在比日系企業の黒字比率77.5%、ASEANで最高
増益企業比率51%、昇給率5.4%:16年のジェトロ調査
2016/12/27
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、2016年10~11月(中国のみ9月)、北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施、12月21日にその結果を「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」として発表した。有効回答は4,642社(有効回答率42.3%)であった。そのうち、フィリピンでの回答企業数は103社。調査結果のポイント・要旨、及びフィリピン進出日系企業動向は以下のとおり。
1. 2016年は42.9%の企業が増益、フィリピンでは51%が増益
営業利益は、16年に続き17年も4割以上の企業が「改善」を見込んでいる。17年について「悪化」するとした企業は11.1%と、16年見込み(24.1%)から13ポイント低下した。
フィリピンでは2016年営業利益については、51%の企業が改善、26.5%が横這い、22.6%が悪化と見込んでいる。2017年については、45.1%が改善、39.2%が横這い、15.7%が悪化と見込んでいる。
17年の景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)は36ポイントとなり、16年見込みと比べ17.3ポイント上昇。改善の理由としては「現地市場での売上増加」が最も多く、「生産効率の改善」、「輸出拡大による売上増加」が続いた。国・地域別に見ると、ラオス以外は軒並み改善し、特にミャンマー、カンボジア、バングラデシュ、インド、ベトナムなどの新興国では、DI値が50ポイントを上回るなど景況感の改善が顕著であった。フィリピンの2017年DI値は29.4ポイント。
2. 事業拡大意向比率52.2%、フィリピンでは54.4%
今後1~2年の事業展開の方向性についてみると、全体では「拡大」とする企業の割合は52.2%となり、15年(51.2%)から1.0ポイント上昇した。中国は、「拡大」が3年ぶりに上昇(2.0ポイント)し40.1%、「縮小」は3.5ポイント低下し5.3%となった。東南アジアも「拡大」が1.2ポイント上昇の55.4%となり、回復の兆しが感じられる。「拡大」の割合を東南アジアと中国で比較すると、12年に中国が急落し、以後東南アジアが中国を上回る状態が続き、16年にその差は15.3ポイントとなった。なお、事業拡大意欲が相対的に高いのは、ミャンマー(79.7%)、カンボジア(72.5%)、パキスタン(71.0%)、インド (70.7%)などである。
フィリピンでは、「拡大」と回答した企業の割合は54.4%、「現状維持」が44.7%、「縮小」が1.0%であった。
3. 黒字企業比率62.8%、フィリピンでは77.5%でASEAN最高、全体でも2位に
2016年の営業利益(見込み)を「黒字」とした企業の割合は62.8%で、15年調査(62.2%)から0.6ポイント上昇した。一方、「赤字」とした企業の割合は21.8%となり、15年調査(22.8%)から1.0ポイント低下した。国・地域別では、韓国(81.0%)、フィリピン(77.5%)で黒字企業の割合が高く、台湾、ニュージーランド、オーストラリアがこれに続く。他方、業歴が浅い企業の多いミャンマー(25.7%)、カンボジア(30.3%)、バングラデシュ(35.2%)などでは、黒字企業の割合は4割未満であった。
フィリピンの黒字比率77.5%はASEANで最高、全体でも韓国に次ぐ第2位となっている。大企業(62社)に限ると83.9%が黒字で、全体のトップとなっている。
4.最大の問題点「賃金上昇」が65.3%で1位、フィリピンでは44.7%で4位
経営上の問題点では、「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が全体では最も多かった(65.3%)。国・地域別にみると、インドネシア(82.2%)が中国(77.8%)を抜いて首位となった。以下、ベトナム(75.5%)、ミャンマー(75.3%)が続いている。16年の昇給率(前年度比、全業種平均)はパキスタン、ミャンマー、インドネシア、インドの4カ国で、10%台を記録。中国では13年以降、昇給率が1桁台で推移しており、17年は5.7%に落ち着く見込み。昇給率は多くの国・地域で近年の実績を下回る見込み。
