三井住友銀行、RCBCとの連携で比事業基盤を更に強化

RCBCの業界番付も急上昇、10月8日には共同セミナー開催

2024/10/09

 三井住友銀行とユーチェンコ財閥傘下の有力拡大商業銀行であるリサール商業銀行(RCBC、証券コード:RCB)は、10月8日、マニラ首都圏マカティ市のRCBCプラザにおいて共同セミナー「Economic Briefing」を開催した。この共同セミナーは昨年12月に続く2回目。

 今回のセミナーは2部制で、第1部では三井住友銀行アジア・大洋州トレジャリー部エコノミストの阿部良太氏が「2025年世界・アジア経済の見通し」、第2部ではRCBCのチーフエコノミストMichael Ricafort氏が「2025年フィリピン経済の見通し」、第3部では貿易産業省(DTI)傘下の投資促進機関であるフィリピン経済区庁(PEZA)のテレソ・パンガ長官の「フィリピンの成長機会」という講演を行った。それぞれわかりやすく明瞭かつ詳細な説明で有意義なセミナーとなった。

 三井住友銀行は、今年1月23日、PEZAとRCBCの間で、フィリピンへの海外直接投資促進等への協力に関する業務提携の覚書を締結した。三井住友銀行は、2015年にPEZAとの間で業務提携覚書を締結しているが、今回の覚書締結後、既存覚書を解消し、RCBCも含めたPEZAとの新たな覚書のもと、フィリピン投資セミナーの共同開催や、フィリピン進出を検討している企業へのサポート体制を一層充実していく。

 なお三井住友銀行は、2023年7月末にRCBCの普通株式15.01%の追加取得を完了した。この追加出資額は271億2,600万ペソ(約700億円)。この追加取得により、三井住友銀行のRCBC普通株式持分比率はそれまでの4.99%から20.00%となり、RCBCは三井住友フィナンシャルグループおよび三井住友銀行の持分法適用会社となった。これらの結果、RCBCの株主と保有比率は、ユーチェンコ財閥グループの持株会社パンマラヤン マネジメント&インベストメント33.9%、三井住友銀行20.0%、キャセイ ライフインシュアランス18.7%、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)4.5%となった。

 三井住友銀行は、中長期的な目線でアジアの成長を捕捉する戦略として、マルチフランチャイズ戦略に取り組んでおり、重要国の一つと位置付けるフィリピンにおいては、2021年6月の4.99%出資を機にRCBCとの提携を開始している。1960年設立のRCBCは日系企業とも数多くの提携実績のあるユーチェンコ財閥グループの一社であり、現地銀行のなかでも最大規模で展開するジャパンデスク事業に加え、デジタルバンキング・ESG(環境、社会、ガバナンス)等の分野において高い評価を得ている地場主要銀行である。

 この出資により、三井住友銀行のフィリピンの事業基盤は一段と強化されたといえる。一方、RCBCの財務基盤も強化されるとともに、業界における資産ランキングも大幅に上昇している。表1、表2のとおり、RCBCの2020年6月末の総資産は7,188億ペソで民間銀行8位であったが、2024年6月末には1兆2,609億ペソへと約70%増加、業界第5位へと急上昇、第4位も狙える状況にある。自己資本も844億ペソから1,521億ペソへと急増、対リスク資産自己資本比率(CAR)は13.07%から16.4%へと上昇している。

 三井住友銀行は、2015年9月1日、マニラ首都圏マカティ市にマニラ支店を開設し、営業を開始した。このマニラ支店開設は、2014年7月にフィリピン政府によって、外国銀行に対する参入規制が緩和されて以来、外国銀行として初の支店開設となった。1975年に駐在員事務所を設置し、現地での情報収集活動を行ってきたが、マニラ支店開設により、フィリピン国内で預金、資金、為替等の銀行サービスを提供することが可能となった。現在、顧客へのサービス体制を拡充し、現地における金融ニーズにきめ細かく対応している。

 表1.民間上位銀行の2024年上半期末の資産等の状況(単位:億ペソ)
行名 総資産 純資産 自己資本比率 預金残高 融資残高
BDOユニバンク 47,125 5,449 14.8% 37,373 30,272
メトロバンク 32,802 3,351 16.7% 24,297 16,253
BPI 31,100 4,065 15.0% 24,518 20,295
チャイナバンク 15,449 1,518 15.3% 12,833 7,972
RCBC 12,609 1,521 16.4% 9,599 6,672
PNB 12,563 1,990 19.4% 9,492 6,318
ユニオンバンク 11,352 1,865 16.8% 6,661 5,148
セキュリティバンク 9,481 1,382 14.8% 6,762 5,773
(出所:各銀行の事業報告書などより、注:自己資本比率は対リスク資産{CAR})

 表2.
民間上位銀行の2020年上半期末の資産等の状況(単位:億ペソ)
銀行名 総資産 純資産 自己資本比率 預金残高 融資残高
BDOユニバンク 33,177 3,675 13.82% 26,074 22,733
メトロバンク 23,213 3,317 19.98% 17,014 13,333
BPI 22,620 2,730 16.60% 17,623 14,344
PNB 10,825 1,543 15.86% 7,907 6,026
チャイナバンク 9,823 978 13.75% 7,727 5,804
ユニオンバンク 7,515 988 16.00% 5,104 3,516
セキュリティバンク 7,404 1,271 19.66% 5,113 4,496
RCBC 7,188 844 13.07% 4,994 4,803
(出所:各銀行の事業報告書などより、注:自己資本比率は対リスク資産{CAR})