比、知的所有権監視対象国から12年連続で除外

偽造医薬品供給源との指摘も:USTR報告書25年版

2025/04/30

 米国通商代表部(USTR)が、4月29日、知的所有権レポートである「特別301条報告書」最新版(2025年版)を発表した。

  USTRは毎年、特別301条報告書において、悪質な行為、ポリシー、または慣行などにより米国製品に最も悪影響を与えている、もしくは与える可能性を有する貿易相手国を「優先監視対象国」と指定している。また、知的所有権保護のための努力は行っているが、依然十分ではない貿易相手国を「普通監視国」として指定している。

 「特別301条報告書」2025年版において、「優先監視対象国」と指定されたのは、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、ベネズエラの8カ国である。

 「普通監視国」と指定されたのはアルジェリア、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、エクアドル、エジプト、グアテマラ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、ベトナムという18カ国である。

 フィリピンは2014年から12年連続で特別301条監視国リストから除外された。USTRは、フィリピンに関して、依然改善すべき課題が残されているが、「知的所有権保護のための規制や法整備が進展してきている」と評価するようになっている。今回の報告書では、フィリピン政府が講じた以下のような取り組みが評価された。
・貿易産業省(DTI)に新設された電子商取引局(e-Commerce Bureau)による、オンライン取引の規制強化と偽造品流通の抑制
・フィリピン知的財産局(IPOPHL)による国民向け啓発活動および司法機関の能力強化

 また、米国・フィリピン間では2024年6月に知的財産に関する技術会合が、7月には貿易・投資枠組協定(TIFA)に基づく会合が開催され、知的財産(IP)課題について協議が行われたと報告されている。

 一方で同報告書は、フィリピンが依然として「偽造医薬品の主要な供給源の一つ」であるとの懸念を表している。USTRが引用している経済協力開発機構(OECD)と欧州連合知的財産庁(EUIPO)の最新調査によれば、偽造医薬品の世界的な出所として、中国、インド、インドネシア、パキスタン、フィリピン、ベトナムが挙げられている。また、米国ブランドの医薬品は偽造の標的となりやすく、全世界で押収された偽造医薬品のうち38%が米国ブランドの模造品であると報告されている。

 なお、フィリピンは、1984年に初めて監視国指定された。そして、1994年から2013年まで20年間連続で監視国指定されていた。2005年までは優先監視対象国、2006年からは普通監視対象国となっていた。そして、2014年に21年ぶりに監視国リストから除外され、現在に至っている。