住友鉱出資のニッケル・アジア、出荷額2.3倍の237億ペソ

2015/01/13

ミンダナオ・タガニート鉱山戦力化で出荷量28%増:2014年
インドネシアの鉱石輸出禁止措置等で出荷価格が2倍超に

 

住友金属鉱山(住友鉱、本社:東京都港区)のフィリピンでの事業基盤拡大、資源高度有効活用に拍車がかかっている。

 

 世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術であるHPAL(高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC、所在地:パラワン島、社長:藤村隆則氏))で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。2009年4月にはCBNCにおける第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万2千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。

 このような実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを推進し、年産約6万5千トンのニッケル生産能力を、同10万トンとすることにより、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を確固たるものにするとともに、従来から戦略目標としている「非鉄メジャークラス」入りを図りつつある。
 
 タガニート・プロジェクトにおいては、住友鉱傘下のタガニートHPAL社(THPAL、本社:首都圏マカティ市)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、MS( ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)生産する。THPALの出資比率は住友金属鉱山62.5%、ニッケル・アジア(ナック社)22.5%、三井物産15%となっている。2013年後半から商業生産が開始され、2014年からは操業本格化となっている。

 この住友鉱のタガニートHPALプラント操業本格化が、現地パートナーであるナック社の2014年(1~12月)のニッケル鉱石出荷を大幅に増加させた。ナック社はタガニート鉱山から隣接する住友鉱HPALプラントへの鉱石出荷本格化などにより、総出荷量が前年比28%増の1,790万トンへ、出荷額は同130%増(約2.3倍)の237億ぺソへと急増した。

 ナック社の2014年の出荷数量のうち、タガニート鉱山からの出荷が40%、パラワン島CBNCに隣接するリオ・ツバ鉱山からの出荷が33%を占めた。その他、ヒナツアン鉱山とカグディアナオ鉱山からも出荷が行われた。

 ナック社の出荷額の伸びが数量に比べ大きかったのは、ニッケル有力産出国のインドネシアが2014年年初に未加工の鉱石輸出禁止措置を発動したこと、ウクライナ紛争などによりニッケルの国際市況が急上昇したことによる。ちなみに、日本と中国等への出荷(合計1,047万トン)の1トン当たり平均出荷額は45.11米ドルで、前年の21.28米ドルから112%(約2.1倍)の上昇となった。

 なお、ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。そして、住友金属鉱山の重要な戦略パートナーである。ナック社傘下には、CBNCへ出資するとともにニッケル鉱石を供給しているリオツバ・ニッケル・マイニング社がある。

 住友金属鉱山は2009年8月にナック社に資本参加した。2014年6月末時点で、100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス (SMMPH)を通じて、ナック社株式約19.05%(個別株主名が明示されている分)を保有している(15年1月13日のフィリピン証券取引所回覧00131-2015号などより)。