比中央銀行、今週中にも緊急利上げの可能性

インフレ動向次第で11月16日の定期政策会合前に

2023/10/25

 フィリピン中央銀行(BSP)のレモロナ総裁は、10月24日、「金融委員会(MB)が、臨時の政策金利引き上げ(利上げ)を行うことを検討している」と表明した。

 レモロナ総裁は、「MBは臨時会合において物価統計などのデータを検討する。そのデータが、インフレ率が大きく上昇しインフレ期待に影響を与えるリスクがあると示しているようならば、早ければ、10月26日にも利上げが決定される可能性がある」とコメントした。

 BSPは現在、年8回の金融委員会(MB)政策定例会合を開催している。2023年のMB定期政策会合は、2月16日、3月23日、5月18日、6月22日、8月17日、9月21日、11月16日、12月14日開催と予定されている。1月、4月、7月、10月は開催されない。次回(2023年7回目)のMB定期政策会合(定期会合)は11月16日ということになる。

 基本的には、政策金利など重要金融政策は定期政策会合において決定される。しかし、急を要する場合は、臨時会合において金融政策変更が決定されることもある。2022年には、7月14日に臨時会合が開催され、0.75%の緊急追加利上げが決定されている。

 既に11月16日の次回定期政策会合において0.25%の追加利上げが決定されるとの観測が強まっている。しかし、次回定期政策会合は前回9月21日から約2カ月間の間隔が空いてしまう。最近の中東での戦闘による原油価格の再上昇やコメなど一部農産物価格の高騰等に速やかに対処する必要があるとの指摘もある。

 下表のように、BSPは9月21日に2023年フィリピンのインフレ率予想を5.8%へと上方修正、2024年については3.5%へと上方修正している。2024年は一応インフレ目標(2%~4%)圏内に収斂との予想であるが、10月21日には、2024年もインフレ目標の上限を突破する可能性が出てきたとも表明している。

 このようなインフレ動向に加え、米国の金融政策動向がフィリピンの金融政策に大きな影響を及ぼしてきている。米国連邦準備理事会(FRB)も年8回の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催している。2023年のFOMCは1月31日~2月1日、3月21日~22日、5月2日~3日、6月13日~14日、7月25日~26日、9月19日~20日、10月31日~11月1日、12月12日~13日と予定されている。2023年7回目のFOMCは10月31日~11月1日であり、フィリピンの7回目の定期会合より半月早い開催となる。

 フィリピンの総合インフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年予 2024年予 2025年予
2018年基準  N.A.  N.A. 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8% 5.8% 3.5% 3.4%
2012年基準 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A. N.A. N.A. N.A.
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2023年以降の予想はBSPの2023年9月21日時点の予想)