フィリピン格付見通し、「強含み」に引き上げ
2015/09/24
格付自体は「BBB-」に据え置き:欧州系のフィッチ
世界三大格付機関の一つであるフィッチ・レーティングス(フィッチ)は、9月24日に「フィリピン共和国(フィリピン)の外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)をそれぞれ「トリプルBマイナス」(BBB- )、および「トリプルB」(BBB)に据え置く」と発表した。
フィリピンの同国の外貨建ておよび自国通貨建て無担保優先債券の格付も「BBB- 」および「BBB」にそれぞれ据え置かれた。カントリー・シーリングも「BBB」に、外貨建て短期IDRも「F3」に据え置きとされた。
今回、フィッチによる所謂フィリピン格付けは、投資適格最低基準である「BBB-」に据え置かれたが、格付アウトルック(見通し)は、これまでの「ステイブル」(安定的)からポジティブ」「(強含み)へと引き上げられた。格付け見通しの「強含み」とは近い将来の格付自体の引上げの可能性があるという意味であり、格付引上げ期待が高まった。
フィッチは今回の格付見通し引き上げの理由としては、①ASEAN屈指の高成長を続けていることや海外の不安定要因に対する抵抗力が高まっていること、②対外収支が改善し対外支払い能力が強化されていること、特に経常収支の黒字が長期的に続いていることなどを挙げた。ただし、高イ伸びが続く市場流動性の行方や、改革の流れが止まったり逆行しないかなどを見極めるため、格付自体は据え置いたとのことである。
なお、世界三大格付機関のなかで、米国系のムーディーズ・インベスターズ・サービス (ムーディーズ)は、昨年12月11日に、フィリピン格付を一段階引き上げ、投資適格最低基準よりも一段階上の「Baa2」とした。「Baa2」は他の格付機関の「BBB」と同格である。
もう一つの世界三大格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)は、昨年5月8日に、フィリピン格付を「BBB- 」から「BBB」へと引き上げ、投資適格最低基準である「BBB- 」を一段階上回るステータスとした。
一方、日本格付研究所(JCR)は今年7月6日に、フィリピン格付をそれまでの「BBB」から「BBB+」へと引き上げた。格付見通し(アウトルック)は安定的とされた。「BBB+」は投資適格最低基準の2段階上であり、欧米系よりも高い評価となっている。また、A格付が視野に入ったともいえる。
上記のように、フィッチのフィリピン格付はムーディーズやS&Pより一段階下、日本格付研究所より2段階下という厳しい評価となっている。フィリピン政府関係者は、フィッチの格付が早期に一段階引き上げられムーディーズやS&Pと並ぶことや、各々がさらなる引き上げを行うことを期待している(15年9月24日のフィッチ・レーティングスのニュースリリースなどより)。