阪急電鉄とJICA、LRT1号線の省エネ化を支援

住友商事とも協働、日本の技術とノウハウ注入へ

2025/07/02

 国際協力機構(JICA)および阪急電鉄は、71日、「マニラ首都圏軽量鉄道1号線(LRT1号線)の運営・保守事業を担う民間事業者ライトレール マニラ コーポレーション(LRMC、所在地:マニラ首都圏パサイ市)に対し、LRT1号線の省エネルギー化を推進するための技術協力を625日から開始した」と発表した。

 マニラ首都圏は、東京23区とほぼ同じ面積に約1.4倍の人口を擁する都市であるが、JR・私鉄・地下鉄等の約80路線が運行する東京に対して、マニラ首都圏では軌道系交通の運行路線が3本に限られている。市内の移動は道路交通に大きく依存しており、恒常的に渋滞が発生していることに加えて、大気汚染の深刻化やCO2排出量増加と気候変動への悪影響が懸念されている。また、試算によれば、移動時間コストに係る経済的損失は2020年時点で1日あたり38億ペソ(90億円)にも達するとされている。このため、JICALRT1号線を含むマニラ首都圏の軌道系交通網整備のため、開発調査、円借款、技術協力、海外投融資等を通じた支援を行っている。

 阪急電鉄は、20254月から同社の全路線でCO2排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル運行」を開始するなど、脱炭素社会の実現に向けたさまざまな取組を推し進めている。また同社は、20245月にLRMCに出資し、LRT1号線の運営・保守事業にJICAと協同で取り組んでいくことに合意したことに加えて、20246月にはLRMCと覚書を締結し、LRT1号線の運営・保守に関する技術支援を実施している。

 今般開始する新たな技術協力は、より効率的な運行の実現及び二酸化炭素排出量削減を重視するLRMCの、JICAに対するLRT1号線の省エネ促進に係る支援要請に応えるものである。JICAは、LRT1号線の省エネルギー化を推進するため、日本国内で鉄道の省エネルギー化に取り組んできた実績を持つ阪急電鉄に委託し、同線の電力消費の現状を正確に把握・分析したうえで、省エネルギー施策の導入実現性や効果を検証するとともに、ロードマップの作成を支援する。

 今回の技術協力を通じて、JICAおよび阪急電鉄は、LRT1号線の省エネルギー化を推進することにより、マニラ首都圏における公共交通分野での環境負荷低減および持続可能な交通インフラの構築に貢献して行く。

 なお、20244月、住友商事が間接保有するLRMCの株式の一部を、阪急電鉄とJICAに譲渡する契約を締結している。同年6月には、阪急電鉄が、住友商事、LRMCとの間で、LRT1号線事業への技術支援を行うための覚書が締結された。住友商事は、20205月、LRMCの株式約19.2パーセントを間接的に取得し、出資参画した。それ以降、住友商事はLRMCの安定的な経営に資する取り組みや、スペアパーツ調達支援などを通じ、LRMCの価値向上に取り組んできた。そして、新たなとパートナーとして参画した阪急電鉄とJICAとの協働により、更なる事業の価値向上に貢献していくと表明している。