政府負債対GDP比率、上半期末63.1%に悪化

約20年ぶり高水準、28年56.3%との目標に黄信号

2025/08/11

 フィリピン政府の負債残高が対国内総生産(GDP)比で60%を超える水準に達し、財政健全化に向けた道筋が不透明になっている。エコノミストらは、成長率の鈍化や国際環境の不確実性が重なり、短期的な回復は困難との見方を示している。

 財務省によると、2025年第2四半期末(6月末)の政府負債対GDP比率は63.1%と、国際通貨基金(IMF)などが新興国の持続可能な水準とみなす60%の上限基準を超過、2025年第1四半期末(3月末)62.0%からさらに悪化した。2005年以来の高水準であり、マルコス政権が掲げる2025年末時点での60.4%2028年の56.3%という目標達成に黄信号が灯った。

 20256月末時点の政府負債残高が、前年同月末比11.5%増の172,673億ペソに達し過去最多を更新した一方、GDP成長率が政府目標を下回るペースで推移していることで、政府負債対GDP比率は悪化している。ちなみに、2025年上半期のGDP成長率は5.4%で前年同期の6.2%からは大幅減速、下方修正された政府の2025GDP成長率目標である5.5%6.5%の下限を下回るペースとなっている。

 経済成長と支出の効率化が進めば回復の可能性は残るとの見方もある。エコノミストのジョナサン・ラベラス氏は「年5.56%の成長が維持されれば、1824カ月で60%に近づける。インフラや教育、デジタル分野など乗数効果の高い分野への投資が必要だ」と述べている。元下院歳入委員長のホセ・サルセダ氏は、政府負債の約70%が国内調達で為替リスクに耐性があると評価しつつ、「今後のショックに対応できる経済基盤と税収力の拡充が不可欠」とコメントしている。
 
 世界銀行は7月の経済見通しで、フィリピンの債務比率が2025年に60.2%2026年に59.7%と徐々に改善し、2028年には59.1%に低下するとの予測を示した。金利の低下と財政改革が債務返済負担を軽減するとの見通しだが、政府には安定的な歳入確保と的確な支出戦略が求められている。

 フィリピン政府の負債残高などの推移(単位:億ペソ)
項目 20年末 21年末 22年末 23年末 24年末 25年3月末 25年6月末
政府負債残高 97,950 117,285 134,189 146,163 160,513 166,840 172,673
  対GDP比 54.6% 60.4% 60.9% 60.1% 60.7% 62.0% 63.1%
  対内負債残高 66,947 81,704 92,084 100,179 109,304 113,795 119,504
  対外負債残高 31,003 35,581 42,105 45,983 51,209 53,045 53,169
保証債務残高 4,583 4,239 3,991 3,494 3,467 3,399 3,451
実質負債残高 102,534 121,525 138,179 149,657 163,980 170,239 176,124
(出所:比財務省資料より作成、6月末の為替レート:1米ドル=56.378ペソ)