インフレ目標、実質4年連続での未達成懸念

中銀、24年のリスク調整インフレ率4.2%と予想

2023/12/15

  フィリピン中央銀行は(BSP)は、12月14日の政策金利据え置き決定(詳細別掲)に際して、2023年のリスク調総合インフレ率予想について、これまでの6.1%から6.0%へと下方修正した。下方修正されたが、インフレ目標(2%~4%)の上限を大幅に突破、インフレ目標が実質3年連続で未達成となることが確実となっている。

 2024年のリスク調整総合インフレ率予想についても、これまでの4.4%から4.2%へと下方修正されたがインフレ目標上限を突破、インフレ目標が実質4年連続で未達成となることが懸念される状況である。2025年予想についてはこれまでの3.4%が継続された。すなわち、2025年にはインフレ目標圏内に収斂すると見られている・
 
 なお、フィリピン統計庁(PSA)は、2022年1月分(2月4日発表)から、インフレ統計の基準年(指数を100とする年)をそれまでの2012年(旧基準)から2018年(現行基準)に変更した。2021年の平均インフレ率は、2018年基準では3.9%でインフレ目標(2%~4%)に収まったように見えるが、目標設定時の2012年基準では4.5%であり、インフレ目標は達成できなかった。2022年は平均5.8%と2008年の平均8.2%以来、14年ぶりの高水準となり、2023年は更に加速という結果となりそうである。2024年のインフレ率が4.0%突破となると、実質4年連続でのインフレ目標未達成となる。

 フィリピンのインフレ目標は、2015年以降、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)が継続されてきている。2015年は0.7%、2016年は1.3%とインフレ目標の下限以下にとどまり、目標未達成となった。2017年は2.9%で目標を達成したが、2018年は5.2%と急上昇、インフレ目標の上限を大きく上回ってしまった。2019年と2020年は2年連続で目標達成となったが、2021年は3年ぶりに未達成、2022年は連続未達成で、2022年までの8年間の目標達成率は37.5%にとどまっている。


 なお、インフレ率予想(Forecast)とインフレ目標(Target)が混同されることが多いが、両者は異なるものである。予想は単純な見通しであり環境が変化すればその都度変更されるものである。インフレ目標(Target)は金融政策の基本的枠組みであり、それを基準として各種政策が決定されるものであり頻繁に変更されるものではない。


 フィリピンの総合インフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年予 2024年予 2025年予
2018年基準 N.A. N.A. 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8% 6.0% 4.2% 3.4%
2012年基準 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A. N.A. N.A. N.A.
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2023年以降の予想はBSPの2023年12月14日時点のリスク調整ベース予想)