セブン銀行のフィリピンATM設置進展、23年末3,017台に
前年末比30%増、利用件数は海外最高、比セブンにて展開
2024/02/29
セブン銀行のフィリピンATM事業が順調に進展している。2021年2月にセブン‐イレブンの店舗網へフィリピン初となる紙幣還流型ATM(キャッシュリサイクル機)設置を開始、2023年12月7日に設置台数が3,000台に到達した。設置開始から2年10カ月で3,000店に達した。1,000台到達は2011年12月2日、2,000台到達は2022年11月14日であり、年間1,000台以上のペースで増加した。そして、2023年12月末には3,017台に達した。取引件数も急増、既に先行のインドネシア、米国を上回っており、2024年には事業の黒字化が期待される。セブン‐イレブン以外のチェーン店への試験導入も開始されている。
【フィリピンでは100%子会社PAPIが展開】
セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン銀行(本社:東京都千代田区)は、現在、海外では米国、インドネシア、フィリピンでATMサービス事業を展開している。まず2013年に米国でATM事業を開始、2014年にはインドネシアでATM事業を展開する合弁企業PT. ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONAL(ATMi)を設立した。フィリピンでは2019年に完全子会社Pito AxM Platform, Inc.(PAPI、本社:マニラ首都圏マカティ市、資本金:8,500万ペソ)を設立した。
【セブン‐イレブン店舗でフィリピン初の紙幣還流型ATM展開】
PAPIは最大のコンビニエンスストアチェーンであるセブン‐イレブン・フィリピン(比セブン‐イレブン、2023年9月末3,624店)を保有・運営するフィリピン セブン(証券コード:SEVN、本社:マニラ首都圏マンダルヨン市)との間で、比セブン‐イレブン店舗でのATM設置・運営・保守事業等の展開を目的とした業務提携契約を締結した。2021年2月に、フィリピン国内初となる紙幣還流型ATM設置による利便性の高いATMサービス提供を開始した。すなわち、フィリピン事業は後発であり歴史も浅いが、利便性が高いこともあってこれまで急成長が続いてきている。
【ATM設置急ピッチで進展、地方にも】
フィリピンでのPAPIによるATM設置が開始された2021年2月末の設置は11台(11店)であったが、表1のように、2021年12月末に1,249台に達した。2022年は1年間で1,075店に設置、2022年末の設置台数は2,324台、2022年末の比セブン‐イレブン全店舗数3,393店の68%をカバーするに至った。2021年はマニラ首都圏を含むルソン地域の店舗での設置であったが、2022年は地方店舗でも設置、2022年末のセブでの設置は148台、ダバオでの設置は82台となった。
【23年末30%増の3,012台に、中期6,000台目標】
2023年も設置が進展、表1のよう2023年末の設置台数は前年末比29.8%増の3,017台(セブン銀行発表の速報値)に達した。そして、上記のように12月7日に3,000台に到達、2024年の早い時期にほぼ全店への設置が達成されそうとのことである。3,000台設置後、2,000台~3,000台程度を上乗せする方針であり、中期的には6,000台設置を視野に入れている。
【1台当たり利用件数インドネシアの3倍に】
これらのATMの1台当たり1日平均利用件数は、2021年第1四半期の30.6件から、2021年第4四半期には99.4件、2022年第4四半期には156.7件と順調に伸びている。2023年第1四半期は、対顧客手数料の値上げ等が影響したことで144.4件へと一時的に小幅減少したが第2四半期は156.7件、第3四半期には168.6件へと再増加、四半期ベースでの過去最高記録を更新した。そして、インドネシアの52.3件の約3倍に達している。
【総取引件数急増、海外最大に】
表3のように、フィリピンでのATM総取引件数は事業開始の2021年第1四半期には10万件程度にすぎなかったが、2022年第4四半期には2,700万件へと急増、先行のインドネシアの2,560万件を上回るに至った。そして、2023年第3四半期には4,020万件に達し、海外総取引件数1億1,360万件の35.4%を占め、米国の34.9%を上回り海外最高となった。
表1.セブン銀行のフィリピンATM台数等の推移(台数は四半期末ベース、利用件数は平均値)
(出所:セブン銀行やフィリピンセブン資料より作成。2023年3Qはセブン銀行発表の速報値)
表2.セブン銀行のインドネシアでのATM台数等の推移(台数は四半期末ベース、利用件数は平均値)
(出所:セブン銀行資料より作成。2023年3Qは速報値)
