第1四半期の経常収支、赤字倍増の42億ドルと悪化

対GDP比3.7%(前年1.9%)、BOPは30億ドルの赤字転落

2025/06/16

 フィリピン中央銀行(BSP)613日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6(BPM6)に準拠した、2025年第1四半期(13)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報を発表した。

<貿易赤字拡大で経常収支悪化>
 2025年第1四半期の経常収支の赤字額は425,000万米ドル(GDP比率3.7%に相当)となり、前年同期の赤字207,000万米ドル(GDP比率1.9%に相当)から105%増加した。経常収支の悪化は、堅調な国内経済成長に伴う輸入拡大に対し、輸出の伸びが限定的だったことに起因する。特に、最近の米国による関税政策変更を含む世界的な貿易環境の不確実性が、輸出拡大の足かせとなった。これにより、物品貿易赤字が拡大した。また、サービス収支の黒字も縮小。輸送サービス収入の減少や、海外旅行におけるフィリピン居住者の支出増加などが影響した。

 それらの結果、国際総合収支(BOP)30億米ドルの赤字で、前年同期の23,800万ドルの黒字から悪化した。そのなかで、金融収支は直接投資およびその他投資の継続的な流入により、純流入額が拡大した。これには、マクロ経済の安定、投資環境の改善、ならびにフィリピンが金融活動作業部会(FATF)のグレーリストから除外されたことが追い風となった。金融収支の大幅な純流入が経常収支の赤字拡大を一部相殺した。

<総外貨準備高(GIR)
 20253月末時点の外貨準備高(GIR)1,067億米ドルで、前年同月末の1,041億米ドルを2.5%上回った。前期末(202412月末)1,063億米ドルからは0.4%の増加となった。輸入・一次所得の7.2カ月分、残存ベース短期対外負債の3.3倍に相当する水準である。

<為替相場>
 為替は2025年第1四半期の加重平均が1米ドル=57.97ペソで、前期(24年第4四半期)の加重平均1米ドル=58.15ペソから0.3%のペソ高、前年同期の1米ドル=55.96ペソからは3.5%のペソ安になった。

 国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、増減率表示はBSP方式による)
項目 第1四半期
24年 25年 増減率(%)
経常収支 -2,071 -4,248 -105.1
   対GNI比(%) -1.7 -3.3 -
   対GDP比(%) -1.9 -3.7 -
 貿易・サービス・第一次所得収支 -9,676 -11,986 -23.9
  貿易・サービス収支 -11,006 -13,509 -22.7
     対GNI比(%) -9.0 -10.4 -
     対GDP比(%) -10.1 -11.9 -
    物品貿易収支 -14,678 -16,841 -14.7
      対GNI比(%) -11.9 -12.9 -
      対GDP比(%) -13.4 -14.8 -
     輸出 14,492 14,666 1.2
     輸入 29,169 31,507 8.0
   サービス収支 3,672 3,331 -9.3
      輸出 12,444 12,255 -1.5
      輸入 8,772 8,924 1.7
   第一次所得収支 1,329 1,523 14.6
 第二次所得収支 7,606 7,739 1.7
資本移転等収支 17 23 35.9
 
金融収支(マイナス勘定) -4,647 -6,652 -43.2
 直接投資 -662 -1,849 -179.5
 証券投資 -974 -978 -0.4
 金融派生商品 -61 42 169.2
 その他投資 -2,950 -3,867 -31.1
 
誤差脱漏 -2,355 -5,385 -128.7
 
国際総合収支 238 -2,958 -1,345.2
  対GNI比(%) 0.2 -2.3 -
  対GNI比(%) 0.2 -2.6 -
 
参考:OFW等の個人送金額合計 9,151 9,397 2.7
 うち銀行経由分 8,219 8,444 2.7
(出所:BSP資料より作成、注:全て速報値)
注:金融収支のプラス(マイナス)残高は純流出(純流入)を意味している。