第1四半期の住宅価格上昇率、7.6%へ鈍化(前期9.8%)

戸建て類4.5%へ減速(前期9.9%)、コンドミニアム10.6%へ加速

2025/06/30

 フィリピン中央銀行(BSP)627日に発表した2025年第1四半期(13)の住宅不動産価格指数(RPPI)によると、全国の住宅価格は前年同期比で7.6%上昇した。上昇ペースはやや鈍化したものの、マニラ首都圏(NCR)の堅調な伸びが全体を押し上げた。

 地域別では、NCRが前年同期比13.9%、前期比9.2%の大幅上昇を記録し、全国の価格上昇を主導した。一方、NCR以外の地域(AONCR)では、前年同期比3.0%の上昇にとどまり、前期比では2.1%の下落となった。AONCR内では、ミンダナオ都市圏が同7.6%の上昇と最も高く、これにグレーター・マニラ地域外の3.8%が続いた。セブ都市圏は同1.7%の下落となっている。

 住宅タイプ別では、全国平均でコンドミニアム価格が前年同期比10.6%上昇、戸建て住宅類(アパート、タウンハウス、2戸連棟住宅等を含む)4.5%上昇した。戸建て住宅類の伸び鈍化については、NCRにおける取引件数の減少が要因とみられる。前期比では、コンドミニアムが9.9%上昇し、戸建て住宅類の2.9%下落を補う形となった。

 NCR内においては、コンドミニアム価格が前年同期比14.2%の上昇で、戸建て住宅類(11.2%)を上回った。前期比でもコンドミニアムは12.8%の上昇を示した一方、戸建て住宅類は0.9%の下落となった。これに対し地方では、戸建て住宅類が同2.9%上昇、コンドミニアムが同1.8%上昇と、逆の傾向が見られた。

 フィリピン住宅不動産価格指数の上昇率推移 (2019年=100)
年・時期  22年 23年 24年 25年
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
全国
前年同期比上昇率(%)
全住宅 9.1 9.6 13.9 12.9 10.1 10.5 7.3 3.2 7.4 7.9 7.6 9.8 7.6
コンドミニアム 10.6 10.1 19.2 16.3 7.3 7.8 6.5 -1.5 7.3 11.5 4.8 9.5 10.6
戸建て類 7.6 9.8 7.2 8.7 13.6 13.6 9.0 6.4 7.4 5.4 9.4 9.9 4.5
前期比上昇率(%)
全住宅 3.2 3.4 4.8 1.0 0.6 3.8 1.8 -2.9 4.7 4.3 1.5 -1.0 2.6
コンドミニアム 8.3 3.1 4.6 -0.4 -0.1 3.7 3.3 -7.9 8.8 7.7 -2.9 -3.7 9.9
戸建て類 -3.3 3.8 5.1 2.9 1.1 3.9 0.8 0.4 2.1 1.9 4.7 0.9 -2.9
マニラ首都圏(NCR)
前年同期比上昇率(%)
全住宅 10.4 10.1 18.5 17.1 8.0 8.9 5.0 -1.9 6.1 9.3 7.2 12.3 13.9
コンドミニアム 11.0 9.8 19.2 17.3 6.0 6.2 5.3 -4.8 6.6 13.7 5.3 11.9 14.2
戸建て類 8.7 15.3 14.5 16.1 16.6 19.6 5.8 4.5 4.3 -2.0 11.0 13.3 11.2
前期比上昇率(%)
全住宅 7.9 3.2 4.9 0.2 -0.5 4.1 1.1 -6.4 7.6 7.2 -0.8 -2.0 9.2
コンドミニアム 9.3 3.3 4.2 -0.3 -1.2 3.5 3.3 -9.9 10.5 10.5 -4.3 -4.2 12.8
戸建て類 0.9 2.9 9.0 2.7 1.3 5.5 -3.5 1.4 1.0 -0.9 9.2 3.5 -0.9
地方(AONCR)
前年同期比上昇率(%)
全住宅 8.1 9.9 8.7 8.1 12.3 12.2 9.7 7.4 8.7 7.2 8.1 8.0 3.0
コンドミニアム 10.2 13.6 20.6 12.3 11.9 13.8 10.3 10.0 10.3 5.5 4.0 3.1 1.8
戸建て類 7.2 8.6 5.5 6.9 12.8 12.1 10.0 6.9 8.3 7.5 9.0 9.1 2.9
前期比上昇率(%)
全住宅 -2.3 3.7 4.7 2.0 1.5 3.5 2.3 -0.1 2.7 2.1 3.2 -0.2 -2.1
コンドミニアム 4.2 2.5 6.3 -1.1 3.9 4.2 3.0 -1.3 4.2 -0.4 1.6 -2.2 2.9
戸建て類 -4.3 4.1 4.2 3.0 1.0 3.4 2.2 0.1 2.4 2.6 3.6 0.2 -3.4
(出所:BSP資料より作成、AONCR=マニラ首都圏を除いたすべての地域)