表3.セブン銀行の海外ATM総利用件数の推移(単位:百万件)
(出所:セブン銀行資料より作成、シェアは2023年第2四半期ベース)
【2024年の早期黒字化期待】
フィリピンに導入したATMはキャッシュリサイクル機でコストがやや高いこともあって、フィリピンATM事業はまだ赤字である。2023年上半期(1月~6月)の経常収入は21億3,000万円、経常損益は4億5,000万円の赤字であった。しかし、7月以降は単月ベースで黒字基調となっている。したがって、2023年通年の経常損益は2億円程度の赤字見込みであり、上半期時点の赤字の半分以下に縮小、2024年には年間ベースでの黒字化が期待される。
【BDOなど地場大手3行と提携】
フィリピンでのATM事業開始に際して、フィリピン大手銀行の一つであるBDOユニバンク(証券コード:BDO、本社:マニラ首都圏マカティ市)とATM提携を開始、その後も政府系銀行ランドバンク・オブ・ザ・フィリピンズ(ランドバンク)と提携、さらに2023年8月からはユーチェンコ財閥の有力銀行リサール商業銀行(RCBC、証券コード:RCB)とも提携、3行と直接提携するに至った。
【SM系アルファマートへの試験導入も開始】
なお、上記のように比セブン‐イレブンへのATM設置は2024年の早い時期に達成見込み。したがって、セブン銀行は比セブン‐イレブン以外の小売店舗にもATM設置を図る。既に、SM財閥の旗艦企業SMインベストメンツ(証券コード:SM)とインドネシアの有力小売りチェーンとの合弁ミニマートチェーン「アルファマート」(2023年6月末時点で1,528店)への設置を試験的に開始している。
【フィリピンでは100%子会社PAPIが展開】
セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン銀行(本社:東京都千代田区)は、現在、海外では米国、インドネシア、フィリピンでATMサービス事業を展開している。まず2013年に米国でATM事業を開始、2014年にはインドネシアでATM事業を展開する合弁企業PT. ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONAL(ATMi)を設立した。フィリピンでは2019年に完全子会社Pito AxM Platform, Inc.(PAPI、本社:マニラ首都圏マカティ市、資本金:8,500万ペソ)を設立した。
【セブン‐イレブン店舗でフィリピン初の紙幣還流型ATM展開】
PAPIは最大のコンビニエンスストアチェーンであるセブン‐イレブン・フィリピン(比セブン‐イレブン、2023年9月末3,624店)を保有・運営するフィリピン セブン(証券コード:SEVN、本社:マニラ首都圏マンダルヨン市)との間で、比セブン‐イレブン店舗でのATM設置・運営・保守事業等の展開を目的とした業務提携契約を締結した。2021年2月に、フィリピン国内初となる紙幣還流型ATM設置による利便性の高いATMサービス提供を開始した。すなわち、フィリピン事業は後発であり歴史も浅いが、利便性が高いこともあってこれまで急成長が続いてきている。
【ATM設置急ピッチで進展、地方にも】
フィリピンでのPAPIによるATM設置が開始された2021年2月末の設置は11台(11店)であったが、表1のように、2021年12月末に1,249台に達した。2022年は1年間で1,075店に設置、2022年末の設置台数は2,324台、2022年末の比セブン‐イレブン全店舗数3,393店の68%をカバーするに至った。2021年はマニラ首都圏を含むルソン地域の店舗での設置であったが、2022年は地方店舗でも設置、2022年末のセブでの設置は148台、ダバオでの設置は82台となった。
【23年末30%増の3,012台に、中期6,000台目標】
2023年も設置が進展、表1のよう2023年末の設置台数は前年末比29.8%増の3,017台(セブン銀行発表の速報値)に達した。そして、上記のように12月7日に3,000台に到達、2024年の早い時期にほぼ全店への設置が達成されそうとのことである。3,000台設置後、2,000台~3,000台程度を上乗せする方針であり、中期的には6,000台設置を視野に入れている。
【1台当たり利用件数インドネシアの3倍に】
これらのATMの1台当たり1日平均利用件数は、2021年第1四半期の30.6件から、2021年第4四半期には99.4件、2022年第4四半期には156.7件と順調に伸びている。2023年第1四半期は、対顧客手数料の値上げ等が影響したことで144.4件へと一時的に小幅減少したが第2四半期は156.7件、第3四半期には168.6件へと再増加、四半期ベースでの過去最高記録を更新した。そして、インドネシアの52.3件の約3倍に達している。
【総取引件数急増、海外最大に】
