ムーディーズにもフィリピン格付引上げ期待が
2014/05/19
デッド・サービス対GDP比率急改善など注目
国際的格付機関のフィリピンに対する評価が急速に高まってきている。
世界三大格付機関であるフィッチ・レーティングス(フィッチ)、スタンダード&プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は、2013年に揃って、フィリピン格付を投資適格へと引き上げた。フィッチとS&Pが「トリプルBマイナス(BBB-)」、ムー ディーズが「Baa3」という、各々投資適格の中では最低ランクながら、長年待たれていた投資適格への昇格が実現したのである。
さらに、S&Pがこの5月8日にフィリピン格付を「トリプルBマイナス)」から「トリプルB(BBB)」へと更に引き上げ、投資適格最低基準を一段階上回るステータスとした。このS&Pによる「トリプルB」への引き上げは予想以上に早い時期に実現した。通常、格付の引上げ は格付アウトルックの「ポジティブ」への引上げの後に行われるが、今回は格付アウトルック引上げを経ないで、一気に格付自体の引き上げが行われた。したがっ て、良い意味での大きな驚きを与えたといえる。
S&Pのライバルであるムーディーズも、早い時期にフィリピンの格付を更に一段階引き上げるのではとの期待が高まっている。ムーディーズは、昨年10月3日に、フィリピンの格付を「Baa3」へと一段階引き上げた。「Baa3」は「トリプルBマイナス」と同格で、投資適格の中では最低基準であり、三大格付機関のなかでは、最も遅い投資適格への引き上げであった。
ムーディーズのフィリピン格付の投資適格への引き上げ時にも、良い意味での大きな驚きがあった。この格付引き上げ時に、格付アウトルック(見通し)がポジティブ(強気)とされたことである。通常、格付引上げ時には、格付けアウトルックは「ステーブル(安定的)」とされることが多いが、この時は「ポジティブ」とされた。格付けアウトルックの「ポジティブ」は、「近い将来に格付引上げ の可能性がある」という意味であり、フィリピン格付のさらなる引上げが期待される動きであった。
ムーディーズは、フィリピンを「アジアのライジング・スター(アジアの成長株、アジアの希望の星)」と評するようになり、近年のフィリピンの高成長、財政収支・規律改善、対外負債縮小、政治的安定などを評価している。最近では、特に、政府デッド・サービス(債務元利返済額)対GDP比率や対歳入比率の急低下(詳細別掲)などを高く評価していることなどから、格付引き上げの期待が一段と高まっている。
いずれにしても、ムーディーズやS&Pによるフィリピン格付において、良い意味でのサプライズが起こっていることは注目に値する。