住宅用不動産、第1四半期に9.2%上昇

2016/06/05

中銀が指数発表、コンドミニアム12.9%で最高
警戒すべきだがバブルにあらずとの見解

 

 フィリピンにおいて近年不動産市況がかなり上昇してきているが、不動産バブルには至っていないとの見方が多い。しかし、フィリピン中央銀行(BSP)は、不動産バブル発生を防止すべく、各金融機関の不動産融資動向の監視を強化しつつある。

  BSPは、不動産市場の動向をより客観的に把握、不動産バブル防止を図るための手段として、フィリピン統計研究・教育機構(PSRTI)などと協力して、 不動産価格指数を開発した。この指数は継続的に不動産価格を調査、指数として公表するものであり、国際通貨基金(IMF) 等が、フィリピンに対し、かなり以前からその創設を求めてきたという経緯がある。

 そして、6月3日に住宅不動産価格指数(RREPI) が発表された。それによると、2016年第1四半期(1月~3月)の住宅不動産価格は前年同期比9.2%上昇した。タイプ別上昇率は、コンドミニアム 12.9%、タウンハウス8.5%、一戸建て住宅8.1%、2世帯家屋6.7%と続く。コンドミニアムが二桁上昇、RREPI上昇の先導役となっている。 そして、消費者物価(CPI)の第1四半期平均上昇率1.1%との比較では、上昇率の大きさが目立つ。

 
既報のとおり、不動産 バブルについてはいろいろな見解があるが、金融機関の預貸比率が100%ソかなり下回っていること、不動産融資の不良債権比率の増加ピッチ鈍化、融資全体 に占める不動産融資比率の低下などから判断すると、中央銀行は、バブルには至っていないとの見解を示している。

 2015年第4四半期末(12月末)の商業・ユニバーサル(拡大商業)銀行、貯蓄銀行の住宅不動産融資残高(RREL)合計は前期末比5.5%増、前年同期末比11.5%増の4,440億2,100万ペソ(速報値)であった。

  一方、住宅不動産融資の不良債権(NPL)残高は前期末比5.9%増、前年同期末比12.0%増の137億5,400万ペソ。従って、不良債権比率は 3.10%となり前期末、前年同期末(2.97%)から小幅拡大した。総融資残高(TLP、銀行間融資含む)に対する住宅不動産融資残高比率は6.93% で前期末、前年同期末から縮小した。

 商業・ユニバーサル銀行、貯蓄銀行の住宅融資動向(単位:百万ペソ)

項目 14年12月末 15年9月末 15年12月末
住宅不動産融資残高(RREL) 398,234 420,948 444,021
住宅不動産融資NPL残高 12,279 12,983 13,754
       
総融資残高(TLP) 5,692,517 5,913,046 6,408,557
総不良債権残高(TNPL) 118,228 125,744 122,797
       
総融資対住宅不動産融資比率 7.00% 7.12% 6.93%
総NPL対住宅不動産融資NPL比率 10.39% 10.32% 11.20%
総融資対住宅不動産融資NPL比率 0.22% 0.22% 0.21%
住宅不動産融資のNPL比率 3.08% 3.08% 3.10%
住宅不動産融資NPL貸倒引当比率 47.81% 47.98% 43.26%

(出所:中央銀行資料より作成)
注1.数字は商業・ユニバーサル銀行(U/KB)、貯蓄銀行の合計
注2.総融資残高、総不良債権残高は銀行間融資、銀行間融資不良債権を含む