日比首脳会談、物品役務相互提供協定実質合意

円滑化協定はすでに実績、国交正常化70周年へ協力深化

2025/10/26

 ASEAN関連首脳会議に出席中の高市内閣総理大臣は、1026日午後、マレーシア・クアラルンプールでフィリピンのマルコス大統領と会談し、両国の安全保障・経済・エネルギー分野における連携強化について協議した。会談は約20分間行われた。

 冒頭、高市総理は「就任後早期に会談できうれしい」と述べ、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け、戦略的パートナーであるフィリピンとの関係を一層強化していく意向を表明。マルコス大統領は、総理就任への祝意を伝えるとともに、2026年の国交正常化70周年を機に両国関係をさらに深めたいと応じた。

 ・安全保障協力:ACSA実質合意、RAA初適用を歓迎
 両首脳は、日比間の「物品役務相互提供協定(ACSA)」が実質合意に至ったことを歓迎。さらに、9月に発効した「部隊間協力円滑化協定(RAA)」が、今月の共同訓練およびセブ州沖地震での支援物資輸送に初めて適用されたことを評価した。両者は、政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた協力の進展を踏まえ、地域の平和と安定に資する安全保障協力の基盤強化に引き続き取り組むことで一致した。

 ・経済・食料安全保障:インフラ・農業分野で支援継続
 経済分野では、高市総理が「日本の強みを活かし、フィリピンの経済およびインフラの強靱化を後押ししたい」と表明。特にコメの収穫後処理機材の整備を通じ、フィリピンの食料安全保障向上に貢献する考えを示した。これに対し、マルコス大統領は日本のODA支援に謝意を示し、「ODAのみならず幅広い分野で協力をさらに拡大したい」と応じた。

 ・エネルギー協力:AZEC合意を踏まえ原子力民生利用を推進
 高市総理は、10月に開催された「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」閣僚会合において、日比両国が包括的エネルギー協力に関する覚書(MOC)を締結したことに言及。民生用原子力協力の推進に加え、来年開催予定のAZEC成功に向け連携を強化する方針を伝えた。

 ・地域・国際情勢:南シナ海から北朝鮮・ミャンマーまで緊密連携
 両首脳は、2026年が国交正常化70周年にあたるとともに、フィリピンがASEAN議長国を務める節目の年となることを確認。そのうえで、南シナ海情勢、北朝鮮の核・ミサイルおよび拉致問題、ミャンマー危機、カンボジア・タイ国境情勢など、国際社会の主要課題への対応において、日比両国が引き続き緊密に連携していくことで一致した。