37億ドル規模のマカティ市地下鉄事業、実現に暗雲

中国企業との合弁、タギグ市との地域区分紛争が更なる障害に

2023/09/07

 マカティ市大量輸送システム(マカティ市地下鉄)プロジェクトに更なる遅れが生じそうであり、実現を危惧する声も高まっている。

 マカティ地下鉄を推進しようとしているフィリピンINFRADEVホールディングス(インフラデブ、PSE取引コード:INFRA、旧社名:IRCプロパティーズ)は、9月6日、PSE回覧06779-2023号において、「最近の最高裁判所の判決により、以前はマカティ市の管轄内にあった地域がタギグ市の管轄となる。マカティ市との間で締結された合弁事業契約に基づいて設置が決定されたマカティ市地下鉄の車両基地といくつかの駅は、最高裁の判決によって影響を受ける地域に立地する。したがって、マカティ市地下鉄プロジェクトは、これまでの構想では実現不可能であり、構想の変更が必要となる。マカティ市に対して、最高裁判決に基づいて計画見直しを開始するよう提言した」と表明した。

 37億米ドル規模の「マカティ市大量輸送システム(マカティ市地下鉄、10キロメートル、10駅)」のオリジナル提案者であるIRCプロパティーズ(現フィリピンINFRADEVホールディングス)は、2018年10月、このプロジェクトのスイスチャレンジ方式(オリジナル提案者以外の事業者による対案とそれに対するオリジナル提案者の対抗提案の比較)の挑戦プロセスを得て、マカティ市官民連携(PPP)セレクション委員会からマカティ市地下鉄システム建設・事業への参画権を獲得した。そして、インフラデブ、中国鉄建公司(CRCC)の100%子会社である中国土木工程集団有限公司(CCECC)、マカティ市との間の官民連携合弁事業として推進されようとしてきた。2018年12月には、マカティ市地下鉄プロジェクトの起工セレモニー(セレモニアル・ドリリング)が、マカティ市市庁舎前で開催された。

 マカティ市とインフラデブは、2019年10月、マカティ市地下鉄プロジェクトにおける建設、運営、維持管理のJVAの一環として、マカティ市が地下鉄建設用地提供と引き換えに、インフラデブの転換優先株約6億5,666万株(1株当たり額面10ペソ、総額面約65億6,600万ペソ)を取得することで合意している。さらに、2020年10月には、マカティ市が地下鉄プロジェクトの通行権条例を可決した。具体的には、地下鉄建設の影響を受けるブエンディア、エドサ、JPリサール、サウスアベニューなど9本の道路の地下部分をカバーする通行権の取得を承認するマカティ市条例204-2020号を承認した。

 インフラデブは、このマカティ市地下鉄システム事業に関して、2020年、「子会社マカティシティ・サブウェイ(MCSI)を通じて、中国建築第二工程局有限公司との間で、EPC契約(フルターンキー契約)を締結した」と発表した。契約総額は12億1,276万米ドル、そのうち土木工事契約が9億7,860万米ドルを占める。しかし。その後は、新型コロナパンデミック発生もあって、プロジェクトの進行ピッチは遅々としたものなっている。2020年2月に合意された、香港Binjiang Industrial Limited(香港濱江實業有限公司)の出資・参画構想も2021年に白紙となってしまった。

 そして、上記のようにマカティ市とタギグ市との地域紛争において、最高裁判所は、729ヘクタールのボニファシオ グローバル シティ(BGC)コンプレックスと周辺ビレッジは、タギグ市に帰属するとの最終判決を下した。マカティ市地下鉄プロジェクトの一部がこの地域に跨ることもあって、プロジェクト進行が更に遅れることになった。もともと、インフラデブが大型工事の実績に乏しい小型企業であったということもあって、実現は容易ではないとの見方もあった。