比コンビニエンス・ストア、収益力格差が更に拡大
2016/08/22
商品売上高:セブン139億ペソ、ミニストップ43億ペソ
税前利益:セブン6.7億ペソ、ミニストップ1,382万ペソ
フィリピンの日系コンビニエンス・ストアの2016年上半期の業績動向が明らかになってきた。店舗数は既に明らかにされているが、収益動向は現地パートナー企業の上半期事業報告書等に部分的に記載されている。
フィリピンの主な日系コンビニ店舗数(比セブンイレブンは直接的には台湾プレジデント・チェーン・ストアの傘下)
年・月 | 12年末 | 13年末 | 14年末 | 15年3月末 | 6月末 | 9月末 | 12月末 | 16年3月末 | 6月末 |
セブンイレブン | 829 | 1,009 | 1,282 | 1,341 | 1405 | 1,480 | 1,602 | 1,655 | 1740 |
ミニストップ | 337 | 386 | 454 | 472 | 495 | 511 | 519 | 518 | 513 |
ファミリーマート | 0 | 31 | 87 | 95 | 105 | 113 | 120 | 104 | 102 |
(出所:各社資料より作成、ミニストップ、ファミリーマートは日本側発表数値)
フィリピンのミニストップは、ロビンソンズ・コンビニエンス・ストアーズ(RCSI)によってフランチャイズ展開されている。RCSIは、三菱商事、ミニストップ株式会社、ゴコンウェイ・ファミリー傘下のロビンソンズ・リテイル(RRHI)グループとの共同事業である。2000年にRCSIとミニストップ本社との間でカントリー・フランチャイズ契約が正式締結され、2000年12月にミニストップのフィリピン1号店がオープンした。RRHIは2013年11月にフィリピン証券取引所(PSE)に新規上場された。
フィリピンでのミニストップ店舗数は、2012年末337店、 2013年末386店、2014年末454店、2015年末519店(日本側発表数字)と順調に増加してきた。しかし、2016年に入るとブレーキがかかり、3月末518店、6月末513店と木幅ながら減少となっている。前年同月比は、6月時点で20店増、率にして4%増にとどまっている。
8月16日に発表されたRRHIの2016年上半期(1月~6月)の事業報告書などによると、フィリピンのミニストップのグループ総売上高(システムワイドセールス)は前年同期比11.2%増の42億6,600万ペソ、商品売上高は同5.2%増の27億9,960万ペソとなった。選挙特需などによる既存店売り上げ増加がもたらされたが、店舗網拡充ピッチ鈍化により、商品売上高は一桁増加にとどまり、業界トップのセブンイレブンとの差が開いている。
商品売上高が一桁増加にとどまる一方、販売費用は同16.2%増加した。ただ、その他収入も16.7%増加したことで、税金・金利・償却前利益(EBITDA)は同51.6%増の1億9,100万ペソ、税引前利益は同約32倍の1,382万ペソへと大幅増加した。もっとも、前年同期の税引前利益は僅か42万ペソと非常に低水準であった。
フィリピンでもコンビニエンス・ストアの普及が本格化、競争も激化している。現在は業界首位のセブン・イレブンをマーキュリー・セルフサービスやミニストップが追うという構図になっている。そして、ファミリーマートとKマートが2013年進出、ローソンも2015年3月にフィリピン1号店をオープンした。
フィリピンのセブン・イレブンは、台湾系のプレジデント・チェーン・ストア(ラブアン)ホールディングスが51.56%を所有(2016年6月末現在) するフィリピン・セブン社(PSC)によって運営されている。2016年6月末の店舗数は1,740店に達し、ミニストップの513店、ファミリーマートの102店に大差をつけている。そして、前年同月比でも335店、率にして24%増加、後続グループとの差を拡大させている。
フィリピン・セブン社(PSC)の2016年上半期の業績は引き続き好調であった。全店売上高は前年同期比27.2%増の154億5,920万ペソ、商品売上高は同37.5%増の139億2,300万ペソ、税引き前利益は同32.1%増の6億7,499万ペソ、純利益は同32.5%増の4億7,230万ペソに達した。新店効果や選挙特需などで、地方でのネットワーク構築コスト増などを完全にカバー、二桁増収増益となった。下表の様に、収益面でも2番手グループ以下に大差をつけているといえよう。
2016年上半期の有力コンビニ比較(前年同月比、単位:万ペソ)
企業 | 比セブンイレブン | 比ミニストップ |
企業目名 | PSC | RCSI |
6月末店舗数 | 1,740店 | 513店 |
店舗数増加率 | 24% | 4% |
グループ全売上高 | 1,545,920 | 426,600 |
商品売上高 | 1,392,300 | 279,960 |
商品売上高増加率 | 37.5% | 5.2% |
税引前利益 | 67,499 | 1,382 |
税引前利益増加率 | 32.1% | 約32倍 |
(出所フィリピンセブンとロビンソンズ・リテール年次報告書などより作成)
2013年4月にフィリピンに進出したファミリーマートの店舗網は2015年前半までは順調に増加、2015年5月に100店の大台に到達した。 ただし、業界の競争激化やフィリピン側のパートナーであるSSIグループの「店舗合理化プログラム」実施により、2015年後半以降は出店ピッチが急鈍化、2016年上半期では18店の純減となっている。SSIグループ事業報告書には比ファミリーマートの業績の詳細は記述されていないが、赤字と記載されている。したがって、収益面でも、セブンイレブンの一人勝ちという状況が続いているといえよう。