マニラ湾岸カジノ都市プロジェクトに不透明感も
2014/09/21
リゾーツワールドの開業、2年遅れの2018年に
ユニバーサルEの外資規制問題なども未解決
フィリピン政府は、国家的プロジェクトとして観光事業を強力に推進することを目的に、マ二ラ湾岸沿いに4つのカジノリゾートを核とする「マニラベイ・エンターテインメントシティー」を創設しつつある。
「マニラベイ・エンターテインメントシティー」においては、フィリピンでの汚職疑惑で揺れてきたユニバーサルエンターテインメント(旧社名アルゼ、以下UE社)グループを含む4グループのカジノ複合リゾート施設が開業予定である。既に2013年3月にブルームベリー・リゾーツ(ブルームベリー)による「ソレア・リゾート&カジノ(ソレア)」プロジェクト第1期が完工(総工費12億米ドル)、オープンした。2年後に第2期プロジェクトでの300室を加え、800室とする計画である。最終的には2,000室を視野に入れているとのことである。
今年後半には「シティ・オブ・ドリームス マニラ」(CDM)がオープンする予定である。従来このカジノ・プロジェクト名は「ベル・グランデ マニラベイ」と称されてきたが、昨年にCDMへと改称された。CDMは、ベルコープグループと、オーストラリアの富豪ジェームス・パッカー氏傘下のカジノ企業メルコ・クラウン・エンターテインメント社(MCE)による合弁カジノ・リゾート施設である。MCEはマカオのメルコ・インターナショナルと豪州のクラウンの合弁企業であり、マカオの有名カジノ「シティ・オブ・ドリーム」の開発・運営企業である。
さらに、「ソレア」のマニラ湾に向かって左側(テーマパーク「ニュー・ナヨン・フィリピーノ」を挟んで)の31ヘクタールの土地に、「リゾーツワールド・ベイショア(RWB)」が創設される予定である。「RWB」は、有力持株会社アライアンス・グローバル・グループ(AGI)のカジノリゾート事業部門であるトラベラーズ・インターナショナル・ホテル(トラベラーズ)とゲンティン香港との合弁事業である。
「RMB」は、まずフェーズⅠとして、全体の3分の1に相当する10ヘクタールの土地に800室のカジノリゾートを創設する。フェーズⅠの投資額は1.1億米ドルと見込まれている。そして、最終的には、既に開業中のニノイ・アキノ国際空港第3ターミナル(NAIA3)に隣接する「リゾーツワールド・マニラ(RWM)」を大幅に上回る規模の大規模カジノリゾートとするプロジェクトである。
ただし、この「RWB」のフェーズⅠは未だ着工に至っておらず、開業は当初予定の2016年より大幅に遅れる見込みである。AGIは9月18日に「RWBのフェーズⅠ着工は今後3カ月以内に行われる。開業は当初予定より2年遅れの2018年となる見込み」と発表した。これは、国家的プロジェクトである「マニラベイ・エンターテインメントシティー」の遅れも意味するといえよう。
RWBのマニラ湾に向かって左側に隣接するUE社グループのプロジェクト「マニラベイ・リゾーツ」プロジェクトの行方にも不透明感が漂っている。UE社グループは、2008年7月にプロジェクト用地取得、2008年8月に暫定カジノ・ライセンス取得などの準備を進めてきた。しかし、「UE社事業に おける用地取得は外資規制に違反している」、あるいは「認可プロセスなどにおいてフィリピン賭博公社の当時のトップなどに巨額の不正資金が流れた」などと の多くの報道が行われ、米国やフィリピン当局が捜査に着手するに至っている。
UE社は、土地取得に関する外資規制をクリアーするため、ロビンソンズ・ランド、エンパイア・イーストというフィリピンの有力不動産企業との間で出資受け入れ交渉を行ってきたが、いずれも交渉が決裂した。一旦は基本合意に達したセンチュリー・プロパティー・グループ(センチュリー)の出資構想もUE社が交渉打ち切りを通告、センチュリーによる訴訟沙汰にまで至っており、外資規制問題に目途が立っていない状況である。
昨年3月開業の「ソレア」の人気が高まり、「ソレア」の運営企業ブルームベリーの2014年上半期(1月~6月)純収入は前年同期比2.7倍の114億6,309万ペソへと急増、最終損益は23億0,781万ペソの黒字で、前年同期の10億3,339万ペソの赤字から急改善、早くも大幅黒字計上となっている。
「ソレア」の成功で「マニラベイ・エンターテインメントシティー」の飛躍、フィリピン経済への寄与に期待が高まっているが、「RWB」の開業大幅遅れ、「マニラベイ・リゾーツ」に関しての汚職疑惑・外資規制問題など若干の陰りも生じていると言えよう(14年9月18日のフィリピン証券取引所回覧04949-2014号などより)。