人身売買防止基準で8年連続の最高位、日本より上位

アジアで3カ国のみの「第1階層」:米国務省人身売買報告書

2023/06/21

 米国国務省は、6月15日、「2023年人身売買報告書」を発表した。

 この「人身売買報告書」は人身売買防止に関する各国政府の取り組みに関する最も包括的な世界的規模の報告書であり、人身売買に対する国際的な認識を高め、効果的な対策へと各国を後押しするものである。また、深刻な事例の被害者が多いとされる国に関する報告も含まれている。

 この報告書は、世界各国の人身売買の状況や対策などに関して、「第1階層」(人身売買防止の国際最低基準を満たしている)、「第2階層」(国際基準達成に向けて努力中)、「第2階層・監視リスト」(努力中だが成果見られず)、「第3階層」(改善努力や成果見えず)の4段階に分類しており、制裁対象となりうる第3階層が最低ランクとなっている。このほか、スペシャルケースが掲載されている。2023年版では約190カ国・地域が対象となっている。
 
 2023年版では、スペシャルケースとして、リビア、ソマリア、イエメンがリストアップされている。また、「第3階層」に指定されたのは、ミャンマー、カンボジア、中国、北朝鮮、アフガニスタン、キューバ、ロシアなど24カ国・地域。中国は、新疆ウイグル自治区での迫害行為などを背景に7年連続での最低ランクとなった。ロシアは侵攻したウクライナの児童の連れ去りや強制移住も問題視されている。

 下から2番目のランクである「第2階層・監視リスト」に分類されたのは26カ国・地域。東南アジアでは、ベトナム、マレーシア、ブルネイが指定されている。下から3番目、上から2番目である「第2階層」には、日本など105カ国・地域が指定されている。日本は2018年と2019年に「第1階層」へと昇格したが、外国人技能実習制度を「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」などとして、2020年以降は4年連続で「第2階層」にとどまっている。

 最上位の「第1階層」には、欧州主要国、豪州、カナダ、米国、チリ、コロンビアなど30カ国・地域が指定されている。アジアでは、フィリピン、シンガポール、台湾の3カ国・地域のみが指定されている。フィリピンは8年連続の「第1階層」指定。フィリピンが、アジアでは数少ない「第1階層」に8年連続で指定され、「第2階層」である日本より高い評価となっていることが注目される。フィリピン外務省(DFA)は、「人権の促進と保護へのコミットメントと、人身売買防止や被害者保護、人身売買加害者訴追のための絶え間ない包括的な取り組みが評価されている」と表明した。