格付投資情報センター、フィリピン格付を「A-」に引き上げ

日本格付研究所に次いでA範疇に、欧米機関より高い評価

2024/08/15

 日本の有力格付機関である格付投資情報センター(R&I)は、2024年8月14日、フィリピン格付に関して、外貨建発行体格付をこれまでの「トリプルBプラス(BBB+)」を「Aマイナス(A-)」に引き上げると発表した。外貨建短期債務の格付に関してもこれまでの「a-2」から「a-1」へと引き上げられた。
 
 一方、フィリピンの格付方向性(見通しに)ついては、格付自体の引き上げに伴い、これまでの「ポジティブ(近い将来の格付引き上げの可能性があるという意味)」から、「安定的(当面格付の変更の可能性が薄いという意味)」に変更された。

 R&Iは今回のフィリピン格付引き上げの理由として、政府と民間による積極的な投資、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)に代表される国内産業の発展、人口増などを背景に、経済の安定成長と所得水準の継続的な上昇が見込まれる。コロナ対応で悪化した財政収支は国内総生産(GDP)比で改善し、政府債務比率も1~2年以内には低下に転ずる見通しである。経常赤字および対外債務は抑制されており、対外面での懸念は小さい。銀行部門も安定を保つ。マクロ経済の安定と高い成長経路、財政の改善基調の維持が見込めると判断し、外貨建発行体格付をA‐に引き上げた」と概括している。

 日本のもう一つの有力格付機関である日本格付研究所(JCR)は、既に2020年6月11日、フィリピン格付をそれまでの「トリプルBプラス(BBB+)」から「Aマイナス(A-)に引き上げている。今回のR&Iの引き上げにより、日本の2大格付機関のフィリピン格付は揃ってA範疇となった。

 なお、世界3大格付機関に関しては、米国系のスタンダード&プアーズ(S&P)が、フィリピンの格付を「トリプルBプラス(BBB+)」、格付アウトルック(格付見通し)を「ステーブル(安定的)」としている。「トリプルBプラス」は投資適格最低基準の2段階上であり、A範疇まであと一歩というステータスである。

 S&Pと同じ米国系のムーディーズ インベスターズ サービス(ムーディーズ)のフィリピン格付は、2014年12月から「Baa2」が継続されている。「Baa2」は他の格付機関の「トリプルB(BBB)」と同格である。すなわち、欧州系のフィッチ レーティングス(フィッチ)のフィリピン格付「BBB」と同じ評価となっている。