サンミゲル、帰属純利益42%増の381億ペソ

2014/03/30

メラルコ株式売却益400億ペソで大幅増益に
営業利益は7%増の551億ペソ、EBITDA1%増
キリン出資のビール事業は増税で3%営業減益

 

多角化を推進してきているサンミゲルが、3月28日に、2013年度(1月~12月)の決算速報発表を行った。

 

 2013年度の総売上高は前年比7%増の7,477億ペソに達した。総売上高の70%を占める多角化部門が同9%増収であった。一方、従来の主力部門であった飲食料・パッケージ部門は同2%の増収にとどまった。

 営業利益は同7%増の551億ペソとなった。ドル高に伴う外国為替(外為)損失が156億ペソ発生(前年同期は95億ペソの外為益)したが、マニラ電力(メラルコ)株式27%の売却益400億ペソが計上されたことで、報告帰属純利益は同42%増の381億ペソへと大幅増加した。

 したがって、報告ベースでは大幅増益決算であり、「外為損益を除いた純利益は同210%増(約3.1倍)の536億ペソであった」とも発表されている。しかし、単純にメラルコ株式売却益を除けば大幅減益決算であったということになり評価は難しい。ちなみに、経常的EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は同1%増の773億ペソであった

 ビール部門や洋酒部門(ヒネブラ・サンミゲル)は、酒税増税の影響を大きく受けた。キリン・ホールディングス(キリン)が出資するサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)の販売数量は、酒類増税により同9%減の2億0,400万ケースと低調であった。販売価格上昇が上昇したものの、販売数量減少が響き、売上高は同0.7%減の751億ペソと伸び悩んだ。減収効果やコスト上昇などにより営業利益は同3%減の216億ペソにとどまった。

 洋酒部門の販売数量も同12%減の2,100万ケースと不振であった。販売価格上昇や非アルコール飲料の大幅増収で、売上高は同3%増の144億ペソに達した。しかし、営業損益は7億9,300万ペソの赤字で、前年の5億2,800万ペソから赤字が50%拡大した。ただし、下半期の営業損益は1,800万ペソの黒字と水面上に浮上した。

 食品部門はブランド付加価値製品の伸長で回復基調に転じた。売上高は同4%増の998億ペソ、営業利益は同6%増の55億ペソに達した。一方、パッケージ部門(サンミゲル山村パッケージング)の売上高は、輸出が23%増加したことで、同3%増の252億ペソと増収であった。しかし、国内のガラス容器、紙容器の需要低迷の影響を受け、営業利益は同9%減の21億ペソにとどまった。

 多角化事業である電力関連事業の発電量は同1%増の1万6,163ギガワット時(Gwh)、純収入は同1%減の740億ペソながら、コスト低減で営業利益は同20%増の205億ペソに達した。サンミゲルの発電事業は、2010年第3四半期から、持ち株会社SMCグローバル・パワー・ホールディングスのもとに集約されている。

 石油製品部門(国内最大の石油元売り企業であるペトロンの売上高は同9%増の4,636億ペソと高水準であった。国内やマレーシアでの石油販売事業採算改善で、営業利益は同49%増の117億ペソ、純利益は同2.9倍の51億ペソへと急回復した。
 2013年の石油製品国内販売数量シェアは37%でトップの座を維持した。また、ガソリンスタンド数は、2013年中に200以上を開設したことで、年末には2,200店体制となった。
 
 足許の業績は市況変動に大きく左右されているが、中期的には推進中の精製能力増強や効率化、石油化学事業拡充による高付加価値化、買収したエッソのマ レーシア石油川下事業戦力化などにより、業績は上昇基調を辿ると見込んでいる。なお、エッソから買収したマレーシア石油川下事業におけるガソリンスタンドなどのブランドは、エッソやモービルからペトロンへと変更されつつある。

 エッソ・モービル・マレーシア石油川下事業買収(総額5億7,730万米ドル)効果が顕在化しつつあるうえ、カティクランのボラカイ空港拡張工事進展(今年12月完工予定)、タ―ラック~ラ・ウニオン高速道路の一部開通、MRT7号線の建設、スカイウエイ第3期事業(ルソン南北高速道路連結)着工、ニノイ・アキノ国際空港高速道路プロジェクト・フェーズⅡ着工、資本参加したフィリピン航空の新鋭機導入や新路線乗り入れなどサンミゲルの多角化に拍車がかかっている。その過程で負債が膨張していることを先行きの懸念材料とする見方もあるが、業容は急ピッチで拡大している(14年3月28日のフィリピン証券取引所回覧1443-2014号などより)。