ADBのフィリピン成長率予想、2025年6.0%、2026年6.1%に

ASEANでベトナムとカンボジアに次ぐ第3位、インフレは両年3%に

2025/04/10

 アジア開発銀行(ADB)は、4月9日、『アジア経済見通し(ADO)2025年4月版』を発表した。その中でのアジア・太平洋地域や各国の成長率予想は、米国政府が4月2日に新たな関税措置を発表する前に確定されたため、基準となる予想には、それ以前に導入されていた関税のみが反映されている(以下同様)。

 このようなベースでのアジア・太平洋地域の開発途上国のGDP成長率は、2024年実績の5.0%から、2025年4.9%、2026年4.7%へと減速と予想されている。東南アジアの成長率については、2024年実績の4.8%から、2025年、2026年ともに4.7%へ減速すると予想されている。そして、域内経済は底堅さを維持しているものの、米国の貿易・経済政策が想定を上回る規模や速度で変化していることが、先行きのリスクになると指摘されている。米国による関税の引き上げに加え、政策運営の不確実性の高まりや報復措置が、貿易、投資、および経済成長の下押し要因となる可能性がある。

 フィリピンのGDP成長率に関しては、下表のとおり、2024年実績5.7%(改訂値)に対し、2025年が6.0%、2026年が6.1%と予想されている。両年ともに、フィリピン政府の成長率目標6.0%~8.0%のほぼ下限ながら達成するとの予想である。東南アジアのなかでは、両年ともにベトナムとカンボジアに次ぐ3番目に高い成長率となる。

 フィリピンの総合インフレ率については、2024年実績の3.2%から、2025、2026年ともに3.0%へ減速と予想されている。世界的な食料およびエネルギー価格の低下などを背景に、両年ともに政府のインフレ目標2%~4%の中間値となり、インフレ目標達成と見られている。

 ADBの東南アジア等のGDP成長率・インフレ率予想(25年4月9日の発表数値)
 国・地域 実質GDP成長率(%)  総合インフレ率(%)
 24年実績 25年予 26年予  24年実績 25年予 26年予
アジア開発途上国  5.0 4.9 4.7 2.6 2.3 2.2
  東南アジア  4.8 4.7 4.7 3.0 3.0 2.8
     フィリピン  5.7 6.0 6.1  3.2 3.0 3.0
     インドネシア  5.0  5.0 5.1  2.3 2.0 2.0
     マレーシア  5.1 4.9 4.8 1.8 2.5 2.5
     シンガポール  4.4 2.6 2.4 2.4 2.0 1.7
     タイ  2.5 2.8 2.9 0.4 1.0 1.1
     ベトナム  7.1 6.6 6.5 3.6 4.0 4.2
      ブルネイ   4.2    2.5  2.0  -0.4  0.5  -0.2 
     カンボジア  6.0  6.1 6.2  0.8  3.7   2.4  
      ラオス   4.0   3.9  4.0   23.3 13.5  10.4 
      ミャンマー  -0.7 1.1 1.6  27.8  29.3  20.0 
    東ティモール  3.3 4.0   3.8   2.1  2.9  2.6 
(出所:アジア開発銀行資料より作成)

 フィリピンのGDP実質成長率の推移と目標(2018年基準、単位:%)
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25~28目標
伸び率  7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7.6 5.5 5.7 6.0~8.0
(出所:DBCC資料より作成、目標は2024年12月7日のDBCC設定数値)