S&P、フィリピン格付をトリプルBに引き上げ
2014/05/08
投資適格最低基準より1段階上に、三大機関で初
米国系有力格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)は、5月8日に、フィリピン政府に対し、「フィリピンの外貨建て長期債務格付を一段階引き上げた」と通知した。
今回S&Pは、フィリピンの外貨建て長期債務格付をこれまでの「トリプルBマイナス(BBB-)」から「トリプルB(BBB)」に引き上げた。格付見通し(アウトルック」は「ステーブル(安定的)」となっている。
S&Pは2013年5月2日に、フィリピンの長期外貨建て債務格付をそれまでの「ダブルBプラス(BB+)」から「トリプルBマイナス(BBB-)」へと1段階引き上げている。この時点で、S&Pのフィリピン格付は投資適格の最低基準に到達した。そして、約1年後にさらに一段階引き上げられたことで、投資適格最低基準を一段階上回ることとなった。
S&Pはこれまでもフィリピンの財政規律が改善傾向にあることを大きく評価してきた。また、景気が安定的に拡大基調にあること、海外就労者(OFW)の送金寄与もあって経常収支が黒字を継続していること、対外支払い能力が強化されていることなども評価している。今後も、アキノ政権の改革のもとで、これらの状況が一段と改善されるであろうと判断、格付け連続引上げを行った。
2013年には、S&Pとならぶ米国系有力格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ、欧州系有力格付け機関フィッチ・レーティングス(フィッチ)も、フィリピン格付を投資適格最低基準へと引き上げた。
すなわち、世界の3大格付け機関が揃ってフィリピン格付を投資適格最低基準へと引き上げ済みであったが、その一段階上の「トリプルB」としたのは3大格付け機関のなかではS&Pが初めてである。ちなみに、日本格付研究所(JCR)は、既に2013年5月7日に、フィリピン格付をトリプルBへと引き上げている。
S&Pによるフィリピン格付のトリプルBへの引き上げは予想以上に早い時期に実現した。通常、格付の引上げは格付アウトルックのポジティブへの引上げの後に行われるが、今回は格付アウトルック引上げを経ないで、一気に格付自体の引き上げが行われた。したがって、良い意味での驚きを与えたといえる。フィリピン政府関係者や中央銀行テタンコ総裁らは、この動きを非常に歓迎するとともに、「アキノ政権が推進してきた改革の賜物である。さらなる改善を目指して改革努力を継続する」とコメントした(14年5月8日のフィリピン政府官報などより)。