1月の失業率5.8%、10年間で2番目の低さ

2016/03/13

失業者の半分が若者、3割が大学進学者
首都圏失業率3位も不完全就業率は最低

 

フィリピン統計庁(PSA)が、3月11日に、2016年1月の雇用統計速報値を発表した。


 
 2013年11月の台風30号(フィリピン名:ヨランダ)で特に甚大な被害を被ったレイテ州を中心とする東ビサヤ地方(以下、レイテ州等)では、ヨランダ被災後しばらくは失業者が急増したが、その後は復旧・復興事業による雇用大幅増加で失業率が急低下するなど、台風要因によって雇用情勢が非常に大きく変動してきた。したがって、2014年1月から2015年4月までの雇用統計はレイテ州等を除くベースのみ発表されていた。そして2015年7月から、レイテ州等を含むベースと除外したベース双方の発表が続いている。

 今回の速報値によると、2016年1月の全国の失業率は5.8%(レイテ州等を含む)とかなり良好(低水準)であった。上記のように、前年同月はレイテ州等を含むベースでの発表は行われなかった。比較可能なレイテ州等を除外したベースでの2016年1月の失業率も5.8%であり、前年同月の6.6%から0.8%ポイントの改善となった。

 いずれにしても、5.8%という失業率は、過去10年間で、2015年10月の5.6%(レイテ州等含む)、5.7%(レイテ州等除く)に次ぐ低い失業率となった。

 2016年1月の15歳以上の人口(2000年国勢調査基準)は6,715万3千人(レイテ州等含む:以下同様)で、労働力参加率は63.3%。就業者数は4,004万7千人で、就業率(雇用率)94.2%、失業者数は246万9千人であった。

 就業者4,004万7千人のうち、農業部門が27.0%、鉱工業部門が16.7%、サービス部門が56.3%を占める。就業形態は、賃金労働者が労働者全体の63.2%、そのうち民間企業労働者は48.5%を占めた。自営・事業主は29.1%、無給家内労働者が7.7%であった。フルタイム就業者(週40時間以上勤務)は就業者全体の67.3%であった。

 不完全就業者(就業者であっても十分な労働時間に満たず追加の仕事を求めているパートタイム労働者)数は787万9千人(不完全就業率は19.7%)であった。レイテ州等を含むベースでの不完全就業率は19.7%。比較可能なレイテ州等除外ベースでも19.7%で、前年同月の17.9%からは悪化した。失業率上位のマニラ首都圏は、不完全就業率は9.8%で全国最低、唯一の一桁台であった。
 
 失業者数246万9千人のうち、15歳~24歳の失業者の割合は48.2%で若者の失業者の多さが目立つ。次いで25歳~34歳が30.9%、35歳~44歳が9.8%となっている。また学歴別では、大学進学・卒業者の失業者の割合は34.2%(卒業者は19.7%)、中学校進学・卒業者は45.4%(卒業者は32.9%)。性別では男性63.4%、女性36.6%。

 地域別で失業率が最も高いのはカラバルソン地方(7.5%)、中央ルソン地方(7.5%)、マニラ首都圏(6.9%)。一方、失業率が最も低かったのは、カガヤン・バレー地方(3.0%)、次いでミンダナオ・イスラム教徒自治区(ARMM)(3.7%)。

 当地では、雇用統計は1月、4月、7月、10月と毎年4回発表される。10月は年末年始商戦に向けての一時的就業者増加効果で失業率が低下傾向となる。一方、4月は新卒者の労働市場参入により労働力人口が増加する ことで失業率が一般的に上昇しがちである。このように、季節的要因で失業率が季節毎に大きく変動することから、前年同月との比較でないとあまり意味をなさない(16年3月13日のフィリピン統計庁発表より)。


フィリピンの雇用・失業者動向(単位:千人)

年月 16年1月
レイテ州等含む
16年1月
レイテ州等除く
15年1月
レイテ州等除く
15歳以上人口 67,153 65,665 64,591
労働力参加率 63.3% 63.4% 63.7%
就業率 94.2% 94.2% 93.4%
失業率 5.8% 5.8% 6.6%
不完全就業率 19.7% 19.7% 17.9%

(出所・国家統計庁資料より作成、16年1月は速報値)


16年1月の地域別就業率・失業率の比較(単位:千人、%)

地域 15歳以上人口 労働力参加率 就業率 失業率 不完全就業率
マニラ首都圏 8,314 63.7 93.1 6.9 9.8
コルディリェラ行政地域 1,194 67.0 95.7 4.3 25.4
1-イロコス 3,613 62.0 93.2 6.8 17.4
2-カガヤンバレー 2,362 65.9 97.0 3.0 16.2
3-中央ルソン 7,361 63.0 92.5 7.5 15.0
4A-カラバルソン 8,680 65.1 92.5 7.5 20.4
4B-ミマロパ 2,072 65.6 95.9 4.1 26.1
5-ビコール 4,029 62.3 94.7 5.3 33.1
6-西ビサヤ 5,436 63.7 95.2 4.8 18.4
7-中央ビサヤ 5,148 64.8 94.3 5.7 17.6
8-東ビサヤ 3,153 60.3 95.3 4.7 27.2
9-サンボアンガ半島 2,326 63.3 96.1 3.9 22.7
10-北ミンダナオ 3,172 64.2 94.6 5.4 24.9
11-ダバオ地域 3,205 64.0 94.9 5.1 20.1
12-ソックサルジェン 2,833 63.8 96.1 3.9 23.8
カラガ 1,815 62.8 93.5 6.5 30.6
ミンダナオ・イスラム教徒自治区 2,440 51.9 96.3 3.7 14.3
           
フィリピン全体 67,153 63.3 94.2 5.8 19.7
 (出所・国家統計庁資料より作成、速報値、レイテ州含む)