クボタと日本郵船グループのマルコペイが業務提携

比人船員の農機購入支援、下船時の副業に農業を提案

2023/10/30

 クボタのフィリピン販売子会社Kubota Philippines, Inc.(KPI社)と、日本郵船グループで船員向け金融プラットフォーム事業を展開するMarCoPay Inc.(マルコペイ社)が業務提携し、10月27日、フィリピン人船員の農業機械(農機)購入サポートを開始した。

 クボタや日本郵船の発表によると、船員向けモバイルアプリ「MarCoPay」上でクボタの農機ラインアップやディーラーの紹介、様々な購入特典の付与、ビジネスモデル提案セミナーなどのサービスを提供する。下船期間中に給与収入がなくなるフィリピン人船員に対し安定収入が得られる副業として農業を提案し、生活水準の向上を支援する。また稲作国であるフィリピンにおいて、農機の普及を通じた農業の発展を目指すとのことである。

 フィリピンは約20万人もの外航貨物船の船員を輩出する世界有数の船員供給国である。通常、これら外航貨物船の船員は、数カ月から半年以上にわたって乗船したのちに下船し、一定期間休暇を取って、また乗船するサイクルを繰り返す。フィリピン人船員は、下船期間に船員としての給与収入がなくなるため、生活を安定させるために副業を持つケースがある。また、フィリピンでは稲作を中心に農業が盛んであるが、依然として機械化が停滞している地域が多く残っている。

<サポートサービスの内容>
1. 購入までの情報提供
 船員が乗船中でも使用状況を遠隔確認できるGPS搭載のトラクタやコンバインをはじめとする製品ラインアップや取り扱いディーラーを「MarCoPay」アプリ上で紹介する。農機の購入は最寄りのディーラーとの契約になる。
2. 購入特典
 「MarCoPay」アプリで購入を検討し、クボタの農機を購入した船員に、GPS通信料の特別割引などの特典を提供する。
3. ビジネスモデル提案
 GPS搭載農機を購入し、船員自身や家族が使用するだけでなく、近隣農家に有償で貸し出して収入を得るなどのビジネスモデルをセミナーなどを通じて提案する。

 マルコペイ社は2019年7月、日本郵船とそのフィリピンでの提携企業トランスナショナル ダイバーシファイド グループ(TDG)によって設立された。始業に際して、シティグループや大手総合コンサルティング企業であるアクセンチュアとも提携している。2019年12月にフィリピン中央銀行(BSP)から電子通貨発行業のライセンスを取得、2020年1月に日本郵船の保有船でマルコペイのサービスを開始した。その後、サービス内容や対象先を拡大、2021年6月には丸紅が出資、2022年3月には三菱UFJ銀行が出資、4社の合弁企業となった。

 マルコペイ社は、上記のようにスマートフォンのアプリで電子通貨による給与受取り、送金、現金化、融資申請、保険や投資商品等を購入できる電子通貨プラットフォーム「MarCoPay」を運営している。このプラットフォームの導入により乗船期間中の給与支給を一部電子通貨で行うことで、現金管理費用を圧縮し、出納業務に要する労力や時間の軽減、現金盗難・紛失のリスクを低減する。また、電子通貨の特性を生かし、船員は乗船期間中も自国への送金が可能である。融資面においては、フィリピン人船員を対象とした融資サービスを行っている。

 2022年12月には日本航空(JAL)と提携し船員福祉充実や訪日観光を推進、2023年4月には三菱UFJ銀行が20%出資する有力拡大商業銀行であるセキュリティバンク(証券コード:SECB)と提携し融資事業などを強化、2023年8月には三菱自動車工業の生産・販売拠点であるミツビシモーターズ フィリピン(MMPC)と提携し船員向けの新車販売を促進する取り組みを開始した。