22日に中央銀行政策会合、金利据え置き予想支配的に

14日の米国FOMCでは11会合ぶりに金利据え置き決定

2023/06/15

 フィリピン中央銀行は(BSP)は、現在、年8回の金融委員会(MB)定期政策会合を開催している。2023年のMB定期政策会合は、2月16日、3月23日、5月18日、6月22日、8月17日、9月21日、11月16日、12月14日開催と予定されている。1月、4月、7月、10月は開催されない。基本的には、政策金利など重要金融政策は、MB定期政策会合において決定される。急を要する場合は、臨時政策会合において金融政策変更が決定されることもあるが稀である。

 6月22日に開催される今年4回目のMB定期政策会合においては、前回に続いて金利据え置きが決定されるとの見方が支配的となっている。2023年5月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は6.1%、前月(2023年4月)の6.6%から更に鈍化、4カ月連続の減速で、2022年6月の6.1%以来、11カ月ぶりの低水準となった。

 このフィリピンの総合インフレ率減速にくわえ、米国の5月の総合インフレ率も4.0%で2年2カ月ぶりの低水準となった。そして、米国連邦準備理事会(FRB)は、14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決定した。FOMCでの金利据え置きは、11会合ぶりのことである。このFOMCでの久々の利上げ見送りで、フィリピンの2会合連続での金利据え置き観測がさらに強まった。

 ちなみに、5月18日の今年3回目のMB政策定例会合では、政策金利体系の据え置きが決定された。すなわち、主要政策金利である翌日物借入金利(RRP)6.25%を中心とする5.75%~6.75%という金利コリドーが継続されることになった。2022年5月から約1年間続いた利上げがひとまず停止されることになった。2022年5月以降の累計利上げ幅は4.25%に達し、RRPは2007年5月以来、約16年ぶりの高水準となっている。

 また、BSPは、6月8日、各金融機関に課している預金準備率(RRR)を引き下げると発表した。この引き下げ措置は6月30日に発効となる。預金準備は、各金融機関が受け入れ預金総額の一定比率を中央銀行に強制的に預け入れさせられる制度である。預金準備率が引き下げられると、各金融機関の貸出余力が増え、市中流動性が高まることになる。すなわち、預金準備率引き下げは、非金利型緩和政策といえる。この預金準備率は、拡大商業銀行・商業銀行・準銀行機能を有するノンバンク金融機関が12.0%から9.5%へ、デジタル銀行が8.0%から6.0%へ、貯蓄銀行が3.0%から2.0%へ、地域銀行や貯蓄組合が2.0%から1.0%へと引き下げられる。

 このように、BSPとFRBともに、ひとまず利上げを見送った。しかし、FRBは2023年内に2回の利上げを示唆したとのことである。フィリピンも総合インフレ率は減速傾向を辿っているが、コアインフレ率は依然として歴史的高水準。フィリピンのコアインフレ率は、今年3月、2000年12月の8.2%以来、22年3カ月ぶりの高水準となる8.0%へと上昇した。その後、4月7.9%、5月7.7%と僅かに減速しているが、ほぼ高止まりともいえる。したがって、一気に利下げに転ずることも難しい状況である。

 フィリピンの総合インフレ率とコアインフレ率の推移(2018年基準、平均値ベース)
2018年 2019年 2020年 2021年 2022年  23年3月 23年4月 23年5月 23年5カ月間
総合インフレ率 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8%  7.6% 6.6% 6.1% 7.5%
コアインフレ率 4.1% 3.4% 3.4% 3.0% 3.9%  8.0% 7.9% 7.7% 7.8%
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)