日本工営、比等ASEANでカーボンクレジット創出事業

グリーンカーボンと協働、水稲栽培におけるメタンガス削減

2024/02/14

 カーボンクレジットの創出・販売支援事業を行うGreen Carbon株式会社(グリーンカーボン、本社:港区南青山)は、2月13日、「日本工営(本社:東京都千代田区)とカーボンクレジット創出事業に関する協業を開始した」と発表した。

 グリーンカーボンは日本工営と協力し水稲栽培における中干し期間の延長・間断灌漑(AWD)を通して、日本および東南アジアにおけるメタンガス削減によるカーボンクレジット(クレジット)創出を目指す。間断灌漑は水田の水位を目安に、数日おきに水田に水を満たした状態と水を落として干した状態を繰り返すという手法である。間断灌漑の場合、連続的な灌漑と比較して水使用量を削減できるため、水資源の保全にも寄与する。

 カーボンニュートラル実現に向けた企業や自治体の取り組みは、多岐にわたる。そのうちの一つに、排出される温室効果ガスに見合った量の、温室効果ガスの削減活動に投資するカーボン・オフセットがある。排出削減量を「クレジット」として認証を取得することで、取引が可能となる。

<協業の背景>
 グリーンカーボンは、東南アジアを中心にクレジット創出・販売支援事業を展開しており、東南アジアでは、水田の間断灌漑(AWD)実施を通じたメタンガス削減によるクレジット創出をメインに活動している。

 東南アジアでは灌漑施設が整っていない地域が多く、そのような地域ではAWDに必要な用水量のコントロールが困難である。また、現地の水田農家の所得は低く、農家の所得向上や農法支援も重要である。加えて、農家のクレジット創出のための労力削減も1つの課題である。このように、東南アジアでAWDを活用したクレジット創出を実施するには、1.クレジット創出に向けた水管理の指導、2.クレジット取得支援と営農指導による所得向上、3.クレジット創出のための労力削減の3つの課題を解決する必要がある。

 日本工営はODA(政府開発援助)案件を通じて東南アジアの灌漑施設整備の豊富な実施経験を有している。現在までに日本工営が携わった東南アジア(フィリピン、タイ、ベトナム)の灌漑施設を活用し、水田の水管理に関するコンサルティングを行うことが可能である。両社は協業を行うことで、日本工営の水管理及び営農支援の豊富な実績とグリーンカーボンのクレジット創出事業の知見を集積し、現地農家のAWDを活用したクレジット創出支援を行う。

<連携の効果>
 グリーンカーボンと日本工営の両社は、クレジットの創出・販売支援や、現地農家へのAWDの指導を通じて、収量増加による所得向上に寄与し、東南アジアの脱炭素化を促進する。グリーンカーボンは、フィリピン大学やベトナム国家農業大学と共同でAWDの実証研究を行い、研究成果を本プロジェクトに活用する。

<クレジット創出までの労力削減>
 グリーンカーボンはプラットフォームサービス「Agreen(アグリーン)」を活用し、農家のクレジット創出まで労力を削減する。Agreenはクレジット創出量を試算するとともに、必要書類をサービスサイトへアップロードすることで、複雑な申請手続きからプロジェクトの実施支援、クレジットの販売までを一気通貫で支援するワンプラットフォームサービスである。現時点では国内のみでの運用であるが、今年を目処に海外でも展開していく予定である。

<今後の展開>
 グリーンカーボンと日本工営は協業を通して、東南アジアにおけるAWDによるクレジット創出と農家への収益還元の実証と拡大を行う。今後は、東南アジアでのクレジット創出事業のノウハウを用いて、日本工営が事業を行う中東・アフリカ・中南米・その他地域への展開を目指す。

<東南アジア(タイ・フィリピン・ベトナム)AWD実施によるポテンシャル>
 日本工営が実施した業務に関連する灌漑施設はタイ・フィリピン・ベトナムに計60施設あり、1施設あたりの水田面積を約1万haとして計算した場合、総面積は約60万haに達する。すべての水田でAWDを導入した場合(多期作が一般的なことを考慮)、約360万トンの温室効果ガス削減が見込まれ、カーボンクレジット価格に換算すると、年間約72億円/年の経済価値を生み出すことになる。