 地方における住宅不動産価格指数の上昇率推移 (2019年第1四半期=100)
地方 前年同期比増減率(%) 前期比増減率(%)
24年Q1 24年Q4 25年Q1 24年Q1 24年Q4 25年Q1
フィリピンの他地域 7.2 5.8 1.1 0.2 -0.9 -4.2
 GMA以外の地域 8.6 9.2 3.8 3.5 -1.0 -1.5
 セブ都市圏 15.9 6.2 -1.7 7.0 1.6 -1.0
 ミンダナオ都市圏 6.0 7.7 7.6 -1.3 5.9 -1.3
(出所:BSP資料より作成、GMA=グレーター・マニラ地域、マニラ首都圏とその周辺の主要都市リサール、ブラカン、ラグナ、カビテなどを含む広域都市圏、フィリピンの他地域=AONCRからGMA以外の地域、セブ都市圏、ミンダナオ都市圏を除いた地域を指す)

 【住宅ローン(RREL)の動向:全国で1.9%減少】
 2025年第1四半期における全国の住宅不動産融資(RREL)利用件数は、前年同期比1.9%減の8,888件となった。地域別では、NCR2.0%増の2,435件で全体の27.4%を占め、地方は3.3%減の6,453(72.6%₎だった。

 住宅タイプ別では、コンドミニアムへの融資件数が前年同期比2.6%増の3,229(シェア36.3%)であったのに対し、戸建住宅は4.4%減の5,659(63.7%)だった。

 地域別の融資件数シェアは、カラバルソン(シェア29.9%)NCR(27.4%)、中央ルソン(13.8%)、中央ビサヤ(9.6%)、西部ビサヤ(7.9%)、ダバオ(4.5%)北ミンダナオ(2.5%)の順となっている。

 全住宅タイプへの融資件数の変化
地域 年間増減率(%) 前期比増減率(%)
24年Q1 24年Q4 25年Q1 24年Q1 24年Q4 25年Q1
全国 5.0 -3.8 -1.9 -23.2 29.7 -21.7
マニラ首都圏(NCR) -3.6 1.0 2.0 -34.1 38.1 -33.4
地方(AONCR) 8.5 -5.9 -3.3 -18.4 26.0 -16.2
 フィリピンの他地域 11.4 -9.3 -2.2 -14.8 11.1 -8.1
 GMA以外の地域 2.8 -9.1 -11.1 -19.5 32.8 -21.3
 セブ都市圏 2.3 28.3 50.1 -11.2 12.1 3.9
 ミンダナオ都市圏 66.2 -1.5 0.8 -25.4 43.7 -23.6
(出所:BSP資料より作成)

 【住宅の中央値:全国で337万ペソ】
 住宅の全国中央値は3374,073ペソであった。住宅タイプ別では、コンドミニアムの平均価格が4345,453ペソ、戸建住宅は2946,127ペソとなった。NCR内では、戸建住宅の中央値が7717,500ペソ、コンドミニアムが4805,613ペソと、全国平均を大きく上回っている。

 【中央銀行、住宅不動産価格指数(RPPI)を刷新】
 フィリピン中央銀行(BSP)は、2025年第1四半期から新たな住宅不動産価格指数(RPPI)の公表を開始した。国際的なベストプラクティスに基づき導入された同指数は、従来の単純平均に代わり、ヘドニック回帰分析を用いて、物件の立地、面積、種類といった特性を加味した価格動向を反映する。

 また、新たなRPPIは、新築、中古、差し押さえ物件をすべて含み、評価額ではなく実際の取得価格に基づいて算出されている。これにより、パンデミックのような外的ショックにも左右されにくい、より安定的かつ信頼性の高い指数となっている。

 BSPはすでに2019年第1四半期から2024年第4四半期までの過去データにもこの手法を適用し、指数の精度を検証済みである。