日本外務省、フィリピン大統領選挙に伴う注意喚起

2016/04/01

比政府テロ脅威地域を指定、前回は210名超の死者

 

 日本外務省は3月31日、「フィリピン:大統領選挙に伴う注意喚起」というタイトルの海外安全情報(スポット情報)を派出した。在フィリピン日本大使館も同様な注意喚起を行った。その内容は以下のとおり。

1.2016年5月9日(月)に大統領、副大統領、上院議員、下院議員、地方自治体等の選挙が実施される予定である。フィリピン全土で、大統領、副大統領、上院議員(定員24議席の半数)、下院議員(全297議席)の選挙及び地方自治体選挙(州知事、副知事、州議会、市町長、副市長・副町長、市町議会議員)の投票が行われる予定であり、2月9日から大統領選挙などの選挙運動が開始され、地方自治体等の選挙運動も3月26日から開始された。主な選挙日程は以下のとおりとなっている。
(1)選挙運動期間
ア 大統領,副大統領、上院議員、下院議員(政党リスト)
  2016年2月9日~5月7日
イ 下院議員(選挙区)、地方自治体(州・市等)
  2016年3月25日~5月7日
(2)投票日
    2016年5月9日(月)
(3)選挙結果発表予定
    2016年5月13日~5月15日
  
2.これに先立ち、フィリピン当局は、昨年12月、過去の事件において、激しい政治的ライバル関係があると認められる地域や、アブ・サヤフ・グループ(ASG)、バンサモロ自由の戦士団(BIFF)などの武装組織が活動しており、テロの脅威等のある地域として、パンガシナン州、マスバテ州、東ネグロス州、西サマール州、マギンダナオ州及び南ラナオ州の6州をウォッチリストエリア(EWAS)に指定し、監視を強めている。

3.ついては、これら選挙運動期間中に、フィリピンへの渡航・滞在予定者、または既に滞在中の方は、フィリピン全土において常に次の事項等に注意を払い、不測の事態、無用なトラブルに巻き込まれないよう心がけられたし。
(1)公共の場、公園、ショッピング・モールなど不特定多数の人が集まる場所では常に周囲に注意を払い、また、候補者の活動している場所などには不用意に近づかない。
(2)緊急事態に備え,携帯電話等の連絡手段を確保する。
(3)外出の際には、事前にテレビやラジオ等の情報に注意を払い、集会やデモが開催される予定の地域への不要不急の立ち入りは避ける。
(4)車を運転する場合、選挙関連の車両検問所では検問所手前に必ず検問標識が設置されているので、標識を確認したら速度を落とす(検問所では原則として5名から20名の警官が検問にあたるが、ドアやトランクなどを開ける義務はなく、また降車する必要もないので留意する)。
(5)選挙候補者や選挙制度等に関する批判やコメントを避ける等、公共の場における発言に留意する。

【参考】投票日前日・当日のフィリピン当局による禁止事項等
前日:選挙運動、アルコール類の販売・提供・飲用、無料送迎・飲食,金品贈収
当日:(前日の禁止事項に加え)複数回投票や代理投票、投票所の半径30m以内での選挙絡みでの政治活動や露天売買、市場、闘鶏、ボクシング、競馬等の開催
 このほか、選挙期間中の禁止事項などについては、以下のアドレスから確認できる。
http://pnp.gov.ph/portal/images/election2016/Legal%20Advisory.pdf
 (16年3月31日 の日本外務省や在フィリピン日本国大使館発表より)。


 既報のとおり、長期にわたるフィリピン選挙のネガティブな大きな特徴として、選挙絡みの暴力事件の多発が挙げられる。特に地方においては、有力者一族間の熾烈な対立関係に起因する暴力事件や殺人事件が多発する。2010年の総選挙において、ミンダナオ島マギンダナオ州で立候補届提出に向かった候補者一族やメディア関係者約60名が、対立陣営によって虐殺されるという事件もあった。最近の選挙においても、下表の様に多数の暴力事件と死者が発生している。

フィリピンの選挙絡みの暴力事件と死者の推移

  暴力事件 死者 うち政治家や候補者
2004年総選挙 234件 149人 40人
2007年中間選挙 145件 121 人 61人
2010年総選挙 265件 213人 N.A.

(出所:JBIC、Pacific Strategies and Assessments社)