5月のペソ対ドルレート堅調、1.9%上昇

2014/05/31

格付引上げや中銀の引締め開始などで
株価は0.9%下落、GDP成長率鈍化響く

 

 フィリピンの代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)は、 年間ベースでは2013年まで5年連続の上昇となったが、2013年の上昇率は1.33%と小幅なものとなった。非常に好調であった2013年5月央まで の上昇分が、年後半の調整でほぼ吐き出された。 2014年に入ると値頃感からの買いやフィリピン経済の強さの再評価などで再上昇基調となっている。



 フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末、もしくは月末値)

フィリピン証券取引所株価指数 ペソ対米ドルレート
  時期 年末・月末値 上昇率 年末・月末値 上昇率
2004年 1,822.83ポイント 26.38% 56.280ペソ -1.39%
2005年 2,096.04ポイント 14.99% 53.090ペソ 6.01%
2006年 2,982.54ポイント 42.29% 49.030ペソ 8.28%
2007年 3,621.60ポイント 21.43% 41.280ペソ 18.77%
2008年 1,872.85ポイント -48.29% 47.520ペソ -13.13%
2009年 3,052.68ポイント 63.00% 46.200ペソ 2.86%
2010年 4,201.14ポイント 37.62% 43.840ペソ 5.38%
2011年 4,371.96ポイント 4.07% 43.840ペソ 0.00%
2012年 5,812.73ポイント 32.95% 41.050ペソ 6.80%
2013年 5,889.83ポイント 1.33% 44.395ペソ -7.53%
         
2014年1月 6,041.19ポイント 2.57% 45.320ペソ -2.04%
2月 6,424.99ポイント 6.35% 44.630ペソ 1.55%
3月 6,428.71ポイント 0.06% 44.815ペソ -0.41%
  4月 6,707.91ポイント 4.34% 44.600ペソ 0.48%
5月 6,647.65ポイント -0.89% 43.760ペソ 1.92%
5カ月間 - 12.87% - 1.45%

(出所:フィリピン証券取引所やPDS資料より作成)

 PSEiは、2014年5月月間では0.89%の反落となったが,月末近くまではかなり強い動きとなっていた。米国系有力格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)が、5月8日に、フィリピン格付を「トリプルB(BBB)」に引き上げた。この格付引上げが予想外のことであったことから、PSEiの上昇ピッチに拍車が掛り、5月14日には場中で一時6,900ポイント台を回復した。

 しかし、5月29日に発表された第1四半期のGDP実質成長率が5.7%にとどまり9四半期ぶりの6%台割れとなったことで、5月29日に約111ポイント、率にして1.64%急落した。30日も続落したことで、5月末終値は4月末比小幅ながらマイナスとなってしまった。

 PSEiの年初5カ月間の上昇率は12.87%となっている。第1四半期の成長率が5%台に鈍化したもののアジア主要国の中では中国、マレーシアに続く高い伸びであること、経常収支の黒字が続いていることなどフィリピン経済の強みが反映された動きとなっている。ただし、5月末の終値は、昨年5月の史上最高値7,403.65ポイント(場中瞬間値ベース)を10.2%下回る水準である。
 セクター別では鉱業・石油株指数の29.24%、不動産株指数19.33%上昇、工業株指数16.36%上昇などが目立つ。

 5カ月間の1日当たり平均売買額は78億3,875万ペソで、2013年年間平均の105億2,000万ペソを大幅に下回っている。外人の売買額シェアは53%で、2013年の51%、2012年の45%、2011年の37.8%から上昇している。外人は5カ月間で433億8,546万ペソの買い越しとなっている。5月末の時価総額は前年末比9.7%増の13兆0,932億ペソ、そのうち、国内企業時価総額が同12.2%増の10兆8,173億ペソ、外国企業時価総額が同0.5%減の2兆2,759億ペソであった。

 フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率

項目 12年の上昇率 13年の上昇率 14年5月末終値 5カ月間上昇率
フィリピン証券取引所指数 32.95% 1.33% 6,647.65 12.87%
全株指数 21.48% -2.29% 3,997.57 10.60%
  金融株指数 57.49% -6.42% 1,568.18 9.82%
  工業株指数 25.48% 2.11% 10,111.97 16.36%
  持株会社株指数 47.01% 5.41% 6,071.67 11.83%
  不動産株指数 55.59% -4.30% 2,631.68 19.33%
  サービス株指数 6.70% 8.20% 1,989.15 6.60%
  鉱業・石油株指数 -17.43% -38.59% 15,403.07 29.24%

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)

 フィリピン証券取引所の指数、規模、売買額等の推移(年末・年間値、2014年は直近値)

項目 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年5月
フィリピン証券取引所指数 3,052.68 4,201.14 4,371.96 5,812.73 5,889.83 6,647.65
年末時価総額(億ペソ) 60,291 88,611 86,970 109,301 119,313 130,932
  国内企業時価総額 39,919 68,922 72,390 94,163 96,452 108,173
  外国企業時価総額 20,372 19,689 14,580 15,138 22,861 22,759
1日平均売買額(億ペソ) 41.1 49.5 57.1 72.6 105.2 78.4
外人の売買額シェア 32.4% 38.1% 37.8% 45.0% 51.0% 53.0%
外人買越額(億ペソ) 149.2 356.2 565.2 1,099.80 155.9 433.9
PER(株価収益率) 23.26倍 21.32倍 16.57倍 17.97倍 17.79倍 19.99倍

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 一方、PDS(フィリピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートは、2014年5月末終値が1米ドル=43.760ぺソとなり、月間で1.92%反発した。中央銀行が預金準備率引き上げなど引き締め的な動きを見せ始めたことなどでペソは堅調に推移した。そして、S&Pによるフィリピン格付引上げを受けて、5月9日に急騰、一気に43ペソ台を回復した。GDP成長率鈍化を受けて29日に一時44ペソ台へ下落する場面もあったが、すぐに43ペソ台を回復した。

 ペソ対米ドルレートは年初5カ月間では1.45%のペソ高
となっている(PDSやPSEの取引記録などより)。