日比首脳会談、部隊間協力円滑化協定(RAA)交渉開始で一致

東シナ海及び南シナ海の深刻な懸念共有、協力関係深化へ

2023/11/04

 日本外務省によると、フィリピンを訪問中の岸田文雄内閣総理大臣は、11月3日現地時間午後6時25分から約85分間、フェルディナンド・マルコス大統領と、フィリピン大統領府において、日・フィリピン首脳会談を実施、会談後に共同プレスステートメントが発出された。概要は以下のとおり。

1.安全保障・防衛協力
 マルコス大統領は、2月の日・フィリピン共同声明の着実なフォローアップを通じて二国間関係を更に深化させるとともに、両国の協力案件を着実に進展させたいと述べた。岸田総理大臣は、政府安全保障能力強化支援(OSA)による最初の協力案件である沿岸監視レーダーシステム供与に係る交換公文の署名に至ったことを歓迎するとともに、警戒管制レーダーの移転を含む防衛装備・技術協力や巡視船供与を含む海洋安全保障能力向上に係る協力を引き続き強化したいと述べた。
 両首脳は、部隊間協力円滑化協定(RAA)の交渉開始で一致したことを歓迎。また、外交・防衛閣僚会合(「2+2」)の実施を含む安全保障・防衛分野での二国間協議を着実に実施すべく、調整を進めることで一致した。さらに、日米比協力を推進し、サイバーセキュリティ、経済安全保障等の分野における協力も一層進めていくことでも一致した。

2.経済・人的交流
 岸田総理大臣は、ダルトンパスやマニラ地下鉄といったインフラ整備を始め、マルコス大統領の「ビルド・ベター・モア」政策を引き続き官民挙げて支援していきたいと述べた。また、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域の社会経済開発に向け災害対策用重機供与に係る交換公文への署名を歓迎した上で、和平プロセスの進捗に応じた支援を進めていくと述べた。マルコス大統領から、ミンダナオ和平におけるこれまでの日本の支援を高く評価するとともに、貢献に謝意が示された。

 両首脳は、経済協力インフラ合同委員会を通じて、ODAと共に官民連携のインフラ整備の可能性を追求すること、経済関係の強化に向けて、産業協力対話等を通じた企業の協働によるイノベーション創出の促進を図ることを確認した。
 
 また、両首脳は、投資環境整備、オープンRANを含む情報通信、スマート農業、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想に係る連携を含む脱炭素・エネルギー等の分野において協力を進めることで一致するとともに、今般の観光分野における両国間の協力強化を目的とする観光協力覚書及び持続可能な社会の発展に資する鉱業分野における協力覚書の署名を歓迎した。

3.地域・国際情勢
 地域情勢に関しては、力による一方的な現状変更の試みは容認できず、東シナ海及び南シナ海の状況に対する深刻な懸念を共有した。岸田総理大臣は、イスラエル・パレスチナ情勢につき、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難するとともに、人質の即時解放・一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法に従って行動すべきこと、周辺国への波及防止と事態の早期沈静化、ガザの人道状況の改善が重要であるとの日本の立場を説明した。また、両首脳は、北朝鮮等の地域及び国際社会の諸課題についても引き続き連携して対応することで一致した。

4.文書交換式・共同記者発表
 両首脳の立ち会いの下、以下の二国間協力関連文書の交換を行った。
・政府安全保障能力強化支援(OSA)による沿岸監視レーダーシステム供与に係る交換公文(詳細別掲)
・バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域における災害対策用重機供与に係る交換公文(詳細別掲)
・国土交通省とフィリピン観光省との間の観光協力覚書
・経済産業省とフィリピン環境天然資源省との間の鉱物資源分野における協力覚書
 文書交換式に続いて、両首脳は共同記者発表を行った。