JTBのフィリピン現地法人、ボニファシオで営業開始
2015/04/07
旅行業界最大手の株式会社ジェイティービー(JTB、本社:東京都品川区)は、アジア事業拡大に注力している。そして、アジア発着の交流文化事業を拡充しながら、「アジア市場における圧倒的No.1ポジションを確立し、長期的・安定的な成長を可能とする基盤を完成させる」ことを目指した「2020年ビジョン」を掲げている。
JTBはさらなるアジア事業強化の一環として、旅行事業を展開するための子会社をフィリピンに設立、4月に営業を開始した。そして、既に進出しているH.I.S.(フィリピン)トラベルマート社を追撃するとともに、JTBが得意とする法人需要などを積極開拓する。
フィリピン子会社の名称はJTB ASIA PACIFIC PHIL.CORP.、 資本金は1億8,000万ペソ(約4億7,000万円)、シンガポールのJTB PTE LTD(アジア地区統括会社)が100%出資した。所在地はマニラ首都圏タギグ市ボニファシオ・グローバルシティ(BGC)ボニファシオ・サウスのRCBCセービングバンク・コーポレートセンター18階である。事業内容はアウトバウンド事業(フィリピン発の海外旅行の手配)、インバウンド事業(フィリピン訪問旅行者の旅行手配及び斡旋業務)、MICE事業(周年行事・開設式典・表彰イベント・国際会議・視察・報奨旅行・展示会等の企画運営手配)などである。
責任者は岡川知行(オカガワ トモユキ)取締役社長兼マニラ支店長である。ドイツやシンガポール等での海外経験が豊富である。電話番号は(632)832-5621、FAXが(632)893-7201。
JTBは 35カ国100都市に487もの海外拠点(提携販売店を含む本社・支店・営業所、2014年7月1日現在)を有している。アジアでも、中国、香港、台湾、マカオ、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマーなどに多くの拠点を有している。そのなかで、フィリピンはなぜかJTB空白地帯となってきた。2013年央のミャンマー進出(ヤンゴン市での合弁企業設立)にも先を越された。今回のフィリピンでの子会社設立により、アジア事業基盤が一段と強固になった。
近年、急激に発展を遂げているフィリピンは、GDP成長率が高くASEAN主要国で最高水準、人口はASEAN諸国でインドネシアに次ぐ第2位であり、若年人口及び生産年齢人口も多いことから持続的な成長が見込まれている。今後は、この環境を背景にアウトバウンド、インバウンドの需要も拡大していくことが想定され、日系企業が多く進出していることから法人需要の増加も期待できる。ビザ発給要件緩和などで訪日フィリピン人も急増している。
JTBは、今後の経済成長と連動した拡大が見込まれるフィリピンの訪日旅行市場や日系法人市場をメインターゲットとし、併せて、インテグレイティド・リゾート(IR)の建設等による企業・団体の各種イベント(MICE)誘致に国策として取り組んでいることからも、旅行客数の増加が期待でき、これらの需要へ取り組むことで、事業拡大を図る。IRとは、国際展示場・ホテル・ショッピングセンター・カジノ等の娯楽施設を統合したリゾート施設のことである。今後のフィリピンでの事業戦略は以下のとおり。
(1)設立当初のメインターゲットは日系企業とし、MICE事業と出張手配業務を中心に営業を行う。また、日本と連携した語学留学など教育事業にも取り組む。更に、段階的に日系以外の企業へも営業を展開していく。
(2)今後、増加が見込まれる訪日需要の取り込みから始める。JTBならではのユニークな訪日コンテンツや富裕層向け商品を積極的に市場に送り出し、訪日レジャーマーケットにおけるJTBのプレゼンスを向上させる。
(3)国の積極的な誘致策により、インバウンド市場拡大が見込まれることから、アジア・パシフィック域内におけるJTBのデスティネーション・マネジメント・カンパニー(DMC)ネットワークの一角を担うとともに、Tour Eastブランドを活用した商品展開など、インバウンド需要の取り込みを図る。DMCとは、豊富な地域の知恵、専門性、資源を所有しイベント、ツアー、地域交流や地域活性化を企画提案する会社を指す。
(4)日本からの旅行客向けランドオペレーターとしてのサービス体制を整備し、JTBグループ各社と連携の上、日本発パッケージ商品や団体旅行等の取り扱いの拡大を目指す。
また、JTBグループ内で法人営業を専門とする「JTBコーポレートセールス」(東京都新宿区)が昨年6月に「セミナー「看護・介護のグローバル化とフィリピン人看護師・介護士状況について」、8月にセミナー「介護業界・人手不足解消の大ヒント!入管法改正に伴うフィリピン人介護士の可能性」、10月に「フィリピン基本情報セミナー」を開催するなど、フィリピンや看護・介護、語学研修等に関する情報を積極的に発信している。今年2月にも「看護介護最新事情視察 フィリピン(ダバオ・マニラ)ミッション」を企画、実施し、多数の参加者を集めた。