日本、対フィリピン援助方針を発表

2014/04/15

蓄積した「外交的資産」の更なる発展へ

 

 日本外務省は、4月14日に、ODA(政府開発援助)の国別援助方針を公開した。東アジアについては、ブルネイを除くASEAN9カ国について発表されている。対フィリピン方針は次のとおり(以下:ほぼ発表原文のまま)。

1.援助の意義
 フィリピンは、海上交通路の要衝に位置し、地政学上及び地域安全保障上重要な国であり、同国の持続的発展は、東アジア地域の安定と発展に資する。また、 同国は、民主主義や市場経済といった我が国と共通の価値観及び多くの戦略的利益を共有する、東アジアにおける重要なパートナーであり、2011年、両国が 「戦略的パートナーシップ」の関係に発展していることが確認された。

 また、多くの日系企業がフィリピンに進出し、同国が我が国にとって重要な経済活動の基盤であることをはじめ、両国は密接な経済関係を有するとともに (2008年12月には日・フィリピン経済連携協定が発効)、両国間には広範な人的交流の基盤が存在し、少子高齢化が進む日本社会と多くの若年人口を有す るフィリピン社会との間で相互補完的な協力関係が更に発展していく可能性がある。

 フィリピンの1人当たりGNI は2010 年時点で2,050 ドルであり、初等教育や母子保健以外の分野についてはミレニアム開発目標(MDGs)の達成が見込まれているなど、全体としては、今後中進国入りを目指す 段階にある。また、同国は、豊富で安価な若年労働力を有し、かつ国民全般に高い英語力を有するなど、高い経済成長のポテンシャルを持つ。同国が今後持続 的、且つ、より力強い成長を続けていくためには、経済の安定的な運営にも留意しつつ、投資環境の改善、海外からの直接投資の促進や輸出型産業の増強、所得 格差の是正、災害などのリスクに対して脆弱なインフラや社会システムの改善、ミンダナオ地方における紛争の解決などに取り組む必要がある。

 我が国は長年トップドナーとしてフィリピンへの援助を実施してきており、同国における日本のプレゼンス、国際場裡における種々の協力、民間レベルでの良好な関係など、これまで蓄積してきた「外交的資産」の更なる発展を目指す。


2.援助の基本方針(大目標):「包摂的成長」の実現に向けた支援
「戦略的パートナーシップ」を更に強化するため、「フィリピン開発計画 2011-2016年」が目標としている「包摂的成長2」の実現に向けて経済協力を実施する。

3.重点分野(中目標)
(1)投資促進を通じた持続的経済成長
 持続的経済成長の達成に必要な国内外からの投資促進に向けて、投資環境の改善を図るため、大首都圏を中心とした運輸・交通網整備、エネルギー、水環境な どのインフラ整備、行政能力の向上、海上安全の確保、産業人材育成などに対する支援を実施する。

(2)脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定
 自然災害、気候変動などの環境問題や感染症など、特に貧困層への影響が大きい各種リスクに対する脆弱性の克服及び生活・生産基盤の安定・強化を図るべ く、災害・環境問題に対応するためのソフト面を含めたインフラ整備、保健医療などの分野におけるセーフティネットの整備、農業生産・生産性の向上と農産品 の加工・流通などに対する支援を実施する。

(3)ミンダナオにおける平和と開発
 ミンダナオ(紛争影響地域)において、開発による和平プロセスの促進を通じた平和の確保と定着及び貧困からの脱却を実現するため、ガバナンス強化、社会サービスへのアクセス改善を含む貧困削減、インフラ整備や産業振興などによる地域開発に対する支援を実施する。

4.留意事項
 現在、フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線との間でミンダナオ和平交渉が続けられているが、和平合意の達成を見据え、和平合意後のミンダナオ支援の在り方について検討していく必要がある。なお、ミンダナオ(紛争影響地域)においては、引き続き、援助活動の安全性に十分留意していく必要がある(14年4月14日の日本外務省発表より)。