GDP成長率7.8%でアジア最高:第1四半期

2013/05/31

中国7.7%、インドネシア6%、タイ5.3%等を凌ぐ

製造業9.7%、建設32.5%、金融13.9%と高成長

  国家統計調整委員会(NSCB)は5月30日に、2013年第1四半期(1~3月)のフィリピン国民経済計算統計(2000年基準)を発表した。

 2010年までこの統計の尺度は、国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)の2本立てとなっていたが、2011年発表からGDPとGNI(国民総所得)という体系に変更された。さらに、GDP統計などにおける物価変動を除いた実質ベース産出のための基準年が従来の1985年から2000年へと変更されている。

 {2013年第1四半期動向}
 2013年第1四半期GDP成長率(実質ベース:以下同様)は7.8%で、前期(2012年第4四半期)の7.1%(改定値:以下同様)、前年同期の6.5%から一段と拡大した。これは、政府年間目標の6~7%を上回るペースであり、3四半期連続での7%台の高成長となった。

 国家経済開発庁(NEDA)によると、フィリピンの第1四半期GDP成長率7.8%は、ASEAN(東南アジア諸国連合)主要国の中で最も高い成長率である。ちなみに、インドネシアは6.0%、タイは5.3%、ベトナムは4.9%であった。そして、中国の7.7%をも上回るアジア主要国最高の伸びとなった。

 インフレ沈静化傾向、セクター別構成比の5割弱を占めるサービス部門の堅調、鉱工業の高成長、政府支出や設備投資の大幅な伸びなどが寄与した。なお、季節調整済み前期比成長率は2.2%で、前年同期の2.2%と同水準、前期の1.9%からは拡大した。

 一方、GNI成長率は7.1%となり、前期の6.4%及び前年同期の5.7%から拡大。OFW送金など海外からの純所得(NPI )伸び率が3.2%となり、前期の2.7%及び前年同期の1.9%から拡大した。

 セクター別成長率は、鉱工業が10.9%と二桁成長、前期の8.9%、前年同期の5.3%から加速化した、製造業が9.7%、建設業が32.5%と高い伸びを見せた。また、サービス産業は7.0%成長で、前期の6.5%から拡大した。前年同期の8.4%からは鈍化したが、依然好調であった。一方、農林水産業は3.3%成長で、前年同期の1.1%からは回復した。

 支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が5.1%で前期の6.2%、前年同期の6.9%からは鈍化したが、依然堅調であった。一方、政府支出が13.2%増、資本形成も47.7%増と非常に高い伸びとなった。

 輸出の伸びはマイナス7.0%増で、前期のプラス8.6%、前年同期のプラス9.8%から悪化した。GDPのマイナス勘定となる輸入の伸びはプラス1.6%で、前期の8.0%増から鈍化、前年同期のマイナス1.9%からは拡大という結果となった。
 
 なお、上記のように、過去の数値が改訂されている。年間ベースでは、2012年GDP成長率が速報値の6.6%から6.8%へと上方改訂された。GNIは同じく5.8%から6.5%へと上方改訂されている。
 一方、2011年GDP成長率は3.9%から3.6%へ、GNIは同じく3.2%から2.8%へと下方改訂された(13年5月30日の国家統計調整委員会資料などより)。

GDP実質成長率(前年同期比)等の推移(2000年基準:単位:%)
項目 構成比 四半期成長率  年間成長率
13年 12年 13年 11年 12年
四半期 1Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 年間 年間
GNI(国民総所得) 100.0 5.7 6.5 7.3 6.4 7.1 2.8 6.5
GDP(国内総生産) 84.3 6.5 6.3 7.3 7.1 7.8 3.6 6.8
NPI(海外からの純所得) 15.7 1.9 7.6 7.1 2.7 3.2 -1.6 4.8
セクター別内訳
  農林水産業 9.4 1.1 0.6 4.4 4.9 3.3 2.6 2.8
      農林業 7.8 2.2 1.3 5.5 5.2 2.9 4.4 3.6
        米 1.7 -1.1 10.1 13.5 10.2 4.5 5.9 8.0
        コーン 0.6 5.4 4.0 11.5 1.6 11.4 9.5 6.3
      水産業 1.6 -3.8 -2.5 0.0 3.4 5.5 -4.3 -0.4
  鉱工業等 28.0 5.3 5.8 7.1 8.9 10.9 1.8 6.8
      鉱業 0.8 -1.7 6.5 -1.2 2.8 -17.0 7.0 2.2
      製造業 19.8 6.0 4.3 5.8 5.5 9.7 4.7 5.4
      建設 4.7 1.5 11.6 17.8 29.9 32.5 -9.8 15.7
       光熱ガス 2.7 8.5 6.1 2.7 3.4 0.1 0.6 5.1
  サービス産業 46.9 8.4 7.7 8.0 6.5 7.0 4.9 7.6
      運輸倉庫通信 6.6 9.7 9.3 9.4 4.4 3.5 4.3 8.1
      商業・自動車修理等 12.7 7.8 7.8 8.2 6.6 5.6 3.3 7.5
      金融仲介 6.0 8.7 7.0 8.6 8.8 13.9 5.2 8.2
     不動産等 8.8 7.8 8.1 7.8 6.5 6.3 8.4 7.5
支出別内訳
  家計最終消費支出 57.3 6.9 6.6 6.7 6.2 5.1 5.7 6.6
  政府最終消費支出 9.7 21.3 7.2 12.3 9.5 13.2 2.1 12.2
  資本形成 16.9 -31.3 3.6 6.2 9.5 47.7 2.0 -3.2
      固定資本 19.3 2.8 8.7 10.5 19.7 16.8 -2.0 10.4
        建設 7.3 -1.2 10.2 19.2 30.4 33.7 -8.4 15.1
        耐久設備 10.1 4.5 8.4 5.8 14.1 9.4 2.7 8.0
  輸出等 37.7 9.8 10.8 6.2 8.6 -7.0 -2.8 8.9
  輸入等(控除勘定) 37.5 -1.9 8.3 7.0 8.0 1.6 -1.0 5.3
(出所:国家統計調整委員会資料より作成)