比の資金洗浄監視対象国指定据え置き、ベトナム等と共にグレーリスト

2025年の解除を期待、北朝鮮、イラン、ミャンマーはブラックリスト:FATF

2024/10/28

 国際的な資金洗浄を防止するための金融活動作業部会(FATF=本部パリ)は、10月23日~25日、総会を開催した。この総会にはFATFのグローバル・ネットワーク(200以上の国・地域から構成)の代表団および国際機関のオブザーバーがマネーロンダリング、テロ資金供与、拡散資金供与も関する主要な問題について議論した。
 
 この総会において、フィリピンは、資金洗浄に関する強化モニタリング対象国・地域リスト(グレーリスト)に据え置かれることが決定した。フィリピンは、2021年6月、約16年ぶりに資金洗浄監視対象国リスト入りしたという経緯がある。フィリピン司法省などは今回グレーリストからの除外を期待していたが、結局除外には至らなかった。

 ただし、FATFはこのところのフィリピンのマネーロンダリング防止対策強化を評価、FATF要請のDNFBP(指定非金融業者・職業専門家)やカジノのジャンケット実体把握やリスク排除、MVTS(送金サービス)の新しい登録要件実施、テロ資金供与(TF)事件の特定、調査および起訴の拡大、大量破壊兵器拡散資金供与に対する金融制裁の枠組みの有効性強化などの具体的行動計画もほぼ完了しつつあると考えていると表明した。

 このような状況下でFATFは、2025年2月、フィリピンの対策進展を確認するための現地訪問を実施する予定である。現地訪問では、専門家グループがフィリピンを訪問、進展度を確認し、グレーリストから外すかどうかを判断するとのことである。

 なお、FATFの強化モニタリング対象国・地域は、資金洗浄、テロ資金供与及び拡散金融の対策体制における戦略上の欠陥に対処するためにFATFと活発に協働する。FATFがある国や地域を強化モニタリング対象に据えることは、その国・地域が、特定された戦略上の欠陥を合意した期間内に迅速に解決することにコミットし、強化モニタリング対象に服することを意味する。この強化モニタリング対象リストは対外的にグレーリストとも呼ばれる。

 今回の総会でのグレーリスト指定国・地域は、フィリピン、アルジェリア、アンゴラ、ブルガリア、ブルキナファソ、カメルーン、コートジボアール、クロアチア、コンゴ民主共和国、ハイチ、ケニア、レバノン、マリ、モナコ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、南スーダン、シリア、タンザニア、ベネズエラ、ベトナム、イエメンの24カ国。前回2024年6月時点のグレーリストにアルジェリア、アンゴラ、コートジボアール、レバノンが加えられ、セネガルが除外された。

 グレーリスト指定国より更なる厳しい監視対象である行動要請対象の高リスク国・地域(ブラックリスト)には、北朝鮮、イラン、ミャンマーが継続指定されている。ミャンマーは2022年10月からの継続となる。高リスク国・地域は、資金洗浄、テロ資金供与及び拡散金融の対策体制に重大な戦略上の欠陥を有するとされている。高リスクと特定された全ての国に関して、FATFは、強化された顧客管理を適用することを加盟国に要請し、かつ全ての国・地域に強く求める。
 
 フィリピンは2004年まで、資金洗浄防止非協力国家と位置づけられ監視対象リストに据え置かれていた。フィリピンは、このリスト指定解除を実現するため、FATFの意向を汲み、資金洗浄防止法強化などの努力を続けてきた。そして、2005年2月のFATF年次総会でリストから除外されたという経緯がある。したがって、上記のように、2021年6月の強化モニタリング対象国・地域指定(グレーリスト入り)は、約16年ぶりの監視国指定ということになった。それ以降、3年間以上グレーリスト指定が続いてきている。
 
 FATFは資金洗浄への高まる懸念に応えて、1989年フランスの首都パリで開催されたG-7サミット(先進7カ国首脳会談)において設立された組織であり、OECD加盟国などで構成される。各国の資金洗浄やテロ資金供与に関する問題点を指摘、監視国・地域指定・公表等を行うと共に、改善策推進を要求してきている。