フィリピンの昇給率は2016年が5.4%、2017年5.0%と比較的緩やかな伸びにとどまっている。したがって、「賃金上昇」を経営上の問題点として上げる比率は44.7%で項目別第4位にとどまっている。ちなみに、第1位は「原材料・部品の現地調達の難しさ」(62.1%)、第2位は「従業員の質」(57.3%)、第3位は「品質管理の難しさ」(53.5%)である。
5. 現地調達率46.5%、フィリピンでは31.6%
材料費が製造原価に占める割合は約6割となった。その低減に向け「現地調達率を引き上げる」方針を示した企業の割合は、全体の72.0%に上る。現地調達率は全体で46.5%。国・地域別では、中国が67.8%と最も高く(2010年は58.3%)、特に輸送機械器具は72.3%に達している。経年変化をみると、中国、タイ、インド、ベトナム、フィリピンで現地調達率が2010年比で上昇し、特にベトナムの伸びが顕著であった。なお、東南アジア主要国では、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンにおいて中国からの調達率が上昇するとともに、インドネシア、マレーシア以外は日本からの調達比率が低下した。
フィリピンでの現地調達率は31.6%(2010年27.2%)、日本からの調達比率が39.0%(同50.0%)、中国からが8.7%(同4.4%)、ASEAN諸国からが8.1%(同13.2%)などとなっている。
6. TPP協定が発効した場合の経営への影響について
太平洋パートナーシップ(TPP)締結国でのTPP協定が発効した場合の経営への影響については、「ある」が22.9%、「ない」が22.0%とほぼ拮抗。半数以上が「分からない」とした。ベトナムとマレーシアでは「影響あり」の比率が高く、シンガポールおよびオセアニアでは「影響なし」の比率が高かった。全対象国・地域で、業種別に見ると、「影響あり」とするのは、「食料品」「繊維」「運輸業」で、「影響なし」とするのは、「精密機械器具」「輸送機械器具」「電気機械器具」「通信・ソフトウェア業」。影響の有無双方とも高かったのは「金融・保険業」だった。輸出、販売、生産面でのプラスの影響は、締結国で期待が大きく、マイナスの影響は中国、台湾、タイなどの非締結国・地域で指摘が多かった。
非締結国であるフィリピンでは、 「影響あり」が11.9%、「ない」が26.7%、「分からない」が61.4%であった。
以上の様に、フィリピン進出日系企業は、好景気、豊富な労働力や比較的緩やかな賃金上昇率等を背景に、業績が堅調に推移、黒字比率はASEANトップとなっている。一方、最大の問題点として、材料・部品の現地調達の難しさが挙げられており、そのことが現地調達率の低さにつながっている(16年12月21日の日本貿易振興機構ニュースリリースより)。
1. 2016年は42.9%の企業が増益、フィリピンでは51%が増益
営業利益は、16年に続き17年も4割以上の企業が「改善」を見込んでいる。17年について「悪化」するとした企業は11.1%と、16年見込み(24.1%)から13ポイント低下した。
フィリピンでは2016年営業利益については、51%の企業が改善、26.5%が横這い、22.6%が悪化と見込んでいる。2017年については、45.1%が改善、39.2%が横這い、15.7%が悪化と見込んでいる。
17年の景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)は36ポイントとなり、16年見込みと比べ17.3ポイント上昇。改善の理由としては「現地市場での売上増加」が最も多く、「生産効率の改善」、「輸出拡大による売上増加」が続いた。国・地域別に見ると、ラオス以外は軒並み改善し、特にミャンマー、カンボジア、バングラデシュ、インド、ベトナムなどの新興国では、DI値が50ポイントを上回るなど景況感の改善が顕著であった。フィリピンの2017年DI値は29.4ポイント。
2. 事業拡大意向比率52.2%、フィリピンでは54.4%
今後1~2年の事業展開の方向性についてみると、全体では「拡大」とする企業の割合は52.2%となり、15年(51.2%)から1.0ポイント上昇した。中国は、「拡大」が3年ぶりに上昇(2.0ポイント)し40.1%、「縮小」は3.5ポイント低下し5.3%となった。東南アジアも「拡大」が1.2ポイント上昇の55.4%となり、回復の兆しが感じられる。「拡大」の割合を東南アジアと中国で比較すると、12年に中国が急落し、以後東南アジアが中国を上回る状態が続き、16年にその差は15.3ポイントとなった。なお、事業拡大意欲が相対的に高いのは、ミャンマー(79.7%)、カンボジア(72.5%)、パキスタン(71.0%)、インド (70.7%)などである。
