IPS、ソフトバンクや米メタ等と国際海底ケーブル建設に参画

日本・フィリピン・シンガポール結ぶ「キャンドル」、NECシステム供給

2025/09/23

 株式会社アイ・ピー・エス(IPS、東証プライム:4390)922日、日本、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールを結ぶ新たな国際海底ケーブル「キャンドル・サブマリン・ケーブル・システム(キャンドル)」の共同建設に参画すると発表した。ソフトバンク、米国のメタ・プラットフォームズ、マレーシアのTMテクノロジー・サービス、インドネシアのエックスエルスマート・テレコムと共同で進め、日本電気(NEC)がシステムを供給する。

 「キャンドル」は総延長約8,000km24ファイバーペア(FP)構成の大容量ケーブルで、2028年の運用開始を予定。生成AI5Gの普及で急増するデータ通信需要に対応する狙い。米国メタは「キャンドルはアジアのデジタルインフラ強化に大きく寄与する」と述べた。

 今回の「キャンドル」プロジェクトにおけるIPSの主要な役割の一つは、ルソン島東岸アウロラ州バレルでの陸揚局建設である。このアジア屈指の先進的な陸揚局は、「キャンドル」のアジア側エントリーポイントとなる。また、IPS等のフィリピン国内改定ケーブル網(PDSCN)とも直結し、フィリピンを東南アジアの通信ハブへと発展させる戦略拠点となる。IPSの宮下 幸治社長は「フィリピン東海岸での陸揚げは、当社にとって極めて重要。東南アジアの接続拠点づくりを推進する」と強調した。

 既にIPSの建設費用は13,100万米ドル(190億円)と発表されている。この建設費用は、自己資金やみずほ銀行をアレンジャーとするシンジケート団からの借入(上限120億円)、顧客からの前受金(IRU契約)で調達する。業績への影響は精査中だが、「中長期的に企業価値を高める」と見込んでいる。

 アジア域内には既に「ジュピター」や「ADC」などの国際ケーブルが存在するが、それらは主に日本を起点とする幹線の役割を担っている。これに対し「キャンドル」は、24ファイバーペアという最新規格を採用し、容量と冗長性で一歩先を行くシステムである。特にフィリピンを経由することで、1.東南アジア全域のデジタル流通経路の多様化、2.災害や障害時のリスク分散(冗長ルート確保)3.フィリピンの経済的プレゼンス向上といった効果が期待される。

 アジア太平洋地域のインターネット利用人口は拡大を続け、5億人規模の市場が安定した通信インフラを求めている。IPSにとって、バレル陸揚局は単なるインフラ投資ではなく、東南アジアのデジタルハブ戦略の要衝を握る試みだ。今回のプロジェクトは、日本企業(IPS、ソフトバンク、NEC)と、米国・マレーシア・インドネシアの通信事業者が連携する多国籍プロジェクトであり、地域のデジタル経済を大きく底上げすることになりそうだ。