23年の大手通信伸び悩み、利益と携帯でPLDTが首位奪回

EBITDA:PLDTが4%増の1,043億ペソ、グローブ3%増の814億ペソ

2024/03/08

 長らくフィリピンの通信市場をほぼ独占してきたPLDT(証券コード:TEL)とグローブテレコム(グローブ、証券コード:GLO)の2023年(1月~12月)の決算発表が出揃った
 
 2023年は2社ともに3%増収とやや伸び悩んだ。新型コロナウイルスパンデミック時の在宅勤務、オンラインショッピング、遠隔教育、遠隔医療、家庭でのeゲームやビデオストリーミングなどデジタル化・オンライン化急進展による通信量の急拡大の反動、新規参入などによる競争激化、財務体質強化優先などが響いている。ただし、データ関連事業は順調に拡大しているほか、電子決済事業が成長軌道に乗っている。

 最大手のPLDTの2023年の総収入は前年比(以下同様)3%増の2,110億ペソ。報告帰属純利益は154%増の266億ペソとなった。資産売却益、資産評価損益など一時的損益等を除いた通信事業のコア利益は3%増の343億ペソ。EBITDA(金利・税金・償却前利益)は4%増の1,043億ペソ、設備投資額は13%減の851億ペソ、償却費は2%減の469億ペソであった。

 一方、グローブの総収入は3%増の1,623億ペソ、報告帰属純利益は29%減の245億ペソとなった。前年同期はデータセンター事業の一部売却益が計上され46%増益であったことの反動もあって二桁減益となった。資産売却益、資産評価損益など一時的損益等を除いたコア純利益は1%減の191億ペソ。EBITDAは3%増の814億ペソ、設備投資額は30%減の706億ペソ、償却費は4%増の474億ペソであった。

 上記のように、報告ベースの帰属純利益はPLDTが154%増の266億ペソ、グローブが29%減の245億ペソと明暗を分けたかたちとなっているが、両社ともに2021年と2022年の一時的損益や税制改革に大きく影響を受けている。PLDTの2022年の帰属純利益は60%減の105億ペソと大幅減益、グローブは46%増の346億ペソと大幅増益であり、2023年はその反動という結果となった。

 2023年は実質ベースではPLDTが小幅増益、グローブが小幅減益であった。EBITDAベースではともに小幅増にとどまっている。報告帰属純利益ベースや携帯電話加入総数で、PLDTが首位の座を奪回したことが注目される。
 
 2023年末の携帯電話加入総数(SIMカードベース、重複見含む)はPLDTが前年末比19%減の5,783万、グローブが同34%減の5,705万へと大幅減少した。これは携帯電話などの悪用によるサイバー犯罪を阻止するための「SIMカード登録義務化法(共和国法第11934号)」が施行され、2023年7月25日が登録期限であったことが影響している。不稼働のSIMなどが登録されなかった。このような状況下で、PLDTが携帯電話加入総数で首位の座を奪回した。

 通信大手2社の2023年9カ月間業績(収益等の単位:億ペソ、純利益は報告帰属ベース)
企業名 総収入 増収率 純利益 増益率 携帯加入者 伸率 設備投資  伸率   減価償却
PLDT 2,110 3% 266 154% 5,783万人 -19% 851 -13%  469
グローブ 1,623 3% 245 -29% 5,705万人 -34% 706 -30%  474
 (出所:各社の事業報告書などより作成)