2016年の株価1.6%下落、最高値接近後に急失速
資源株13.7%上昇、金融・持株会社・不動産も上昇
外人8月以降5百億ペソ売越し、年間で22億ペソ買越し

2017/01/03

 フィリピンの代表的株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)は、2016年年間で1.60%下落した。2015年の3.85%下落に続く、2年連続の小幅安となった。2014年まで6年連続で上昇、この間の上昇率が286%(約3倍)という大相場の後の小幅調整と言えなくもない。ただ、2016年は後半の反落ピッチが急であったので、弱い年であったという感じを与えがちであるが年間では僅かの下落にとどまった。

 2016年は、ドゥテルテ新大統領誕生が確定した5月央から7月までは熱狂的な新政権歓迎相場となった。7月22日には終値が8,102.30ポイントへと上昇、2015年4月10日に記録した史上最高値に急接近した。その後は、熱狂相場の反動や米国利上げ観測台頭もあって、PSEiは8月以降調整を続けた。8月以降、外人投資家がドゥテルテ大統領の特に欧米に対する扇情的な発言や強硬的との印象を与える政権運営スタイルや手法を懸念し持高を減らし始めた。そして、11月は、米国トランプ次期政権の政策に関する思惑などを背景に外人売りが本格化したことで株価が急落、月間で8.42%という大幅下落となった。

 2016年年間の大分類セクター別指数動向は、鉱業・石油株(資源株)が13.72%上昇、金融株が6.76%上昇、持株会社(ホールディング・カンパニー)株が5.92%上昇、不動産株が5.17%上昇となった。一方、工業株は3.45%の下落、サービス株が14.86%の下落となっている。鉱業・石油株は、原油価格や金属市況の底打ち感や前年の大幅下落(34%下落)の反動により、二桁の上昇となった。一方、サービス株に関しては、主力のPLDTの業績悪化にともなう株価下落などが響いた。

 

 フィリピン証券取引所指数の動き(年末値と月末価、16年は11月29日終値)
時期 年末・月末値 上昇率
2006年 2,982.54ポイント 42.29%
2007年 3,621.60ポイント 21.43%
2008年 1,872.85ポイント -48.29%
2009年 3,052.68ポイント 63.00%
2010年 4,201.14ポイント 37.62%
2011年 4,371.96ポイント 4.07%
2012年 5,812.73ポイント 32.95%
2013年 5,889.83ポイント 1.33%
2014年 7,230.57ポイント 22.76%
2015年 6,952.08ポイント -3.85%
2016年 6,840.64ポイント -1.60%
 
2016年1月末 6,687.62ポイント -3.80%
2月末 6,671.04ポイント -0.25%
3月末 7,262.30ポイント 8.86%
4月末 7,159.29ポイント -1.42%
5月末 7,401.60ポイント 3.38%
6月末 7,796.25ポイント 5.33%
7月末 7,963.11ポイント 2.14%
8月末 7,787.37ポイント -2.21%
9月末 7,629.73ポイント -2.02%
10月末 7,404.80ポイント -2.94%
11月末 6,781.20ポイント -8.42%
12月末 6,840.64ポイント 0.88%
 
12カ月間 - -1.60%
(出所:フィリピン証券取引所やPDS資料より作成)


 フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率
項目 13年の上昇率 14年の上昇率 15年の上昇率 16年の上昇率 16年末終値
フィリピン証券取引所指数 1.33% 22.76% -3.85% -1.60% 6,840.64
全株指数 -2.29% 17.99% -6.43% 4.15% 4,156.07
  金融株指数 -6.42% 18.78% -8.58% 6.76% 1,655.54
  工業株指数 2.11% 37.89% -7.94% -3.45% 10,650.20
  持株会社株指数 5.41% 16.03% 4.78% 5.92% 6,992.09
  不動産株指数 -4.30% 27.42% 3.75% 5.17% 3,066.46
  サービス株指数 8.20% 13.94% -28.03% -14.86% 1,302.86
  鉱業・石油株指数 -38.59% 32.70% -34.07% 13.72% 11,857.76
 (出所:フィリピン証券取引所資料より作成) 

 フィリピン証券取引所の推移(年末値)
項目 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
フィリピン証券取引所指数 4,201.14 4,371.96 5,812.73 5,889.83 7,230.57 6,952.08 6,840.64
年末時価総額(億ペソ) 88,611 86,970 109,301 119,313 142,517 134,651 144,388
  国内企業時価総額 68,922 72,390 94,163 96,452 117,128 111,878 118,732
  外国企業時価総額 19,689 14,580 15,138 22,861 25,389 22,773 25,656
1日平均売買額(億ペソ) 49.5 57.1 72.6 105.2 88.0 89.6 78.1
外人の売買額シェア 38.1% 37.8% 45% 51% 49% 48% 51%
外人買越額(億ペソ) 356.2 565.2 1,099.8 155.9 557.2 -597.1 21.6
PER(株価収益率) 21.32倍 16.57倍 17.97倍 17.79倍 20.13倍 19.48倍 17.90倍
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 2016年の外人投資家動向に関しては、8月からの5カ月間で約490億ペソの売り越しとなっている。この5カ月間をとれば確かに急ピッチの売り越しではあるが、年間では依然約22億ペソの買い越しとなっている。ドゥテルテ大統領の当選が確定した後の6月と7月の2カ月間だけで約395億ペソという大幅な買い越しを演じたことで、7月末時点での累計買い越し額が512億ぺソという高水準に達したのである。年間で約22億ペソという辛うじての買い越しではあるが、2015年の597億ペソの売り越しに比べるとましな状況であったといえよう。
 

 ドゥテルテ新政権誕生前後からのPSE指数(終値ベース)の動き
時期 5月6日 5月10日 6月30日 7月21日 7月29日 8月26日 10月7日 12月29日
ポイント 投票直前 当選確実 大統領就任 就任後最高値 就任1カ月 就任2カ月 就任100日 年末
PSE指数 6,991.87 7,174.88 7,796.25 8,102.30 7,963.11 7,845.49 7,587.29 6,840.64
 (出所:PSEの取引記録などから作成)

 2016年各月末時点の外国人累計買い越し額の推移(単位:億ペソ) 
1月末 2月末 3月末 4月末 5月末 6月末 7月末 8月末 9月末 10月末 11月末 12月末
累計買越額 -22 -53 31 159 117 321 512 428 379 326 134 22
 (出所:PSE週間速報記録から作成)