表3のように、フィリピンでのATM総取引件数は事業開始の2021年第1四半期には10万件程度にすぎなかったが、2022年第4四半期には2,700万件へと急増、先行のインドネシアの2,560万件を上回るに至った。そして、2023年第3四半期には4,020万件に達し、海外総取引件数1億1,360万件の35.4%を占め、米国の34.9%を上回り海外最高となった。
表1.セブン銀行のフィリピンATM台数等の推移(台数は四半期末ベース、利用件数は平均値)
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||||||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | |
設置台数 | 132 | 367 | 681 | 1,249 | 1,497 | 1,814 | 1,966 | 2,324 | 2,397 | 2,637 | 2,752 | 3,017 |
1台1日の利用件数 | 30.6 | 64.3 | 72.3 | 99.4 | 109.6 | 122.5 | 128.6 | 156.7 | 144.4 | 156.7 | 168.6 | N.A. |
表2.セブン銀行のインドネシアでのATM台数等の推移(台数は四半期末ベース、利用件数は平均値)
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||||||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | |
設置台数 | 1,059 | 1,399 | 1,764 | 2,551 | 3,285 | 4,051 | 4,733 | 5,557 | 6,166 | 6,749 | 7,359 | 7,959 |
1台1日の利用件数 | 75.1 | 72.5 | 67.2 | 63.2 | 58.7 | 57.8 | 58.0 | 54.4 | 52.4 | 52.9 | 52.3. | N.A. |
表3.セブン銀行の海外ATM総利用件数の推移(単位:百万件)
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||||||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 3Qシェア | |
海外合計 | 51.9 | 55.3 | 57.5 | 61.2 | 66.5 | 76.4 | 84.4 | 92.5 | 92.4 | 104.0 | 113.6 | 100.0% |
フィリピン | 0.1 | 1.4 | 3.4 | 8.5 | 13.0 | 16.9 | 20.2 | 27.0 | 26.3 | 33.5 | 40.2 | 35.4% |
インドネシア | 5.9 | 8.1 | 9.2 | 11.9 | 15.3 | 19.1 | 23.0 | 25.6 | 27.3 | 31.0 | 33.7 | 29.7% |
米国 | 45.9 | 45.8 | 44.9 | 40.8 | 38.2 | 40.4 | 41.2 | 39.8 | 38.6 | 39.4 | 39.6 | 34.9% |
【2024年の早期黒字化期待】
フィリピンに導入したATMはキャッシュリサイクル機でコストがやや高いこともあって、フィリピンATM事業はまだ赤字である。2023年上半期(1月~6月)の経常収入は21億3,000万円、経常損益は4億5,000万円の赤字であった。しかし、7月以降は単月ベースで黒字基調となっている。したがって、2023年通年の経常損益は2億円程度の赤字見込みであり、上半期時点の赤字の半分以下に縮小、2024年には年間ベースでの黒字化が期待される。
【BDOなど地場大手3行と提携】
フィリピンでのATM事業開始に際して、フィリピン大手銀行の一つであるBDOユニバンク(証券コード:BDO、本社:マニラ首都圏マカティ市)とATM提携を開始、その後も政府系銀行ランドバンク・オブ・ザ・フィリピンズ(ランドバンク)と提携、さらに2023年8月からはユーチェンコ財閥の有力銀行リサール商業銀行(RCBC、証券コード:RCB)とも提携、3行と直接提携するに至った。
【SM系アルファマートへの試験導入も開始】
なお、上記のように比セブン‐イレブンへのATM設置は2024年の早い時期に達成見込み。したがって、セブン銀行は比セブン‐イレブン以外の小売店舗にもATM設置を図る。既に、SM財閥の旗艦企業SMインベストメンツ(証券コード:SM)とインドネシアの有力小売りチェーンとの合弁ミニマートチェーン「アルファマート」(2023年6月末時点で1,528店)への設置を試験的に開始している。
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