10月の株価3.5%反発、10カ月間では1.3%の下落に

2015/11/01

累計で不動産株7.6%上昇、鉱業・石油株は27%下落
ペソ対ドルレート0.2%の続落、年初からは4.5%下落

 

2009年から2014年まで6年連続で上昇しこの間の株価が約3.8倍へと急騰したフィリピン株式市場は、2015年も 第1四半期及び4月上旬までは非常に強い動きとなっていた。

 フィリピン証券取引所指数(PSEi)は、4月6日に終値ベースで初の8,000ポイント台乗せ、同10日には8,127.48ポイントという 終値ベースでの史上最高値を更新した。しかし、その後はギリシャ債務問題の再燃や米国の利上げ観測、さらには中国経済鈍化や金融市場混乱などを背景に、9月まで6カ月連続での月間下落という。調整を続けてきた。

 ただし、10月は米国の利上げ見送りや中国の追加緩和の動きなどを背景に、値頃感からの買いの動きの動きが入り、月間で3.48%の反発となった。もっとも、10カ月累計では1.33%下落、小幅ながらマイナスとなっている。

 

フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末値と月末価、2015年は10月末まで)

フィリピン証券取引所株価指数 ペソ対米ドルレート
時期 年末・月末値 上昇率 年末・月末値 上昇率
2004年 1,822.83ポイント 26.38% 56.280ペソ -1.39%
2005年 2,096.04ポイント 14.99% 53.090ペソ 6.01%
2006年 2,982.54ポイント 42.29% 49.030ペソ 8.28%
2007年 3,621.60ポイント 21.43% 41.280ペソ 18.77%
2008年 1,872.85ポイント -48.29% 47.520ペソ -13.13%
2009年 3,052.68ポイント 63.00% 46.200ペソ 2.86%
2010年 4,201.14ポイント 37.62% 43.840ペソ 5.38%
2011年 4,371.96ポイント 4.07% 43.840ペソ 0.00%
2012年 5,812.73ポイント 32.95% 41.050ペソ 6.80%
2013年 5,889.83ポイント 1.33% 44.395ペソ -7.53%
2014年 7,230.57ポイント 22.76% 44.720ペソ -0.73%
2015年1月 7,689.91ポイント 6.35% 44.080ペソ 1.45%
2月 7,730.57ポイント 0.53% 44.090ペソ -0.02%
3月 7,940.49ポイント 2.72% 44.700ペソ -1.36%
4月 7,714.82ポイント -2.84% 44.520ペソ 0.40%
5月 7,580.46ポイント -1.74% 44.590ペソ -0.16%
6月 7,564.50ポイント -0.21% 45.090ペソ -1.11%
7月 7,550.00ポイント -0.19% 45.740ペソ -1.42%
8月 7,098.81ポイント -5.98% 46.735ペソ -2.13%
 9月  6,893.98ポイント  -2.89%  46.740ペソ -0.01%
 10月 7,134.26ポイント 3.48% 46.820ペソ -0.17%
         
10カ月間 - -1.33% - -4.49%

(出所:フィリピン証券取引所やPDS資料より作成)

 10カ月間の大分類セクター別指数の変化率トップは不動産のプラス7.58%%、次いで持ち株会社のプラス4.55%。すなわち、この2セクターは年初から上昇となっている。その他は工業4.55%下落、金融7.47%下落、サービス18.77%下落、鉱業・石油27.70%下落と マイナス圏となっている。原油価格や金属国際市況の下落を背景に、鉱業・石油株が大幅下落していることが目立つ。

 10カ月間の1日当たり平均売買額は前年同期比10%増の93億6,351万ペソ。そして2014年年間平均の約88億ペソを6%上回っている。外人の売買額シェアは48%で、前年同期の50%、前年通年の49%を下回っている。外人は約474億ペソの売り越しとなり、前年同期の約352億ペソの買い越し、前年通年の約557億ペソの買い越しから激変となっている。

 10月末のPSE時価総額は前年末比2.2%減の13兆9,369億ペソ、そのうち、国内企業時価総額が同1.8%減の11兆4,965億ペソ、外国企業時価総額が同3.9%減の2兆4,404億ペソであった。小幅ながら株価下落、10カ月間の新規上場がクラウン・アジア・ケミカルズとSBSフィリピンという中小型2社にとどまったこと、バイオ燃料のケムレス・テクノロジーズが自主的上場廃止となったことなどから、PSE時価総額は前年末比縮小という結果となった。

フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率

項目 12年の上昇率 13年の上昇率 14年の上昇率 15年10月末終値 10カ月上昇率
フィリピン証券取引所指数 32.95% 1.33% 22.76% 7,134.26 -1.33%
全株指数 21.48% -2.29% 17.99% 4,119.28 -3.41%
  金融株指数 57.49% -6.42% 18.78% 1,569.47 -7.47%
  工業株指数 25.48% 2.11% 37.89% 11,437.40 -4.55%
  持株会社株指数 47.01% 5.41% 16.03% 6.586.43 4.55%
  不動産株指数 55.59% -4.30% 27.42% 3,027.37 7.58%
  サービス株指数 6.70% 8.20% 13.94% 1,727.08 -18.77%
  鉱業・石油株指数 -17.43% -38.59% 32.70% 11,437.74 -27.70%

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)


参考:フィリピン証券取引所の(年末・年間値、15年は10月末値もしくは10カ月間累値)

項目 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年10月
フィリピン証券取引所指数 3,052.68 4,201.14 4,371.96 5,812.73 5,889.83 7,230.57 7,134.26
年末時価総額(億ペソ) 60,291 88,611 86,970 109,301 119,313 142,517 139,369
  国内企業時価総額 39,919 68,922 72,390 94,163 96,452 117,128 114,965
  外国企業時価総額 20,372 19,689 14,580 15,138 22,861 25,389 24,404
1日平均売買額(億ペソ) 41.1 49.5 57.1 72.6 105.2 88.0 93.6
外人の売買額シェア 32.4% 38.1% 37.8% 45.0% 51.0% 49.0% 48.0%
外人買越額(億ペソ) 149.2 356.2 565.2 1,099.8 155.9 557.2 -474.4
PER(株価収益率) 23.26倍 21.32倍 16.57倍 17.97倍 17.79倍 20.13倍 19.98倍

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 一方、PDS(フィ リピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートは、2015年10月末終値が1米ドル=46.820ぺソとなり、月間で0.17%下落、6カ月連続での下落となった。

 年初10カ月間累計では4.49%のペソ安となっているが、米利上げ観測に伴う世界的なドル高の流れ、ギリシャ債務問題や上海株式市場急落など海外不透明要因 が多い状況下で比較的堅調に推移しているともいえる。ASEAN主要国最高水準の経済成長率、高水準のOFW送金やそれにともなう経常収支黒字持続などが 一方的なペソ売りの歯止めとなっているようだ(PSEやPCD取引記録などより)。