墓地開発企業HVN、4日間で時価総額約1兆ペソ減少

時価総額最大銘柄から急転落、速報での巨額の評価益激減

2025/11/19

 元上院議員のマヌエル・ビリャール氏傘下の墓地などの不動産開発企業であるゴールデンMVホールディングス(証券コード:HVN、ビリャールランド ホールディングスへと社名変更したがPSEは旧名表示継続)の株価が急落、時価総額も僅か4営業日で約1兆ペソも減少した。

 PSEは、HVN2024年の年次報告書、2025年の各四半期事業報告書を提出しないため、HVN株式の売買を今年516日から停止してきた。515日時点の株価は12,296ペソ。この12,296ペソをベースにした時価総額は14,789億ペソ、国内の上場企業としては最大であった(マニュライフなど海外企業を含めると第3)

 最近、HVN2024年の年次報告書、2025年第1四半期と第2四半期の事業報告書を提出したことなどから、1113日にHHVNの株式売買を再開した。売買再開後の4日間で株価は急落を続け、1118日の終値は552.50ペソ、売買停止直前の515日の2,296ペソから約76%急落した。時価総額も14,789億ペソから4日間で9707億ペソ減の5,082億ペソへと急減した。

 HVNは今年331日、2024年の純利益が前年の146,000万ペソから9,9972,000万ペソに急増したとの速報を発表した。利益急増の要因は、不動産投資の公正価値評価益が前年の5,900万ペソから13,300億ペソに拡大したためと表明した。一方、収入は不動産販売の減少で25%減の358,000万ペソ、うち住宅販売は26%減の331,000万ペソにとどまったと発表している。すなわち、収入が40億ペソ未満、純利益が約1兆ペソという普通では見られない決算速報であった。

 しかし、1112日に提出された2024年年次報告書においては、13,300億ペソという評価益は大幅に減額され、純利益はほぼ横ばいの142,307万ペソにとどまり、決算速報の9,997億ペソとはほど遠いものであった。決算速報において13,300億ペソの評価益計上を認定した会計監査人は、そのライセンスをSECによって取り消されるに至った。

 このような経緯がHVNの最近の株価急落の主要因の一つであるが、昨年までも株価は異常ともいえる急騰ぶりを見せてきた。

 HVNの事業の中心は共同墓地、納骨堂、追悼礼拝堂などの開発などであり、いわゆる死後ケア企業と称されている。誰でも死ぬことになるのだから有望産業ではあるが、売上高が40億ペソにも満たず、PSE株価指数採用銘柄でもないHVNが国内時価総額最大となったのは違和感がある。

 HVNは、2016629日にPSEメインボードに上場された。当時の社名はゴールデンヘブン メモリアルパーク、その後一般不動産事業も手掛けるようになったことでゴールデン ブリアへと変更、20211月に現社名へと再変更された。

 HEVNの新規上場に際しての新規公募(IPO)株式数は7,4117,647株で、1株当たりIPO価格は10.50ペソ、IPO総額は約77,824万ペソという小型案件であった。上場直前の2015年の収入は69,280万ペソ、純利益は15,110万ペソという小型企業でもあった。しかし、墓地需要は旺盛であり株価は仕手的な動きも加わり急騰を続け、遂には、国内上場企業として最大の時価総額銘柄となった。

 そして、ビリャール氏をフィリピン最富豪へと押し上げる原動力となってきた。米国フォーブス誌による2025年「世界長者番付」において、ビリャール氏は純資産172億米ドル(1兆ペソ)で世界ランク117位、フィリピンでは第1位であった。ビリャール氏は、SM財閥創始者のヘンリー・シー氏が死去した2019年から、個人ベースではフィリピン第1位を維持している。