資金洗浄監視国指定、比司法省が10月に解除と期待

POGO禁止等が寄与か、現在ベトナム等とともにグレーリスト

2024/09/25

 フィリピン司法省(DOJ)のジェシー・エルモヘネス・アンドレス次官は、9月24日にマニラで開催された2024年全国知的財産権委員会ハイレベル会議のブリーフィングにおいて、「今年10月に、FATFによるフィリピンに対する資金洗浄監視国指定が解除される可能性が高い」と表明した。

 FATFは、国際的な資金洗浄(マネーロンダリング)を防止するための金融活動作業部会(本部パリ)のことである。アンドレス次官は、「FATFがフィリピンに対して要求してきた資金洗浄監視国指定解除に必要な条件はクリアーしたと考えられる。したがって、10月に実施されるFATFの監視国に関する協議において、フィリピンが監視対象から除外されることが期待される」と強調した。すなわち、フィリピン中央銀行(BSP)やマネーロンダリング防止協議会(AMLC)を中心とした監視国指定解除努力が報われそうとのことである。

 なお、2024年2月21日~23日に開催されたFATFの直近の総会において、フィリピンは、資金洗浄に関する強化モニタリング対象国・地域リスト(グレーリスト)に据え置かれることが決定した。フィリピンは、2021年6月、約16年ぶりに資金洗浄監視対象国リスト入りしたという経緯がある。フィリピン政府は2024年2月までのグレーリストからの除外を目標としてきたが除外には至らなかった。

 この時の総会でのグレーリスト指定国・地域は、フィリピン、バルバドス、ブルガリア、ブルキナファソ、カメルーン、コンゴ民主共和国、クロアティア、ジブラルタル、ハイチ、ジャマイカ、ケニア、マリ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、南スーダン、シリア、タンザニア、トルコ、ウガンダ、UAE、ベトナム、イエメンの25カ国・地域。2023年10月時点のグレーリストにケニア、ナミビアが加えられた。なお、グレーリスト指定国より更なる厳しい監視対象である高リスク国・地域(ブラックリスト)には、北朝鮮、イラン、ミャンマーが継続指定されている。

 なお、FATFは、フィリピンの資金洗浄防止やテロ資金供与防止(TCF)のための継続的な対策強化努力を認めながらも、1.カジノジャンケット(大口顧客誘致担当)の実体把握やリスク排除、2.すべての主要な海上/空港に対する国境措置の適用と通貨の虚偽宣言の摘発と没収措置、3.テロ資金供与事件の摘発や起訴強化を求めている。これらの要件クリアーがグレーリストからの除外に必要であり、AMLCは今年10月までにこの要件のクリアーを目指してきている。上記のアンドレス次官は、最近の海外向けオンラインギャンブル運営業者(POGO)の全面禁止措置もあって、3条件はクリアーされたと見ているようだ。

 なお、フィリピンは2004年まで、資金洗浄防止非協力国家と位置づけられ監視対象リストに据え置かれていたが、その後の努力により2005年2月にリストから除外された。しかし、2021年6月、約16年ぶりに監視国指定され、現在に至っている。
 
 FATFは資金洗浄への高まる懸念に応えて、1989年フランスの首都パリで開催されたG-7サミット(先進7カ国首脳会談)において設立された組織であり、OECD加盟国などで構成される。各国の資金洗浄やテロ資金供与に関する問題点を指摘、監視国・地域指定・公表等を行うと共に、改善策推進を要求してきている。