フィリピンでは、「拡大」と回答した企業の割合は54.4%、「現状維持」が44.7%、「縮小」が1.0%であった。
3. 黒字企業比率62.8%、フィリピンでは77.5%でASEAN最高、全体でも2位に
2016年の営業利益(見込み)を「黒字」とした企業の割合は62.8%で、15年調査(62.2%)から0.6ポイント上昇した。一方、「赤字」とした企業の割合は21.8%となり、15年調査(22.8%)から1.0ポイント低下した。国・地域別では、韓国(81.0%)、フィリピン(77.5%)で黒字企業の割合が高く、台湾、ニュージーランド、オーストラリアがこれに続く。他方、業歴が浅い企業の多いミャンマー(25.7%)、カンボジア(30.3%)、バングラデシュ(35.2%)などでは、黒字企業の割合は4割未満であった。
フィリピンの黒字比率77.5%はASEANで最高、全体でも韓国に次ぐ第2位となっている。大企業(62社)に限ると83.9%が黒字で、全体のトップとなっている。
4.最大の問題点「賃金上昇」が65.3%で1位、フィリピンでは44.7%で4位
経営上の問題点では、「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が全体では最も多かった(65.3%)。国・地域別にみると、インドネシア(82.2%)が中国(77.8%)を抜いて首位となった。以下、ベトナム(75.5%)、ミャンマー(75.3%)が続いている。16年の昇給率(前年度比、全業種平均)はパキスタン、ミャンマー、インドネシア、インドの4カ国で、10%台を記録。中国では13年以降、昇給率が1桁台で推移しており、17年は5.7%に落ち着く見込み。昇給率は多くの国・地域で近年の実績を下回る見込み。
フィリピンの昇給率は2016年が5.4%、2017年5.0%と比較的緩やかな伸びにとどまっている。したがって、「賃金上昇」を経営上の問題点として上げる比率は44.7%で項目別第4位にとどまっている。ちなみに、第1位は「原材料・部品の現地調達の難しさ」(62.1%)、第2位は「従業員の質」(57.3%)、第3位は「品質管理の難しさ」(53.5%)である。
5. 現地調達率46.5%、フィリピンでは31.6%
材料費が製造原価に占める割合は約6割となった。その低減に向け「現地調達率を引き上げる」方針を示した企業の割合は、全体の72.0%に上る。現地調達率は全体で46.5%。国・地域別では、中国が67.8%と最も高く(2010年は58.3%)、特に輸送機械器具は72.3%に達している。経年変化をみると、中国、タイ、インド、ベトナム、フィリピンで現地調達率が2010年比で上昇し、特にベトナムの伸びが顕著であった。なお、東南アジア主要国では、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンにおいて中国からの調達率が上昇するとともに、インドネシア、マレーシア以外は日本からの調達比率が低下した。
フィリピンでの現地調達率は31.6%(2010年27.2%)、日本からの調達比率が39.0%(同50.0%)、中国からが8.7%(同4.4%)、ASEAN諸国からが8.1%(同13.2%)などとなっている。
6. TPP協定が発効した場合の経営への影響について
太平洋パートナーシップ(TPP)締結国でのTPP協定が発効した場合の経営への影響については、「ある」が22.9%、「ない」が22.0%とほぼ拮抗。半数以上が「分からない」とした。ベトナムとマレーシアでは「影響あり」の比率が高く、シンガポールおよびオセアニアでは「影響なし」の比率が高かった。全対象国・地域で、業種別に見ると、「影響あり」とするのは、「食料品」「繊維」「運輸業」で、「影響なし」とするのは、「精密機械器具」「輸送機械器具」「電気機械器具」「通信・ソフトウェア業」。影響の有無双方とも高かったのは「金融・保険業」だった。輸出、販売、生産面でのプラスの影響は、締結国で期待が大きく、マイナスの影響は中国、台湾、タイなどの非締結国・地域で指摘が多かった。
非締結国であるフィリピンでは、 「影響あり」が11.9%、「ない」が26.7%、「分からない」が61.4%であった。
以上の様に、フィリピン進出日系企業は、好景気、豊富な労働力や比較的緩やかな賃金上昇率等を背景に、業績が堅調に推移、黒字比率はASEANトップとなっている。一方、最大の問題点として、材料・部品の現地調達の難しさが挙げられており、そのことが現地調達率の低さにつながっている(16年12月21日の日本貿易振興機構ニュースリリースより)。