据え置き、2023年6.0~7.0%に

24年~28年は6.5~8.0%、インフレ2~4%、1ドル53~57ペソ

2023/06/11

  開発予算調整委員会(DBCC)は、6月9日、最近の内外情勢を分析するとともに、2028年までの政府の中期マクロ経済に関する前提や財政計画、成長目標の見直しを行った。

 今回の見直しにおいて決定された成長率目標はこれまでの目標が継続され、前提条件の多くも前回の見直し(2023年4月6日実施)の踏襲となった。ただ、前提条件における2023年のインフレ率、輸出や輸入の伸び率予想などが変更された。なお、DBCCは政府の経済関係部署の横断機関であり、マクロ経済目標決定などの役割を担っている。

 今回の見直しにおいて、2023年のGDP実質成長率目標(予想)に関しては、これまでの目標6.0%~7.0%が据え置かれた。2024年から28年に関しても、これまでの6.5%~8.0%という目標が継続されることとなった。これらの目標には、2023年の世界経済の減速、エルニーニョ現象ややその他の自然災害の影響、世界的な貿易摩擦やバリューチェーンの混乱などによってもたらされるリスクが考慮されているとのことである。DBCCは、フィリピンがこれらのリスクに耐え、今後2年間で上位中所得国のステータスを達成できると期待している。

 マクロ経済予想の前提条件に関しては、平均インフレ率が2023年5.0%~6.0%(前回は5.0%~7.0%)、2024年~2028年までは、これまでの2.0%~4.0%が踏襲されている。2023年は2~4%というインフレ目標の上限を突破するが、2024年以降はインフレ目標内に収まると想定。ドバイ原油価格は、前回と同様、2023年と2024年は1バレル70米ドル~90米ドル、2024年以降は60米ドル~80米ドルに低下すると想定された。

 ペソ対米ドルレートに関しては、2023年が1米ドル=54ペソ~57ペソ、2024年から2028年まで1米ドル=53ペソ~57ペソと想定された。一方、2023年の輸出伸び率は1.0%(前回は3.0%)、輸入伸び率は2.0%(前回は4.0%)へと下方修正された。2024年から2028年については、輸出、輸入ともに前回の想定が継続された。


 フィリピンのGDP実質成長率の推移と目標(2018年基準、単位:%)
14 15 16 17 18 19 20 21 22  23目標 24-28目標
伸び率 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7.6 6.0-7.0  6.5-8.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、目標は2023年6月9日のDBCC設定数値)

 マクロ経済目標・見通しの前提条件(2023年6月9日設定、太字が前回からの変更)
マクロ経済指標 2023年 2024年  2025年~28年
インフレ率(%) 5.0~6.0 2.0-4.0 2.0-4.0
ドバイ原油価格(米ドル/1バレル) 70-90 70-90 60-80
外国為替レート(ペソ/米ドル) 54-57 53-57 53-57
物品輸出増加率(BPM6基準) 1.0% 6.0% 6.0%
物品輸入増加率(BPM6基準) 2.0% 8.0% 8.0%
(出所:NEDA資料より作成)