住友商事、フィリピンで革新的車両融資事業を展開

フィンテックのGMSと提携、就業機会の創出と与信補強へ

2024/03/26

 住友商事はフィリピンの二輪車金融会社である住商モーターファイナンス(SMF)を通じて、ギグワーカーと呼ばれる個人事業主に似た労働形態の比較的低与信層に向けた金融包括型フィンテックを提供するGlobal Mobility Service Philippines, Inc(GMSP)との提携を開始する。GMSPは、金融包摂型FinTechサービスをグローバルに展開する日本発のスタートアップGlobal Mobility Service株式会社(GMS、本社:東京都千代田区)のフィリピン子会社である。

 具体的には、フィリピンのドライバー連合であるトライシクルオペレーターズ&ドライバーズアソシエーション所属の運転手に対してSMFが車両購入資金を拠出し、GMSPがドライバーの就業支援を行う。

 フィリピンでは、観光だけでなくビジネス目的の来訪者も増加傾向にあるが、現地の移動需要増加に対応するドライバーの人手不足が喫緊の課題となっている。日本のドライバーはタクシー会社や運送業者に所属し運転業務を行うことが一般的である一方で、フィリピンのドライバーはギグワーカーとして働くことが主流である。そのため、ドライバー業を始める際には、まず自費で車両を購入する必要があるが、フィリピンのドライバーは低所得層が占める割合が多く、車両購入のローン審査が通らず仕事を得ることができないという貧困の連鎖が発生している。

 このような状況に対応すべく、GMSのFinTechサービスを活用し、車両を安全に遠隔起動制御するIoTデバイス「MCCS」を搭載した車両を対象としたローンを提供する。GMSPが車両を調達したい個人や組織などの窓口となりローン申請を受付け、SMFが車両購入に必要な資金の融資を行う。また、車両を提供するだけではなく、GMSの与信創造プラットフォームMSPFにて走行データやローンの支払データを活用したドライバーの信用補強を行い、現地金融機関とパートナーシップを組み、ドライバーのさらなる金融サービスの利用を促す仕組みを構築していく。GMSは、フィリピンにおいて、2015年より、MCCSを用いたフィンテックサービスを提供している。

 SMFとGMSは、フィリピンにおける輸送能力向上と比較的低与信層の就業機会創出を実現し、社会課題の解決を目指すために今回の提携に至った。住友商事、そしてSMFは今回の提携を通して、従来与信が難しかったギグワーカーへの融資を推進すると共に、フィリピンにおけるドライバーの就業支援を行っていく方針である。

 なお、SMFは、フィリピンの二輪専業ファイナンスで業界第一位のシェアを誇り、約15年にわたって車両購入資金の融資を行ってきている。SMFには、住友商事が50%、GTキャピタル(証券コード:GTCAP)などメトロバンクグループが50%出資している。

 SMFの2023年の総金利収入は前年比(以下同様)15.2%増の18億6,000万ペソ、純金利収入は12.4%増の16億4,000万ペソと二桁増収になった。融資残高は4.9%増の70億1,000万ペソへと増加した。貸倒引当の増加や抵当権実行損失など一時的要因により、純利益は43.4%減の2億1,690万ペソにとどまったが、下表のとおり、事業規模は順調に拡大している。

 住商モーターファイナンスの業績推移(単位:百万ペソ)
2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 伸び率
金利収入 1,655.4 1,757.4 1,671.4 1,613.0 1,858.1 15.2%
純金利収入 1,436.1 1,511.6 1,483.7 1,462.3 1,643.8 12.4%
純利益 354.8 77.2 200.4 383.2 216.9 -43.4%
融資残高 6,854.7 6,250.2 6,134.4 6,678.4 7,006.5 4.9%
(出所:GTキャピタル事業報告書などより作成)